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テキスタイル&ファッション誌(メールマガジン)バックナンバー
テキスタイル&ファッション Vol.15 (1998)
Vol.15/No.1~12
(1998年4月号~1999年3月号)
1-ファッション情報 | No. | 月 | 頁 |
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'99春夏FDCテキスタイルコレクション開催 | 1 | 4 | 1 |
'99春夏FDCテキスタイルトレンド提案(要旨) | 1 | 4 | 3 |
新進デザイナーによる'98秋冬FDCコレクション | 1 | 4 | 7 |
いま、問われるグローバル時代の力量 福永成明 | 2 | 5 | 49 |
高付加価値経営とモデリストの役割 -イタリアからの教訓- 菅原正博 |
3 | 6 | 117 |
世界で一流のファッション資源を生かす道は、 マネージメントの革新である 山村貴敬 |
4 | 7 | 181 |
中部通産局「繊維先進事例」調査に学ぶ “元気印”の共通点は自助努力 注目されるバーチャルファクトリー 山下征彦 |
5 | 8 | 246 |
トレンド即応型になる日本の市場 -テキスタイルサバイバルの途- 藤岡篤子 |
6 | 9 | 325 |
'99/'00秋冬FDCテキスタイルコレクションを開催 | 7 | 10 | 391 |
'99/'00秋冬テキスタイルトレンド提案(要旨) | 7 | 10 | 393 |
'98秋のマーケット分析と市場動向による '99春夏ファッショントレンド分析 照井佳代子 |
8 | 11 | 466 |
不況を跳ね返すクリエーションの果実 第7回ジャパン・テキスタイル・コンテストの成果を点検する 三島 彰 |
9 | 12 | 525 |
大競争時代が始った -消費者が変る、機軸が動く- 山崎光弘 |
10 | 1 | 566 |
わが国におけるライセンスブランドの現状 土田貞夫 | 11 | 2 | 617 |
脱同質化 十三千鶴 | 12 | 3 | 673 |
2-研究報告 | No. | 月 | 頁 |
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強撚糸による織物表面効果の解析 | 1 | 4 | 9 |
環境調和型生産システムに関する研究 -非金属染料による羊毛染色法に関する研究- |
2 | 5 | 54 |
カーリング糸とトルクの関係解析 | 3 | 6 | 124 |
羊毛繊維の油吸着性 | 4 | 7 | 186 |
羊毛/綿混紡品の染色技術 | 5 | 8 | 251 |
ストレッチ毛織物の製造技術 | 6 | 9 | 329 |
赤外分光法の応用による損傷羊毛の評価 | 7 | 10 | 396 |
スーパー繊維織物の開発 | 8 | 11 | 471 |
ウールケラチン及びその複合物の繊維化技術 | 9 | 12 | 531 |
メロウスポーツシャツの開発 | 9 | 12 | 541 |
天然加工材の衣料への応用 | 10 | 1 | 572 |
織物検査データの解析技術 | 11 | 2 | 621 |
酵素によるポリエステル(PET)繊維改質加工の可能性 | 11 | 2 | 639 |
3-技術解説 | No. | 月 | 頁 |
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純毛や毛混紡織物のシワについて | 2 | 5 | 73 |
衣服の洗濯、ドライクリーニングの動向 | 3 | 6 | 144 |
羊毛の防虫加工について | 4 | 7 | 191 |
コンピュータネットワークのQR(クイックレスポンス)への応用 | 5 | 8 | 271 |
羊毛を中心とした繊維表面加工へのコロナ放電及び紫外線の利用技術 | 7 | 10 | 404 |
自動車内装材における繊維製品の現状 | 10 | 1 | 590 |
5-シンポジウム報告 | No. | 月 | 頁 |
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'98尾州フォーラム報告(1) | 4 | 7 | 199 |
'98尾州フォーラム報告(2) | 5 | 8 | 281 |
'98尾州フォーラム報告(3) | 6 | 8 | 356 |
'98尾州フォーラム報告(4) ・第三分科会:テーマ「QRと情報化」 |
7 | 10 | 416 |
'98尾州フォーラム報告(5) ・第四分科会:テーマ「本年で語ろう尾州討論会」~尾州が生残れる道は~ |
8 | 11 | 587 |
6-資料 | No. | 月 | 頁 |
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依頼試験、技術相談、指導の動向(1) | 2 | 5 | 100 |
染色仕上関係海外文献情報(21) | 2 | 5 | 106 |
依頼試験、技術相談、指導の動向(2) | 3 | 6 | 171 |
平成9年度愛知県尾張繊維技術センター研究要旨 | 4 | 7 | 240 |
7-調査報告 | No. | 月 | 頁 |
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愛知県繊維産業ネットワークレポート(1) | 9 | 12 | 557 |
愛知県繊維産業ネットワークレポート(2) | 10 | 1 | 603 |
9-技術情報 | No. | 月 | 頁 |
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バーチャル試着システムの現状 | 1 | 4 | 16 |
家庭用品品質表示法の改正について | 1 | 4 | 24 |
エコビジネスと産業界の再生 | 6 | 9 | 337 |
ポリウレタン弾性糸を使ったウール・ストレッチ織物について | 9 | 12 | 551 |
Kgf(重量キログラム)→N(ニュートン)へ -国際単位系(SI)への切替え- |
10 | 1 | 610 |
染色における染薬剤の環境問題と今後の動向 | 11 | 2 | 648 |
羊毛の湿潤発熱性に学ぶ機能性繊維への展開 | 12 | 3 | 678 |
11-その他(新設機械紹介) | No. | 月 | 頁 |
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新設機器紹介 | 1 | 4 | 32 |
新規事業紹介 「ファッション・テクノ工房」 | 10 | 1 | 570 |
新進デザイナーによる'98秋冬FDCコレクション
――ファッションショーで3ブランドを発表――
FDCでは、3月18日(水)東西で活躍している新進デザイナー(3ブランド)のファッションショーを開催した。
このコレクションは、藤井輝之、宮下恵子、高橋元希の若手デザイナーが、産地テキスタイルメーカーのデザイナーと共同で開発した、'98秋冬向け素材を使用したアパレル60点が、各ブランド毎に発表された。
ファッションショーには、地元関係者を始め、コンバータ、東西アパレルなど、3回で600人がつめかけ、産地の素材とデザイナーの作品をアピールした。
また、'99春夏FDCテキスタイル・コレクションの会期中(3月18日~20日)、各デザイナーのブースで素材とアパレルも展示された。
デザイナーと協力テキスタイルメーカー
藤井 輝之(TERUYUKI)
野田健毛織(株)・木玉毛織(株)
東京テキスタイル(株)
鍛治松毛織(株) 宮下 恵子(LARAAJI LARAAJI)
中伝毛織(株)・大和ウール(株)
片岡毛織(株)・野口(株)
高橋 元希(MARIA VERGINE)
早善織物(株)・前多毛織(株)
森原毛織(株)・夫馬紡織(株)
昭和毛織(株)
藤井 輝之/1989年、大阪モード学園卒業後、神戸のアパレルメーカーにてチーフデザイナー就任。1991年の退社後「PROUD(プラウド)」を設立し、翌年の秋冬よりオリジナルブランド「TERUYUKI」の企画・製造・販売をスタートさせた。1988年の第12回全日本ファッション大賞コンクール入賞を皮切りに、数々の賞を受賞している。1996年、FDCコレクションに参加。1996年4月、秋冬東京コレクション、11月には春夏東京コレクションに参加。同年、大阪船場にショップとショールームをオープンさせた。
宮下 恵子/1981年、文化服装学院ファッションデザイン科卒業後、コシノ・ヒロコインターナショナル入社。装苑賞審査会・第9回日本テレビ大賞受賞。
フリーランスデザイナーとして活動開始。1982年、第20回カルダン賞佳作2点受賞。1985年、西武百貨店「REDZONEコーナー」にて、プライベートブランドを展開。1988年、(株)モードファムインターナショナル入社。1989年、「ラポカラ」ブランドの1stコレクション発表。1990年、「ラポカラ」ブランドにて東京コレクション発表。1993年、宮下恵子デザインスタジオとして独立。1994年、(株)ララージ ララージ設立。
高橋 元希/1988年、京都芸術短期大学服飾デザイン科卒業。マロニエファッションデザイン専門学校編入学。
1990年、卒業後アパレルメーカーを経て渡伊。ミラノコレクション・新人デザイナージョイントショーに参加。ベヌーチャ・デ・ルッスィ氏に師事。ベネトン、ジルサンダー、エンポリオ・アルマーニ等のデザイン、パターンを手掛ける。1992年、渡仏。ジャン・ルイ・シェレルにてデザイナーを経験。9月、一時帰国して大阪コレクション新人ジョイントショーに参加。1993年、帰国後、(株)コム・デ・ギヤルソンにパタンナーとして入社。1996年、退社。オリジナルブランド「マリア・ヴェルジネ」開始。
いま、問われるグローバル時代の力量
ファッションジャーナリスト 福永 成明
日本のファッションビジネスが岐路に立たされている。これほどの厳しさは初めてで、百貨店の業績不振は慢性 化し、それに伴いアパレル産業の体力も低下している。そうした一方、ファッションビジネスでも“ビッグバン”が進行、海外勢力が着実に商権を広げている。国内で熾烈さを増すメガ・コンペに国内勢力は、どう対応していくのか。グローバル・パワーの真価が問われるのは、これからである。
元気がないファッションビジネス
ファッションは社会の投影だといわれるが、それにしても繊維ファッション産業の元気のなさはどうしたものだろう。景気が悪いから売れない、というのは分かるが、それでも活気がなさすぎる。
あれだけ大騒ぎしていた「グローバル化」も最近は、むしろ海外拠点を縮小する動きが目立ち、産業全体が萎縮してしまっている。
もちろん、こんな時代でもパワフルなビジネスを続ける企業がないではない。それらに共通しているのは“二匹目のドジョウ”を追わず、主体性をもったビジネスを続けていること。つまり、当たり前のことを行なえているかどうかで、厳しい状況に追い込まれた企業の多くには、これが欠けている。
このところ、グローバル・スタンダードがあらゆる産業で叫ばれている。金融界を揺るがすビッグバンは、疲弊した日本の金融市場をニューヨークやロンドン並みの国際金融市場に活性化する。これを目標にした金融システム改革であるが、金融界だけでなく、フッションビジネスでもビッグバンが浮上しはじめた。
ファッション消費が低迷するなか、活気が薄れた国内企業とは対照的に、海外ブランドは着実に地歩を固めている。なかでも注目されるのが有名ブランドの動向で「クリスチャン・ディオール」や「アディダス」のように、ライセンス契約の延長を嫌い、独自に対日戦略を打ち出す、というのも最近のグローバル化を象徴している。
それだけではない、東京・銀座には海外ブランドのフラッグシップ・ショップ(旗艦店)が林立し、周囲の百貨店を脅かすほどの集積となっている。さらに目新しい動きといえば、「GAP」のようなリーズナブル・プライスの専門店が、対日戦略を本格化していることである。
高級品だけでなく、大衆品の分野でも対日戦略が活発になってきた、というのはファッション版“ビッグバン”が確実に進行していることを物語っている。
高付加価値経営とモデリストの役割
-イタリアからの教訓-
「後ろ向き志向」からの脱皮(宝塚造形芸術大学 教授(感性工学研究所長) 菅原 正博)
最近、日本の大企業のトップ層の間で「過去の成功体験を思い切って捨て去れ」という意見が強まりつつある。21世紀を目前にして、なかなか経済環境が好転しない状況に直面して、実際に過去の延長路線では経営そのものが成り立たなくなってきているのを、各企業の経営者は実感しつつある。
繊維産業でも、早くから体質的に構造改善すべきである、という意見は提唱されてきたが、実態は遅々として進んでいないのが現状である。
体質を変えなくてならないということは頭ではわかっているのであるが、具体的にどのような方向に変えていけばよいか、という点になると、方向性はなかなか定まらない。
実際に事業経営に当たっている経営者は、目先の数字を無視できないだけに、先の状況を読む時間的余裕がない。特に繊維業界では、目に見える具体的な成果以外には評価されないために、実現可能が定かでないビジョン的発想は、誰も真剣に考えようとはしない。
そういう慣習が強く働いていると、歴史のある企業ほど改革が遅れざるを得なくなる。過去の成功体験が重んじられてきた企業は、まさに「後ろ向き志向」の企業である。
「後ろ向き志向」の経営意識が根強い体質では、個々の企業だけではなく、産地や業界自体も生き残っていくことは難しい。
この過去に成功してきた原理・原則の一つに「プロダクトアウト志向による分業体制」があった。これまで、確かに分業体制は、高度成長時代には、海外からデザインや技術を輸入し、製品のコピーを大量生産する体制を可能にし、高い生産効率を誇ってきた。
つまり、売り手市場のもとでは、生産して販売するプロセス間の分断された分業体制は極めて有効であった。
しかし、市場自体が供給過剰になり、しだいに売手市場から買手市場に変換するにおよんで、このプロダクトアウト志向の分業は、時代不適応になってきた。つまり、消費者ニーズが高度に多様化した買手市場では、このプロダクトアウト志向の供給体制は、消費者のニーズやスピードに対応した高付加価値製品を生み出せなくなってきた。
むしろ、このプロダクトアウト志向の安価な製品がアジアから大量に流れ込んでくるようになり、日本で存続は難しくなってきた。
買手市場のもとでは、商品の供給体制も、プロダクトアウト志向から買手優先のマーケットイン志向へと、体質を変換していく必要がある。
そのために日本の各産業で構築されてきた分業の限界を認識し、業界自体のリエンジニアリングを志向しつつ、市場のニーズに対応する付加価値経営を展開していく必要がある。
これは何もアパレル産業だけではなく、リテール産業やテキスタル産業にもこのようなマーケットイン志向の新しい経営システムがもとめられている。
トータリズム時代における高付加価値経営の特徴
島精機の島社長は、このようなプロダクトアウト志向の分業体制を打破したトータリズム時代の新しい経営システムの確立を提唱している。
島社長はもともと「付加価値は消費者によって決定される」と強調している。この説に従うと、消費者が欲しいと思うものを提供して付加価値は初めて成立するのであるから、事業経営は、消費者のニーズの予測から出発すべきである。
そうすると、トータル・システムの出発点は「消費者ニーズの把握」である。
島社長の考えるトータリズムは、同社がはやくから主張する「トータル・ファッション・システム」および「トータル・ニッティング・システム」といったトータル戦略に集約されている。
同社は、単なるコンピュータ機器や編機を売るのではなく、停滞しつつあるファッション・アパレル企業の生き残りの手段として、ファッション業界に対して「新しい経営システムの構築ツール」を提供しようとしている。
アパレル業界における企業・生産・流通の新しい付加価値経営への脱皮を提案している。つまり、島精機はユーザーの事業に付加価値を提供することを狙っている。
世界で一流のファッション資源を活かす道は、マネジメントの革新である。
山村貴敬研究室 山村 貴敬
去る1年前、本誌97年7月号で「快適な企業による快適な志が、生活者との共感と真のCSを生む」という標題で執筆した。そこで論じたのは、今日のファッションビジネスは旧来のビジネス発想からの転換が要請されており、CS達成の道は「創造的破壊による戦略とマネジメントの革新が必要」ということであった。
それから1年を経た今日、日本のファッションビジネスは、一層の消費不振とグローバル競争の進展が影響し、発想の転換がより必要とされる状況に追い込まれている。
本稿では、新旧交代が表面化した今日のファッションマーケットを前提に、日本のファッションビジネスの優位点と劣位点を整理分析する。
新旧交代が表面化した、今日のファッションビジネス
昨年来のファッションマーケットでは、インディーズ系ブランドや、国内外のインディーズブランドを集積したセレクトショップが注目されている。
●インディーズブランド/「アンダーカバー」「ゴム」「ビューティビースト」「ラビファ」「シンイチロー・アラカワ」など。
●セレクトショップ/「ノーウエア」「メイドインワールド」「アゴスト」など。
これらインディーズブランドやセレクトショップは、裏原宿などのマイナー立地のみならず、都心百貨店インショップのようなメジャー立地においても坪効率100万円以上、昨対伸び率150%を上げるケースも多く、総じて好調な業績を上げている。
DC進化型SPAやセレクトショップ御三家(ビームスなど)などのライフスタイル提案型業態に加えて、インディーズブランドや新セレクトショップが急速にマーケットの地位を確立しつつある状況と言える。
ファッションビジネスにおいて、このようなシンボリックな新旧交代が起こったのは、おそらくオイルショック後の1970年代中盤以来のことであろう。
DCの原形である当時のマンションメーカーは、1970年前後に発足した企業が多いが、これら企業が提案するファッションブランドがマーケットで一斉に浮上したのは、オイルショック後に既存のアパレルブランドが売上不振に陥った時であった。
オイルショック時以上の消費不振にある今日、消費者は自分自身が満足しない商品を買うほどの経済的余裕はない。また現在の消費者のファッション感度は、当時とは比較にならないほど進化しており、過去の古い業界常識で開発されたブランドや商品を購入しなければならない必然性もない。
ファッションビジネスの新旧交代は、今日の不況によって表面化した訳である。
ファッションビジネス進化の4段階
それでは、今日のファッション消費者が求める価値観は、過去の業界常識とどのように異なるのか。日本のファッション消費者とファッションビジネスは、これまで次のような3段階の進化を遂げてきた。
1)販売戦略を基軸に据えた時代(~60年代)/消費者が服というモノを消費していた時代の戦略で、アパレル企業は営業戦略、小売企業は販売戦略に重きを置いたビジネスが主流を占めた時代。
2)マーチャンダイジング戦略を基軸に据えた時代(60年代後半~70年代)/消費者のファッション化に対応して、マーチャンダイジング戦略を重視したビジネスが主流を占めた時代。
3)マーケティング戦略を基軸に据える時代(70年代後半~90年代前半)/消費者の個性化に対応して、ブランドコンセプトに基づいたマーチャンダイジング戦略と流通戦略を統合させたマーケティング戦略に重きがおかれた時代で、アパレル企業の直営店戦略が進行する。
そして、今日の日本のファッションビジネスは、このような3段階を経過した後、いよいよ進化した消費者と共生・共創する第4段階の、
4)コミュニケーション創造型マーケティング戦略を基軸に据える時代に立っている。
第4期の「コミュニケーション創造型マーケティング」を基軸に据えるファッションビジネスは、一言で言って進化した消費者と双方向コミュニケーションを進めるところにある。
第3期のビジネスは、明確なターゲットを設定し、ブランドや業態のコンセプトに基づいて商品戦略と流通戦略を統合させたが、まだまだファッションのプロダクトアウトであったことは否定できない。
今日の進化した消費者は、特定のブランドに固執することなく、自分らしいライフスタイルを基本に、その時々の生活意識・購買意識に応じて、ブランドやショップを使い分けている。
第4期の戦略は、そういった進化した消費者とのコミュニケーションの密度を高める、言い換えれば「市場シェアの獲得から顧客シェアの獲得ヘ」と、顧客から選択されるブランドやショップになっていくことが要請されている。
ファッション・コミュニケーションを創造するには、そのためのメディアが必要である。
ファッション・コミュニケーションの世界では、商品も、空間も、人も、そして従来型プロモーション・メディアも、全てメディアである。
従来のように、ブランドコンセプトが先にあって、それに応じた商品戦略、流通戦略を進めるのではなく、顧客満足を達成するためのファッション・コミュニケーションが先にあり、そのメディアとして、商品、空間、人的販売、プロモーション・メディアが位置づけられることになる。
前述のインディーズブランド等は、ファッションを通じて顧客と共感する第4期のファッションビジネスの考え方をプリミティブに具現している業態なのである。
中部通産局「繊維先進事例」調査に学ぶ
“元気印”の共通点は自助努力 注目されるバーチャルファクトリー
繊研新聞社 取締役名古屋支社長 山下 征彦
中部通産局が「中部地域繊維産業の飛躍に向けて」(繊維先進事例集)をこのほどまとめた。
「先進事例の経緯およびメカニズムを分析することにより経営計画の再構築への提案をおこなう」というのが調査の目的だ。
平たく言えば百回「悪い」、「不景気だ」と言うより、元気印の地域、産地、企業を見つけてその共通項を見いだした方が参考になるというわけだ。
確かに戦後最大とも金融恐慌寸前ともいわれる今回の不況の中でも頑張っている企業はあるし、成功までは行っていないにしても道筋を見い出した産地・企業があるのも事実。そうしたケースには共通項も多い。
繊維先進事例に係わる調査委員会(委員長・平井東幸 岐阜経済大学教授ほか3名)の一人として先進事例集作成に参画した者としてその概要の説明を中心に事例集には盛り込まれなかった最近の先進事例について報告する。
◇◇〈背景は深刻な実態〉◇◇
中部地域の繊維産業は全国の9割を占める毛織物を始め綿織物、合繊織物、ニット、染色整理、アパレルなど全国的にも一定のシェアを持ち地域経済に貢献してきた。
しかし85年のプラザ合意以降の円高による輸入増大、生産の海外移転に加え、バブル崩壊後の長引く不況から厳しい状態に追い込まれている。
加えて規制緩和による大店法の廃止により、売り場の過剰状態が発生、取引を混乱に落とし入れている。
この事態は全国どこの産地も同じであるが、例えば墨田、桐生、八王子、今治などファッションタウン構想の推進により地域活性化に取り組んでいるところもあるし、個別企業でも斬新な施策を打ち出しているところもある。
そうした元気印の共通項は何か、調査委員会はそこに絞って集中論議した。
調査の過程で判明した事態が極めて深刻だったということだ。平成9年中部通産局の産地組合調査によると「10年後の転廃業予測」で77%の産地が3割以上5割未満の企業が「転廃する」と予測していた事である。
加えて未来を創る青年部の活動状況に対しても85%が「殆ど親睦的な活動に止まる」、「存在しない、結成不可能」と答えていた事は「対策が急務」である事を調査委員会に知らしめた。
同じ調査で情報として提供を希望する分野として「先進的な他産地の情報」が過半数51%を占めたことが中部通産局をして「繊維先進事例に係わる調査委員会」設置に動かせた。
◇◇厳しいコメント◇◇
委員会は産地・企業の調査に当たって活性化への取り組みを明確にするため共通質問項目を作成したほか、関係各界からの中部産地に対するコメントも求めた。
まず関連業界がどう見ているのかコメントを紹介したい。
・「品質は世界一、しかし企画提案力の強化が他産地と比べて弱い。販売力も弱い。非衣料分野など新しい事業展開も今後は必要」(総合商社)
・「他産地と比較して受け身。提案力に欠ける」(専門商社)
・「QR体制の確立や産地、企業のイメージアップが必要。画期的な新製品かもしくはニッチ(隙間)のようなオリジナル商品を望む(量販店)
・「市場、消費者を研究しないで生産している」(繊維機械メーカー)
・「高い技術水準だが、高コストで競争力がない。またメーカー数が多過ぎる」
・「高い創造力、付加価値が無いと生き残れない」(海外多国籍企業)
出された主な意見は「品質については問題ない」が「企画力、提案力、販売力が弱い」、「QR体制、イメージアップ、オリジナルの開発などが必要」などだった。
中でも繊維機械メーカーの指摘した「市場、消費者の研究不足」という意見はそこがマーケット・インの原点だけに指摘は謙虚に受け止めるべきだろう。
調査委員会は他産地の産地・企業中心に18社のヒアリング、9社からのコメントのほか蓄積した情報を加味して活性化の方向を「製造分野の改革」、「流通 分野の取り組み」、「国際化への取り組み」、「情報発信への取り組み」、「消費者ニーズの把握と開拓」、「人材育成の推進」、「地域活性化への取り組 み」、「施策・公営試験場などの活用」の8項目にまとめた。
例えばコメントで出された「情報発信への取り組み」については展示会で成功した事例、産地・ハウスブランドを確立した事例、需要開拓や新用途開拓の事例など各論で紹介と分析を行った。
トレンド速応型になる日本市場
-テキスタイルサバイバルの途-
ファッションジャーナリスト 藤岡 篤子
いま、ファッション業界では、3つのシーズントレンドが同時進行している。
ぎりぎりまで引き付けたアパレルの99年春夏企画、一年後のトレンドを予測する99/2000秋冬の企画。そして店頭に向けての、この秋冬の素材を中心とした細かい展開計画。現在はシステムさえ万全ならば、売筋商品は2週間でできる。
長い時間とコストが伴うテキスタイル開発がファッションの基本ではあるが、それを生かした旬の料理に仕立てるのは、比較的に短時間でできる。手をかけたソースを手早く、客のニーズに合わせた一皿にするのは、最も現実の市場に適した方法だろう。
不況の中でさまざまに生き延びる手段を模索するうちに、次第に効率的で効果的な手法を見つけ出したと言って良い。
そして、日本のアパレルの中で勝ち組、負け組が明確に色分けされるに連れ、日本の市場に有効なアプローチのポイントも、また明快になってきた。
まず、ヤングゾーンには「トレンド」が最重要であること。「オゾック」「インディヴィ」「イネド」「ロートレアモン」の群を抜いた人気振りは、いかに早くトレンドを商品に落とし込めるかのスピード性と大きく関連している。
ファッショントレンドは、ファッション全体にかかわるものだが、日本では、例えヨーロッパのミッシー、ミセスゾーンのトレンドとして提案されているものであっても、10代から20代前半のヤングが、どん欲に飛びつく。
日本では、現在「早い=トレンド」の図式が確立しており、トレンドの消化が少しでも遅れたブランドは、先程述べた勝ち組のブランドの仲間に入る事はできない。
一番手のグループと、少し乗り遅れた二番手のグループとでは、一位と十位以下ぐらいの売り上げとイメージの差が開いているのが現状だ。
その意味では、ヤングの勝ち組になるには、トレンドを取り入れるにあたって、ためらう時間や、妙な日本ナイズされたセンスはかえって邪魔で、欧米のトレンドのストレートで素直な取り入れと、リーズナブルな価格設定こそが、重要なポイントとなる。
キャリアもヤングに準じるトレンド性が大切だ。しかし、このゾーンでは雑誌「オッジ」がバイブルで「オッジ」層と呼ばれる、日本独自のシンプルで活動的、甘さのあるキャリアガール・ルックが生まれている。
この層の特徴として、トレンドに組みしない点があるのは気をつけたい。年令が上がるに連れて、嗜好、体型、社会性などが強くなり、ピュアトレンドとはさまざまな点で離れて行くのだが、キャリアガールは、ヤングと社会生活の接点と言える位置付けだ。中でも、仕事へ野心を持つ女性達は、仕事をする女性達の中でも着実に増えている。
仕事に、自己実現とステイタス、経済的な豊かさを求める女性達が、ヤングキャリアの時期から、すでにその志しに乗っとったスタイルをする事は、この先行き不安の中でこそ自分の存在を強調するテクニックとしても、拡大して行きそうな傾向だ。
全体の層として、団魂世代のように量としてのまとまりはないが、スタイリッシュな存在感は、はるかにかっこ良い。ファッションリーダーとして、定着するのは違いない。
さて、ここでキャリアのファッション特性を幾つか挙げてみよう。まず、スカートよりパンツを好む事。この一年間ファッションの世界では、パンツブームが去りつつあり、スカートが圧倒的なトレンドになっている。プリーツに始まり、タイト、マキシなどバラエティが、ぐんぐん増えている。
キーワードも「スポーティ」より「ソフトエッジ」、「ミニマル」より「ファンタジー」、「新しいボリウム」へと移行している。
ヤングゾーンでは、このところスカートが爆発的にヒットし、モード系ブランドでもスカートのヒット商品が続々と登場している。
しかし、キャリア系では、アンケートなどを見ると、いまだにパンツ人気が圧倒的に強い。活動的でシャープな印象を好むキャリアの嗜好は、ヤングキャリアほど明快である。
'99/'00秋冬 FDCテキスタイルコレクションを開催
FDCは、9月16日(水)から18日(金)までの3日間「第30回 '99/'00秋冬FDCテキスタイルコレクション」を一宮地場産業ファッションデザインセンターで開催した。
今回も、「創造的複合化への挑戦」をコンセプトに掲げ、21世紀に向けて我々が自覚しなければいけない、都市生活と自然との共生“Organic”をメインテーマに創造的素材が提案された。
会場入口には「コンセプト・コーナー」、中央に来シーズン注目すべき素材群の「リマーカブルコーナー」、FDCが市場性を考慮し、独自に開発した「FDCオリジナル・コーナー」を配し、周囲に「ECO GREEN」、「NAIVE NATURAL」、「STYLISH STREET」、「RETRO FUTURE」の4つテーマで素材が提案、展示された。また、来シーズンを予兆するアパレルも展示された。
会期中、地元繊維関係者をはじめ、東西のアパレル、コンバータ等約4,500人の来場者でにぎわった。また、会場を訪れた関係者は、展示されている素材、アパレルの1点1点を手で触り、風合い、糸使いなど確かめていた。
9月16日には、ミラ・ショーンジャパン(株)の鍛治正行氏と(株)プロモードの佐藤英一氏による「ファッション マネージメント セミナー」、9月17日には、ファッション・コーディネーター木下優子、テキスタイル・コーディネーター北川美智子の両氏による「テキスタイル トレンド セミナー」が、9月18日には、繊維産業構造改善事業協会主催の「繊維産業情報化導入研修会」が開催され、各セミナー受講者は、熱心にメモを取っていた。
その他、服飾関係学生説明会(10校270人)、繊維企画支援機器展示(3社)も行なわれた。
'98秋のマーケット分析と市場動向による
'99春夏ファッショントレンド分析
'98秋のマーケット分析(株式会社K・T・スカンクワーク代表 ファッションディレクター 照井 加代子)
'98のマーケットは、今までにない消費の低迷と異常気象によるWパンチで、ファッション業界も大変厳しい状況を迎えている。この春までは、ロマンチックトレンド善戦でヤング市場も元気であったが、夏商戦からは、大変苦戦を強いられた。
それは景気の低迷がより深刻になった事も要因だが、それよりも業界としての問題は、消費者の要求のトレンドを、大きくズラして供給した事にある。
具体的に言えば、去年から売りに売れたロマンチックラインのキャミソールアイテムを深追いした事にある。ヤングの客層は、もうすでに次のトレンドであるスポーツや、モダンなテーストヘの欲求があったのに、なかなか市場では供給されなかった事である。
一部のブランドでは春からパーカータイプを打ち出し、春夏商戦共善戦したメーカーもあった。しかし、この秋商戦としてそのまま春を引きずったトレンドの消化では、またまた苦戦してしまう。
ヤングゾーンのヒットメーカーであった某ブラントもトレンドの微妙な読みの異なりで、去年対比7掛けと言う厳しい数字が出ている。
そして、この秋10月に入っても、気温29度の猛暑が続き、週末毎に台風に見舞れ、秋本番の商戦は大苦戦。百貨店の9月・10月の売れ筋を調査してみる とヤング市場から、ミセス市場まで、またカジュアルブランドからエレガンスブランドまでが、タートル半袖ニットの単品売りと言う結果になっている。
去年は、キャミソールにカーディガンと言うコーディネートでの売れ方をしていたので、単価もある程度伸びたが、今年は単一アイテムでの売れ方をしたので売り上げが苦戦した要因となった。
街の中の秋気分をキャッチしたいヤング達は、フラノのストレッチブーツにノースリーブのニットを組み合せ、一方では、薄手の長袖セーターに足元サンダルと言った夏秋アイテムコーディネートが目立っていた。
フラノ素材も洋服アイテムでは、10月にはまだ売れ筋に入っていなかったが、靴やバックの素材としては8月から大ヒットした。ボトムスで目立った動きをしたのがプリーツスカート、昨年はチェックのミニプリーツスカートがヤングゾーンでの売れ筋だったが、今年は88cm丈と57cm丈のクリスタルプリーツ、これらは、アダルト層までの売れ筋となっている。
又、シャツに関しては、衿付きスキッパータイプの続投、秋立ち上り期には苦戦していたカーディガンも、衿付きテザインに変化して売れ始めた。
また、ファー使いアイテムのヒットはバック、ニット、コートの衿等。これら全てがヤング・アダルト共通でのヒットアイテムとなっている。カラーは、グレーの一人勝ち、去年のアダルトとエレガンスゾーンのカラーの失敗(一昨年のウーロン茶の深追いで打ち出しを、まだ茶色にしていた事)は、今年は見事に修復され、ジャストカラーのグレーの打ち出しとなった。
市場的にはあまりにも、カラーが一辺倒になった為、売場にメリハリ感がなくなった事、又、全体感が暗く感じられた事は反省の要因となるが、久々にカラートレンドが大ヒットしたシーズンとしては、次シーズンへの期待につながるだろう。
不況を跳ね返すクリエーションの果実
第7回ジャパン・テキスタイル・コンテストの成果を点検する
不屈の産地魂が輝く(現代構造研究所 所長 三島 彰)
この秋は、ジャパン・テキスタル・コンテストの審査と表彰をはさんで、産地回りに明け暮れた。11月下旬開催の東京テキスタイルデザイン展のためのリサーチと作品収集が目的だったのだが、今さらいうまでもなく、産地は戦後稀にみる不況の渦中に苦闘していた。
福井の吉村仙松商店は合繊先染に特化する産地コンバーターで、そこに集荷される先鋭なデザインは、内外に高く評価されているのだが、「国内で思うように売れないのなら、輸出で頑張るしかない。何が何でも産地体系を死守しなければならない」と語っていた。
もし産地の織物生産が、一定ロットを割ったら、撚糸、整経などの前工程、染色、整理などの後工程が成り立たなくなり、そこが潰れたら産地体系は崩壊してしまうというわけである。すでに石川県では染色整理は消滅してしまった。
何が何でも県単位で産地体系が完結していなければならないわけではないが、このような石川県の状況が北陸全体に広がったら、わが国のフィラメント織物は崩壊してしまう。このような事情は尾州を中心とするスパン産地でも、他人事ではすまされないだろう。
今回の第7回ジャパン・テキスタイル・コンテストは、このような息詰まる状況のなかで行われた。
このような状況であれば、産地で出逢う製品の数々、コンテストに応募される作品の様々が、どのような不況影響を受けているのか、少なからず気掛りだったのだが、少なくとも私の眼に触れたものは、不況何処吹く風の磨き抜かれたものばかりだった。仕事の質を落とせば売れるというマーケットではない。
さらに一層の磨きを掛けて、しかも値をおさめないと売れないというのが現状なのではあるまいか。
今回、メンズのフィニッシュ賞に輝いた岩田豊氏は、受賞者座談会で面白い視点を披露しておられた。「クィックレスポンスに対応するためには、あらかじめ色なれを在庫しておかなければならないのだが、営業倉庫に寝かせておく間に製品がこなれてよくなっていく。残り物に福があるとはこういうことか」というのである。
わが国の製品が世界一流のレベルに到達していることは自他共に認めるところだが、難をいえば寝かせておく余裕が無いことだといわれてきた。イタリア織物が優れている一つの理由は、日本に送られてくる船のなかで、製品が熟成することにあるといわれているが、従来のわが国では、寝かせておくゆとりはなかった。
これは織物だけのことではなく、海外の設備機械の優れたものは、たとえばそのシリンダーブロックを、カットする前に1年間庭に寝かせておく間に生まれる、素材の熟成にあるといわれていた。
現在の貸し渋りのなかで、寝かせておく資金のゆとりがあるとは考えにくいのだが、吉田氏の話によれば、クィックレスポンスに対応せざるを得ない事情が、図らずもわが国生産のウィークポイントを一部改善することに繁がっているのかも知れない。
このように、不況下に製品の質が上昇するという話を聞くのは嬉しいことなのたが、同じように、不況が応募作品の質を劣化させることなく、逆にその進歩前進を促している姿をみることは、審査員にとってこの上ない喜びであった。
大競争時代が始まった 消費者が変わる、機軸が動く
繊研新聞社編集局デスク 山崎 光弘
日本の小売流通業は今、大転換期に立たされている。東急日本橋店が白木屋時代から数えると336年の歴史に 幕を引き、大丸和歌山店の閉鎖、三越新宿東館も家具販売の最大手の大塚家具に賃貸されるなど百貨店が消えて行く。長引く消費不況、さらには“平成大恐慌” に突入かという論調まで飛び出している。
単に、モノが売れないだけではない。売れない中で売れているモノはルイ・ヴィトン、シャネル、プラダにLL・ビーン、ギャップといずれも海外有力ブラン ド。国内勢では無印良品(良品計画)、ファイブフォックス、フランドルが目立つ程度である。消費者は圧倒的に海外ブランドを支持している。
これに加えて、小売流通業では海外小売業が本格進出をはかる。既に、ギャップは95年9月の1号店開設以来、98年7月末までに全国12カ所・21店をオープンさせた。
東京・渋谷に大型路面店を開設したのに続いて、98年秋には東京・新宿(フラッグス)、大阪・梅田に相次いでフラッグシップショップ(旗艦店)を開いた。
また、先行する玩具専門店チェーンのトイザらスは、2000年1,000店舗態勢に向け着々と出店攻勢を強めている。スペインを本拠に、パリ、ニュー ヨークで話題のハイファッション・低価格のザラも、3年越しの準備を経て、東京・渋谷に自営の大型路面店を98年8月末にオープンさせた。日本でのパート ナーは80年代の日本人DCブームをリードしたビギグループである。
こうした、専門店勢に止まらず、百貨店業態に近い大型総合専門店も3,000平方メートル級の出店を米国勢中心に検討されている。
米・中堅百貨店グループのプロフィッツに買収されたサックス・フィフィス・アベニューは「日本は非常に興味のある市場。フルライン型は難しいがファッション分野に的を絞った展開なら大いに可能性がある。この場合、立地が最大の問題」と同社の最高幹部はコメントしている。
また、米国小売流通業の方向性を毎年確認し合う「98年全米小売業大会」では、これまで小売業の海外進出は(小売業は地元密着産業ということで)タブー視されていたが、米国内市場が飽和状態となった今、可能性を検討すべき時代を迎えた、との企業家の声が相次いだ。
イタリア有力ブランドメーカーの海外店舗
都市別出店状況
1 東 京・・・・188
2 ミラノ・・・・124
3 ソウル・・・・108
4 香 港・・・・104
4 ローマ・・・・104
6 大 阪・・・・ 92
6 パ リ・・・・ 92
8 台 北・・・・ 89
9 ニューヨーク・ 76
10 ロンドン・・・ 72
注:伊・パンビアンコ社72社調査から
我が国におけるライセンスブランドの現状
上武大学商学部 土田 貞夫
はじめに
近年のビジネスのグローバリゼーションをふまえて、我が国アパレル業界としても海外への進出は従来よりも更に一層大きな課題として注目されている。
その際、海外アパレルブランドの進出状況を明らかにすると同時に、海外企業のグローバル戦略を把握するためにも海外ブランドの日本市場への進出状況を理解することが肝要である。
その結果は、今後日本のアパレル企業の世界進出にあたって、日本の市場の開放をふまえて展開が可能となるという効果が期待できる。加えて日本のアパレル 企業にとっては、海外企業の日本進出の実態を知ることができ、各企業の効果的なグローバル戦略の構築を可能とすることが期待できる。
以上の主旨に基づいて我が国における海外ライセンスブランドに関する実態調査が実施されている(注1)。この調査に基づいて、我が国アパレル市場における海外ブランドの占める割合を把握し、市場の開放の度合いを理解したい。
構成比における国別比較 分野別平均構成比比較
国 別 分 野 別
フランス 3.97% 靴 下 9.32%
イタリー 3.14% 紳士アパレル 9.32%
イギリス 2.82% 婦人アパレル 7.47%
スペイン 2.82% 子供アパレル 6.48%
他欧州 1.80% スポーツウェア 6.18%
アメリカ 1.37% そ の 他 6.12%
ドイツ 0.33% アンダーウェア 4.72%
ネクタイ・マフラー 3.99%
スカーフ 1.45%
注1:平成9年度「アパレル市場規模に関する調査報告」
(社)日本アパレル産業協会(平成10年2月)
脱 同 質 化
(株)TCカンパニー代表 ファッション・ディレクター 十三 千鶴
■'98マーケット動向
昨年ファッション業界全体は不況の風に巻き込まれ、そこから脱却出来なかった厳しい一年だったといえます。
通産省、調べによる商業販売統計によると98年度百貨店は、10兆6,527億円で4.8%減、これは2年連続の減少となり、スーパーも12兆5,913億円、0.3%減で7年連続の減少と発表しています。
また大型店の衣料品販売額は、8兆436億円、5.2%減。百貨店の衣料品は5兆4,860億円、4.5%減。スーパーが3兆220億円、6.6%減となっています。
こうしたなかで98年を振り返ると、衣料においては特にヒット商品もなくあえて傾向的なものをあげると、グレーカラーそして長めのスカート(プリーツスカート)、スカートに合わせる単品トップス(半袖セーター&シャツトップス)、スポーティーなブルゾンタイプといった単品商品群に人気が集中したといえます。
益々減少する重衣料感覚といえますが、ライト感覚をベースにコンフォータブル&カジュアルをキーワードにしたコンフォートシューズやアンコンシューズが話題を集めたのが特徴的です。
一方98年の経済効果を高めたものは、1)タイタニック 2)横浜ベイスターズ 3)デジタル機器、といったものがヒット商品(ヒット商品といえるかど うかわかりませんが)として注目されましたが、単にものがヒットすると言うより、事がらみ、精神的な要素と思えるものから事への移行が特徴といえます。
また昨年は、百貨店を始め小売の相次ぐリニューアル、それに伴なう新ブランド導入が盛んにおこなわれました。なかでも、ミセスゾーンの活性化に伴う売り場のMDでしょう。しかし全体的には、日本経済の落ち込みもありミセスゾーンの売上は大変苦戦をしたといえます。
しかしながら今後の売り場対策を考えるにあたり、このゾーンの活性化が大きな課題といえます。注目ターゲットは、高齢化社会を迎えるなかで中心ターゲットともいえる団塊世代。
この世代のマーケティングによる分析がおこなわれていますが生活環境もまちまちでライフスタイルも様々でスタイル分析に困難を要しています。
最近のもう一つの特徴といえば生活雑貨への興味といえましょう。ファッション衣料分野(一部ヤングゾーンを除いて)の苦戦を横目に消費者に注目され支持を拡大し、順調にシェアーを増やしつつあるのがファブリック、雑貨家具をトータルに品揃えしたホームファッションの台頭といえましょう。
例えば、無印良品、&Aフランフラン、コムサデホームなどが話題です。また外資系企業の動きも活発化しつつあり、ホームファッション市場の国内マーケットは新たな競争が始りつつあります。
強撚糸による織物表面効果の解析
愛知県尾張繊維技術センター 大野 博、河村 博司
ウール強撚糸織物のシボ発生機構と表面効果を探るため、織物表面上のシボ形成と強撚糸のらせん形成との関係を解析した。
シボの発生要因分析として、製織及び仕上条件を検討し、経緯密度、緯糸配列、組織とシボ形状との関係が明らかとなった。また、解撚トルクによる緯糸のら せん変形と織物中のクリンプ形状の検討から、織物のシボ形状のパターン傾向が明らかとなった。これらの結果により、緯糸の撚係数や解撚トルク及び設計条件 の設定から、ウール強撚糸織物のシボ形状の推定が可能となった。
はじめに
細番手、強撚糸化が進行しているウール業界において、強撚糸の取り扱いは試行錯誤の状況にある。特にウール強撚糸のシボ織物は、仕上時の糸の解撚トルク及び収縮力で、激しい収縮挙動が起きることから、その挙動にはより難しいものがある。
シボ織物は、湿潤等による解撚トルクの発生によって、織物中交錯する糸で拘束されていても糸がねじれ座屈して、織物表面にしわ状の「シボ」を発現させるもので、強撚糸が3次元変形し、らせんを形成して起きるものと考えられている。
本研究では、ウール強撚糸による織物表面効果技術の確立を図るため、この独特の表面効果を持つシボ織物に着目し、織物中のウール強撚糸の挙動と表面形状との関係を検討することとした。
種々のシボ織物の試織から、シボの発生要因の分析を行い、織物表面上のシボ形成とウール強撚糸との関係について解析した。さらにこれらの分析結果をもとに、シボ織物の表面パターン形状について検討し、近似計算によりシボ形状を表すことを試みたので、その成果も含めここに報告する。
まとめ
ウール強撚糸織物のシボ発生機構と表面効果を探るため、ウール強撚糸織物のシボ発生要因を分析し、ウール強撚糸のらせん変形と織物表面上のシボ形成との関係を解析した。
結果をまとめると次のとおりである。
(1)強撚糸の挙動と織物収縮率の関係
緯糸強撚糸の湿潤時の解撚トルクは、撚係数に比例して増大する。シボ出し加工後の織物の緯方向の収縮率は、この湿潤時のトルクに比例して起こり、強撚糸がねじり座屈してらせんを形成する。この時、強撚糸の撚は織物の緯方向の収縮にのみ影響し、経方向の収縮にはほとんど影響しない。
(2)緯糸配列とシボ形状の関係
緯糸の配列は同方向撚の強撚糸が隣接すると、同一周期のらせんが形成され織物全体に周期的な凹凸が発現し、シボが形成される。
緯糸配列は、4S4Zではなだらかな大波のシボを形成し、3S3Z、2S2Zの順に緯方向の収縮率が大きくなるとともに、より細かなシボを形成することが分かった。
(3)組織及び密度とシボ形状の関係
緯糸の浮きが大きいほど、織物は緯方向に大きく収縮する傾向があり、組織においては、平織、2/2斜紋、3/1斜紋、斜子の順に収縮は大きくなる。
緯糸強撚糸は経糸の把持間隔でらせんを形成し、経緯密度が粗いほど大きならせんのシボが形成されることが分かった。番手及び密度の違いがあっても、シボ出し加工後の経糸間隔が織組織に対してほぼ一定値に近づくことから、緯糸強撚糸は織物中で安定するまで収縮することが明らかとなった。
斜紋織、斜子織のシボは、組織でシボ形状が固定されてしまうため、複雑なシボは平織で得られることが確認できた。この平織のシボ形状は、緯糸のらせん変形と織物中のクリンプ形状によるシボの基本パターンがあることを確認した。
(4)シボ発現機構とシボ形状
以上の結果により、強撚糸の解撚トルク、織物の設計条件(経緯密度、配列、組織、収縮率等)から、シボ織物中の強撚糸のねじり座屈形状を表す近似式の計算が可能であり、しぼ形状を推定することが可能となった。
環境調和型生産システムに関する研究
――非金属染料による羊毛染色法に関する研究――
愛知県尾張繊維技術センター 大野 博、河村 博司
要 旨
ウール強撚糸織物のシボ発生機構と表面効果を探るため、織物表面上のシボ形成と強撚糸のらせん形成との関係を解析した。
シボの発生要因分析として、製織及び仕上条件を検討し、経緯密度、緯糸配列、組織とシボ形状との関係が明らかとなった。また、解撚トルクによる緯糸のら せん変形と織物中のクリンプ形状の検討から、織物のシボ形状のパターン傾向が明らかとなった。これらの結果により、緯糸の撚係数や解撚トルク及び設計条件 の設定から、ウール強撚糸織物のシボ形状の推定が可能となった。
はじめに
細番手、強撚糸化が進行しているウール業界において、強撚糸の取り扱いは試行錯誤の状況にある。特にウール強撚糸のシボ織物は、仕上時の糸の解撚トルク及び収縮力で、激しい収縮挙動が起きることから、その挙動にはより難しいものがある。
シボ織物は、湿潤等による解撚トルクの発生によって、織物中交錯する糸で拘束されていても糸がねじれ座屈して、織物表面にしわ状の「シボ」を発現させるもので、強撚糸が3次元変形し、らせんを形成して起きるものと考えられている。
本研究では、ウール強撚糸による織物表面効果技術の確立を図るため、この独特の表面効果を持つシボ織物に着目し、織物中のウール強撚糸の挙動と表面形状との関係を検討することとした。
種々のシボ織物の試織から、シボの発生要因の分析を行い、織物表面上のシボ形成とウール強撚糸との関係について解析した。さらにこれらの分析結果をもとに、シボ織物の表面パターン形状について検討し、近似計算によりシボ形状を表すことを試みたので、その成果も含めここに報告する。
まとめ
ウール強撚糸織物のシボ発生機構と表面効果を探るため、ウール強撚糸織物のシボ発生要因を分析し、ウール強撚糸のらせん変形と織物表面上のシボ形成との関係を解析した。
結果をまとめると次のとおりである。
(1)強撚糸の挙動と織物収縮率の関係
緯糸強撚糸の湿潤時の解撚トルクは、撚係数に比例して増大する。シボ出し加工後の織物の緯方向の収縮率は、この湿潤時のトルクに比例して起こり、強撚糸がねじり座屈してらせんを形成する。この時、強撚糸の撚は織物の緯方向の収縮にのみ影響し、経方向の収縮にはほとんど影響しない。
(2)緯糸配列とシボ形状の関係
緯糸の配列は同方向撚の強撚糸が隣接すると、同一周期のらせんが形成され織物全体に周期的な凹凸が発現し、シボが形成される。
緯糸配列は、4S4Zではなだらかな大波のシボを形成し、3S3Z、2S2Zの順に緯方向の収縮率が大きくなるとともに、より細かなシボを形成することが分かった。
(3)組織及び密度とシボ形状の関係
緯糸の浮きが大きいほど、織物は緯方向に大きく収縮する傾向があり、組織においては、平織、2/2斜紋、3/1斜紋、斜子の順に収縮は大きくなる。
緯糸強撚糸は経糸の把持間隔でらせんを形成し、経緯密度が粗いほど大きならせんのシボが形成されることが分かった。番手及び密度の違いがあっても、シボ出し加工後の経糸間隔が織組織に対してほぼ一定値に近づくことから、緯糸強撚糸は織物中で安定するまで収縮することが明らかとなった。
斜紋織、斜子織のシボは、組織でシボ形状が固定されてしまうため、複雑なシボは平織で得られることが確認できた。この平織のシボ形状は、緯糸のらせん変形と織物中のクリンプ形状によるシボの基本パターンがあることを確認した。
(4)シボ発現機構とシボ形状
以上の結果により、強撚糸の解撚トルク、織物の設計条件(経緯密度、配列、組織、収縮率等)から、シボ織物中の強撚糸のねじり座屈形状を表す近似式の計算が可能であり、しぼ形状を推定することが可能となった。
カーリングと糸トルクの関係解析
愛知県尾張繊維技術センター 池口 達治、村井 美保
カーリングの評価方法として、角度法、三次元法、リボン法の三種類を考案した。角度法は織物先端の向く角度で評価する。三次元法は織物の高さを計測し、その対角線断面形状を基に評価する。リボン法は短冊状に裁断した織物の回転トルクから評価する。
糸の撚係数と密度を変化させた織物を製織し、カーリングの程度を上記評価方法を使って評価した。
この結果、経緯の撚係数と密度のバランスが崩れた織物でカーリングが発生しやすいことを確認した。また、角度法、三次元法の有効性が確認できた。
はじめに</p>
毛織物業界では薄地織物、強撚糸織物の占める割合が増加し、これに伴いカーリングの発現頻度も高くなってき ている。カーリングが起きやすい織物は、裁断、縫製工程で作業の妨げとなるばかりでなく、製品になった後でも形態安定性の面からクレームに発展することも あり、重要課題のひとつとなっている。
カーリングはその発現機構により2種類に大別できる。
一つは朱子織物や高収縮率織物などに多く見られる“収縮によるカーリング”である。
浮き糸が多い朱子織物などは、経糸や緯糸が収縮するとその収縮力が織物の表面側か裏面側に集中する。収縮力がある程度以上になると“収縮によるカーリング”が起こるが、この場合、収縮する糸に沿った方向に巻く。
もう一つは、強撚糸織物などに多く見られる“解撚によるカーリング”で、構成糸の解撚トルクが要因である。
ウール糸の撚がセットされる機構は、緊張状態にあるウール繊維中のS-S結合が湿熱環境下で一旦破壊され、SH基と再結合する(SH/SS交換反応)ことにより、そのときの形状が維持されるためといわれている。
このセットは製織工程を円滑に行うための仮セットと考えるべきで、完全に解撚トルクが除去されるものではない。
環境湿度が変化すると再架橋したS-S結合が還元分解され、セットが解消される。このとき固定されていた撚が元に戻ろうとする力、即ち解撚トルクが発生し、カーリングが起こる。この場合、織物は角からななめに巻いていく。
本研究では“解撚によるカーリング”を研究対象とし、本報告では“解撚によるカーリング”のことをカーリングと呼ぶこととする。
カーリングを根本的に抑制するためには具体的な製造条件とカーリングが発現する様子との関係を明らかにする必要があるが、これを対象とした過去の研究はほとんどない。
カーリングに影響を及ぼす因子としては、糸の撚セット、織物規格、仕上加工条件などいくつか考えられる。これらのうちカーリングの根本的原因であると考えられる解撚トルク及び経緯密度とカーリングとの関係について調べた。
まとめ
三種類の方式によりカーリングの評価を行ったが、角度法及び三次元法についてはその有効性が確認できた。リボン法については、今回の目的である経緯の撚係数や密度とカーリングとの関係解析において、評価方法として適当とはいえない。しかし縫製工程で短冊形状のパーツを扱うことがあれば、ねじれトルクの計測値が利用できる。
また、以上の結果からカーリングの発生要因として糸の撚係数と織物密度との関係が重要であることが明らかとなった。
これらの組み合わせを最適とすることにより強撚糸織物でもカーリングが発生しにくい織物を設計することが可能と考えられる。
原料が異なる糸、異素材を交撚した杢糸、同じ原料でもトップ染め糸と先染め糸というように加工遍歴の異なる糸などを使った強撚糸織物などを経緯に組み合わせた織物は、カーリングに対して特別に注意を払う必要がある。
使用するすべての糸について解撚トルクを測定できず、解撚トルクと密度のバランスをとることが困難な場合は、経緯とも撚方向の異なる糸を1:1に配し、経糸どうし及び緯糸どうしで解撚トルクを相殺させることがカーリングに対する唯一の有効な手段であるといえる。
また、カーリングが起きない織物で後加工を行うことにより、逆にカーリングが発現してしまうことがあった。後加工に限らず、糸や織物に強いセットを与えるとこのような現象が発現することがある。
また、過去の研究では高セットを行った織物は低湿度でカーリングが発生し、低セットを行った織物は高湿度でカーリングが発生することが確認されているが、これらの現象の解明については今後の課題としたい。
羊毛繊維の油吸着性
愛知県尾張繊維技術センター 大津 吉秋、羽田野 早苗
使用済み羊毛のリサイクルの一つとして油吸着材への再利用を検討するため、油吸着性に関する基礎的な試験を行った。その結果、以下のことを確認した。
1)油吸着量には吸着材の密度が、吸水量には吸着材の密度と組成が大きく影響した。
2)吸着材の形状と油吸着量の関係は密度が同一のとき、わた状>糸状>布状の順である。
3)使用済み羊毛の吸水量は新毛に比べて多いが、油吸着量では両者に差は見られない。
4)羊毛は、油/水混合液の場合、油サイドを高い比率で選択吸着する。
はじめに
繊維製品のリサイクルは古くから行われてはいるが、その多くは廃棄物として処分されているのが現状である。羊毛製品も例外ではなく、有効な利用方法が検討されるなか、特に、非衣料分野へのリサイクルが強く要望されている。
近年、羊毛の特性の一つである親油性が注目され、油吸着材としてのリサイクル化が期待されている。
そこで、本研究では、羊毛素材を中心に、トップ、反毛わた、不織布、糸、織物等を使用して油吸着性に係わる基礎的な試験を行ったので報告する。
おわりに
本研究では、羊毛トップ、反毛、不織布、糸、織物を使用して、試料の密度、形状、油の粘度等と油吸着性に関する試験を行った。
その結果、羊毛の油に対する高い選択吸着性や吸着量が確認でき、油吸着材として活用できることが分かった。今後、実用化には使用形態に応じた性能試験や強度試験等が必要である。
羊毛/綿混紡品の染色技術
愛知県尾張繊維技術センター 斎藤 秀夫、片岡 千乃
天然繊維の組合せである羊毛/綿素材の染色法について検討した。その結果、前処理の方法としては、綿を酵素精練し、酵素の失活を過酸化水素で漂白をかねて行う方法が、精練効果と白度の向上が同時に得られ、羊毛の損傷が少ない優れた方法であることが分った。
また、染色方法としては反応染料でまず綿を染色し、pHを調整し羊毛を染色する方式を検討した。
その結果ほぼ同色に染色され、染料の有効利用が図られるとともに、時間短縮も可能であることが分った。また、染色後の防縮加工(羊毛用樹脂による加工)は、染色堅牢度を向上させる点で良いことが分った。
はじめに
複合素材に対する消費者ニーズは最近高まりを見せている。その中で、天然繊維の組合せである羊毛/綿素材は注目を集めている。
この素材は、表1に示す特徴を持ち、カジュアル化が進む中で大いに期待されている素材の一つである。ところが、羊毛と綿は化学的性質が異なる(綿はアルカリに強いが酸には弱い、羊毛はその逆)ため、その混紡品は染色が最も困難な複合素材の一つと言われている。
特に、綿サイドの前処理、未防縮(防縮)羊毛/綿に対する同色染色加工技術等は未だ完全に確立されていない。
前処理については、綿繊維の精練(漂白)が必要であり、含まれる不純物が表面に存在するため、染料がその部分に表面染着し、湿潤、摩擦等の堅牢度が低下することはよく知られている。
それを防ぐには、綿繊維の精練処理(アルカリ領域で行う)が不可欠である。しかし、この条件では、アルカリによる羊毛へのダメージが問題である。現在実用化されている羊毛/綿素材は、繊維長の長い羊毛繊維を切断し、あらかじめ原綿の状態で精練、漂白した綿を混紡して糸を作るなどの方法が行われているようであるが、これでは手間がかかりコストアップになってしまうため後工程で精錬(漂白)する方法が望まれている。また染色方法も一長一短があり、もっと簡単で堅牢度のよい染色方法が求められている。
そこで、本研究では、綿にとっても羊毛にとっても損傷の少ない前処理方法について検討し、新規開発反応染料等を適用し、省資源で染色時間も短かく(一浴)、同色性、堅牢度に優れた羊毛/綿混紡品の染色技術の確立を図るのを目的として試験を行った。
表1 羊毛、綿繊維の特性
特 性 | 羊毛(W) | 綿(C) |
肌触りが良い | ○(20μ以下) | ○ |
保温力が良い | ○ | × |
吸温性が良い | ○ | ○ |
耐洗濯性が良い | × | ○ |
吸汗性が良い | ○ | ○ |
防シワ性が良い | ○ | × |
防縮性が良い | × | ○ |
ストレッチ毛織物の製造技術
愛知県尾張繊維技術センター 広瀬 繁樹、藤田 浩文
本研究は、ストレッチ糸製造条件、製織条件、仕上条件の諸条件を段階的に変化させて、そのときのストレッチ織物のストレッチ特性および収縮特性を測定することにより、ストレッチ織物の製造上での最適条件を明らかにすることを目標とした。
その結果、様々な要因でストレッチ織物の特性が変化することが明らかになり、特に問題となっている伸長回復率とプレス収縮特性を改善する方法を見い出すことができた。
はじめに
ここ2~3年前からヨーロッパでストレッチ素材に関心が持たれており、それを受けて日本でもタイトなスタイリングや機能性、着心地などを演出する素材としてストレッチが注目を集め、今、予想以上のブームが続いている。
ストレッチ素材については、昭和30年後半にポリウレタン系弾性繊維などの基礎的な手法が確立され、特許も多く出されたが、従来のポリウレタン繊維は、インナー衣料、水着、ウインタースポーツ衣料などの限られた用途で、限定された素材にしか使用されなかった。
しかし、今回は、婦人服地を中心にアウター市場で、織物、丸編、経編、後染め、先染め、プリントとあらゆる素材にわたってブームとなったことから、ストレッチ素材が初めて一般的繊維素材として認識されたと言える。
しかし、ポリウレタン繊維そのものは、伸長性や温度の変化に非常にデリケートな素材であるため、撚糸および製織、仕上時に適切な条件で生産しなければ縫製段階などで「ゆがみ、縮み、しわ」などが発生し、製品の品質や物性に不安定性を招いてしまう。
当産地においても、このブームにより着心地の良いストレッチ織物の需要の急増を受け、積極的な取り組みがなされているが、その製造において試行錯誤の面があり、いろいろな問題が発生してきている。
そこで本研究では、先染したウールとスパンデックス糸を複合したストレッチ糸を緯糸にのみ使用した先染緯ストレッチ毛織物についてその糸の製造条件および緯ストレッチ織物の規格・製造条件とストレッチ特性との関係を解析することとし、当産地におけるより品質の高いストレッチ織物の製造技術の確立を目指すこととした。
まとめ
今回の研究では、仕上工程、とりわけヒートセット工程の条件設定がストレッチ織物の品質に対して非常に重要な要因であった。しかしながら、ストレッチ織物はその他さまざまな要因でそのストレッチ特性や収縮特性が変化することがわかり、それらがバランス良く成り立っている適正な条件を見出す必要があることもわかった。
そして、本実験結果から伸長率と残留ひずみ率とは比例の関係にあり、伸長回復率とは反比例の関係にあった。また、プレス収縮率と収縮率およびハイグラルエキスパンションとは比例関係にあることが明らかとなった。
これらの関係から伸長率が20%を目標にしたとき、以下の製造条件で伸長回復率85%以上、残留ひずみ率3%以下、収縮率3%以下、プレス収縮率3%以下のストレッチ織物を得ることができた。
・ストレッチ糸製造条件
スパンデックス糸20D、ドラフト率2.75倍、セット温度80℃
・製織条件
経密度(理論密度)×0.7~0.8、緯糸張力20gf
・仕上条件
ヒートセット条件
セット温度×時間180℃×30秒 生機セット、仕上セット併用
蒸絨あり
そして、今回の実験結果から、ある一工程だけで、例えば、ヒートセット工程だけで織物の物性を修整するといったことはあまり好ましくなく、また、必ずスパンデックス糸の種類やタイプをよく把握してその特性にあった取り扱いが必要で、使用する仕上機や糸の番手にも細心の注意が必要であると考えられる。
赤外分光法の応用による損傷羊毛の評価
愛知県尾張繊維技術センター 三輪 幸弘、坂川 登
羊毛の漂白、アルカリ、酸処理等による化学的損傷の評価法として、フーリエ変換赤外(FTIR)分光/減衰全反射(ATR)法の応用を検討した。
赤外スペクトルの解析法として、二次微分スペクトル法を用い、羊毛中の化学変化による反応生成物の特性吸収帯を迅速に測定できた。また、その特性吸収帯の定性的な変化は、化学的損傷の原因を推定するのに役立つ。
はじめに
羊毛の化学的損傷の評価法には、溶解度(アルカリ溶解度、尿素・亜硫酸水素ナト リウム溶解度)と着色法(キトンレッドG法、メチレンブルー法、ベンゾパープリン法)が広く用いられている。また、迅速な評価法として、ニンヒドリン法 (抽出した加水分解ペプチドとニンヒドリンとの呈色反応)が報告されている。しかし、その損傷の原因を推定、識別できないなどの問題がある。また、羊毛を 構成するアミノ酸の化学変化による反応生成物を化学分析法で評価することは長時間を要し、操作は繁雑である。
最近、フーリエ変換赤外分光減衰全反射法(FTIR/ATR法)を用い、羊毛中の化学変化による反応生成物の特性吸収帯を二次微分スペクトルにより解析する、分光学的な評価法が報告されている。
二次微分スペクトルとは、吸光度Eの波長による微分値を、波長の関数として表したものである。二次微分スペクトルをとると重なり合ったピークが別々のピークとしてはっきり現れる。
本報では、FTIR/ATR法の応用により、羊毛の化学的損傷の原因を推定する可能性を検討したので、報告する。
おわりに
羊毛の化学的損傷の評価法として、溶解度が広く用いられている。アルカリ溶解度は、酸類、酸化、還元、熱、光によって増加し、アルカリ類によって減少する。また、尿素・亜硫酸水素ナトリウム溶解度は、酸化処理によって増加し、アルカリ処理によって減少する。
分光学的な評価法として、FTIR/ATR法は、羊毛中の化学変化による反応生成物の定性的な変化を迅速に測定できた。そして、溶解度、表面観察などと併用することによって、損傷原因の推定に役立つものと考える。
これらのまとめを表に示した。
表 羊毛の化学的損傷原因の推定
損傷の評価 | 処理 | ||||
酸化還元 | 還元漂白 | アルカリ | 酸 | ||
溶解度 | 増加 | 増加 | 減少 | 増加 | |
特性吸収帯 | システイン酸*1 | ○ | ○ | ||
ブンテ塩 | ○ | ||||
デヒドロアラニン*2 | ○ | ||||
硫酸エステル | ○*3 |
*1:光でも生成
*2:高温蒸気でも生成
*3:硫酸で生成
しかし、相反する2種またはそれ以上の処理をした場合には、溶解度と同様、たとえ未処理の対照試料があっても結果の解釈は困難となる。
最近、羊毛の損傷評価法としてゲル電気泳動法を用いる試みが報告されている。ゲル電気泳動のパターンは、漂白処理や染色条件によって変化する。例えば、酸化漂白処理では、酸化剤は羊毛の高硫黄タンパク質の領域(分子量45000未満)を主に攻撃し、低硫黄タンパク質の領城(分子量60000~45000)は漂白条件(過酸化水素の濃度、処理時問、温度)を強くしないと減少しない。
そのパターンを多変量統計解析することにより、羊毛への処理内容を同定できる可能性が見いだされている。今後、このような評価法が期待される。
スーパー繊維織物開発
愛知県尾張繊維技術センター 服部 安紀、鹿野 剛
近年の健康志向、自然志向を背景としたレクリエーション産業の活性化に伴い、新しい衣料分野製品が必要となってきている。我々はアウトドアなどによる過酷な運動で岩などから身体を保護することができる耐創傷性に優れる衣料用織物を検討した。
その結果、従来、産業用資材用としてしか使用されなかった高強度、高弾性のスーパー繊維を用いてスーパー繊維織物を開発した。スーパー繊維織物は一般の繊維を用いた織物より耐創傷性機能が明らかに高いことがわかった。
はじめに
市場を見渡すと自動車に代表されるようにレクリエーションを意識した商品群に消費者の目は注がれている。そこで我々はレクリエーション衣料といった新しい分野の衣料用製品の開発を検討した。
レクリエーション衣料に求められる性能は、その使用用途により多様であろうが、今回我々は登山などアウトドア時に岩などと接触することにより起こる創傷、たとえば切り傷あるいは擦り傷から身体を保護することができる耐創傷性に優れる織物について検討をした。
我々は耐創傷性に優れる織物をつくるためにスーパー繊維に注目した。スーパー繊維はアラミド繊維に代表されるように高強度、高弾性の繊維で、産業資材分野での使用は現在活発に進められている。しかしながら、衣料用では一部防弾チョッキや特殊手袋など特定品に限られ、一般衣料品への採用は進んでいない。そこで、我々はスーパー繊維の特性を考慮し、衣料用途への採用を検討した。
まとめ
以上により耐創傷性に優れたスーパー繊維織物を開発することができた。なお、得られた結果をまとめると次のとおりである。
(ア)パラ系アラミド糸の製織可能な抱合力は、フィラメント糸では加撚(撚係数33)とWAX加工で、スパン糸は加撚(撚係数91)と糊付加工(PVA系)により得られ、この条件により製織できることが確認できた。
(イ)切り傷に相当する突発的耐創傷性はパラ系アラミド糸の糸密度の影響が大で、擦り傷に相当する耐久的耐創傷性は糸のタイプ(フィラメント糸>スパン糸、太>細)の影響が大であることがわかった。
(ウ)スーパー繊維織物はレギュラー繊維織物に対して突発的耐創傷性で1.4倍~1.6倍程度、耐久的耐創傷性で2.0倍~2.2倍程度の耐創傷性機能の優位性があることがわかった。
また、実用面でもスーパー繊維織物はカッターナイフやアスファルト路面などの負荷に対し、高い耐創傷性機能が確認できた。
(エ)耐久的耐創傷性のみを重要視するのであればパラ系アラミド糸の100%の使用の必要がなく、糸配列で1本おきの50%までは性能低下が見られないことがわかった。
逆に突発的耐創傷性を重要視するのであれば本糸を100%使用する必要があり、目的に合わせ織物設計を検討する必要がある。
今後の課題としては衣料用途としては、まだ高い弾性率が使用用途を制約する可能性があり、パラ系アラミド糸自体の低弾性化は困難である現状を踏まえ、伸縮付与ができる複合糸を検討する必要があると考えられる。
ウールケラチン及びその複合物の繊維化技術
愛知県尾張繊維技術センター 柴山 幹生、加藤 一徳
羊毛から抽出したケラチンタンパク質及び他の高分子と混合した溶液を用いて、湿式紡糸法により、繊維化する技術について検討した。
まず、ケラチンの一種であるα-ケラトースと絹フィブロインに対する溶媒として、無機塩/エタノール/水三成分混合溶液が有効であることが分かった。
さらに、α-ケラトースを三成分溶媒に溶解することで湿式紡糸用原液として適した高粘度溶液を調製することができた。
α-ケラトース溶液、フィブロインとの混合溶液、ポリビニルアルコールとの混合溶液の湿式紡糸への可能性を検討した。
種々の凝固剤に対する凝固特性から判断して、α-ケラトース/PVA複合物の繊維化が最も可能性が高いと考えられる。
はじめに
昨今、産業界では廃棄物処理段階におけるダイオキシンの発生や環境ホルモン等、環境問題がさけられないテーマとなり、環境に調和した素材又は製品の開発が求められている。
そのような状況を背景に、各種廃棄物の再資源化、生分解性高分子の開発やその製品化、さらには天然高分子を用いた各種機能性製品の開発が活発に展開されている。
当センターでは、羊毛タンパク質であるケラチンの高度利用技術・製品化技術の開発を進めている。平成7年度では羊毛からケラチンを抽出する技術について、平成8年度には抽出したケラチン溶液を膜化する技術について検討を行い、成果を得ている。
そこで、これまで得た知見を基盤として、平成9年度からケラチンを再生繊維化する技術の確立を目指し、研究を進めている。
タンパク質系繊維の再生紡糸については、プロミックス繊維も含め湿式紡糸法が多く採用されている。タンパク質を溶解した濃厚溶液をノズル(口金)から凝固液中に吐出して固化・再生する紡糸方法である。
これまで、絹フィブロインの再生繊維化に関する検討例が最も多く、過去に多くの研究例及び製品化の例がある。最近の研究例では、臭化リチウム/エタノール/水三成分混合溶媒に絹フィブロインを溶解し、その溶液をノズルからメタノールに吐出して再生繊維化している。
ケラチンの場合、まず板津らの方法により、羊毛を高温で還元処理しながらケラチンタンパク質を抽出し、その抽出液を適度に濃縮してケラチン濃厚水溶液を得ることが出来る。しかし、溶液粘度が非常に低いため、紡糸原液には適さないと考えられる。そこで、羊毛から酸化処理によって抽出したケラチン(α-ケラトース)の粉末を用いて、それを溶媒に溶解することを考えた。
本研究では、ケラチン用溶媒について検討し、ケラチン溶液及び絹フィブロイン混合溶液、PVA混合溶液の繊維化について検討した。
おわりに
ウールケラチンおよびその複合物の繊維化について、溶媒の検討から湿式紡糸の基礎試験まで進めてきた。ケラチン単一の再生繊維を得ることはできなかったのものの、ポリビニルアルコールとの複合物の湿式紡糸について、その可能性は高いと考えられる。
湿式紡糸に関して、その研究報告例は溶融紡糸に比べて少なく、また現象論にとどまる場合が多い。したがって、試行錯誤を要するものの、この結果は、他のタイプのケラチンやPVAとの複合物またはコラーゲン等天然高分子との複合物の繊維化に対して、参考になるものと考えられる。
今後、それらの繊維化および延伸まで研究を進め、紡糸-延伸までの製糸方法の確立を図りたい。
メロウスポーツシャツの開発
愛知県尾張繊維技術センター 都築 正廣、吉村 裕
近年、高齢者の健康志向が高まり、アウトドア活動として各種のスポーツやハイキ ング、登山がたいへん盛んである。そこで、これら運動時の発汗に着目し、親水性と疎水性の繊維を組み合わせることにより、吸汗速乾性のある快適ファブリッ クの開発について研究を進め、ポロシャツ、スゥエットシャツを製作した。
その結果、目的とする吸汗速乾性に優れたスポーツシャツを開発することができた。
はじめに
高齢化社会の進展に対応し、平成7年度から愛知県商工部では、商工部6試験研究機関が協力し、「円熟世代=メロウエイジ向け商品開発」の研究に取り組んできた。
7年度には、「メロウエイジ商品に関する調査研究」を実施し、8年度、9年度の2カ年で、それぞれの試験研究機関の特性に合わせた開発研究を進めた。
尾張繊維技術センターでは、「高齢者向け快適衣服の開発に関する研究」を行った。8年度では、「高齢者向けハウスウェア」を開発、9年度において、「メロウスポーツシャツ」の開発研究に取り組んだ。
この間、わが国にあっては、福祉、高齢者に対する関心が急速に深まり、各所で実態把握、調査研究、商品開発シンポジウム、展示会などの取り組みが盛んに行われるようになってきた。ここで特筆すべきは、「ユニバーサルデザイン」という概念が確立、普及してきたことである。
「ユニバーサルデザイン」とは、1990年にアメリカにおいて提唱された概念で、「特別なニーズという考え方に基づくアプローチではなく、すべての人々 に共用できる機能や空間を志向し、その実現のための複数の解に対応するフレキシビリティーを製品に如何に配慮していくかの手法」をいい、これを取り込ん で、高齢者専用品ではなく、年齢を問わない製品を開発することが大切となる。
こうした視点を踏まえ、研究を進めた。
まとめ
近年の高齢者は健康志向が高く、各種のスポーツやハイキング、登山がたいへん盛んである。今回の研究は、そのハイキングにおける発汗に焦点を当てて、快適な衣服の開発に取り組んだ。
研究を進めるうち、これは別に高齢者だけの問題でなく、若壮年すべての人に関わることで、まさにユニバーサルデザインであること実感した。
開発製品についての要点は以下にまとめられる。
(1)疎水性繊維と親水性繊維の二層構造は、膚と布地間の吸汗・速乾性の発揮に有効な機構であることが分かった。
(2)布地の吸水、乾燥における重要な機能は、毛細管現象と毛管水・結合水の和である保水力である。このため、布地製作上の眼目は、使用目的に応じた素材の選択及び糸・組織の設計であることが分かった。
例えば、発汗量が多い場合には親水性繊維に結合水の大きいレーヨンを使用する、などの素材選択である。あるいは、毛細管現象をより発揮させるため、繊維間空隙を膚面は粗で表面に向かって次第に密にしていく、といった糸・組織の設計である。
(3)求めた機能は、あらゆる局面に対応するものでなく、運動の程度による発汗量、気温、風などによって違ってくる。加えて個人差も大きいと考えられる。
衣服の機能は、着用時の目的、状況によって、使い分けする必要があることを改めて確認した。
また、吸汗・速乾性のみならず、「快適な着心地」という上位概念を実現するには、風合や肌触り、保温性、透湿・放湿性、通気性などの複合的な要素を最適化していくことが必要であり、今後も総合的な視点で改良を図っていきたいと考えている。
天然加工材の衣料への応用
愛知県尾張繊維技術センター 北野 道雄、茶谷 悦司
天然高分子の持つ機能を有効に利用するため、天然系加工剤の衣料への応用について研究した。方法は、各種の天然系加工剤を各種繊維素材に付与する方法について研究するとともに、人の肌と繊維衣料との関係を考えた加工法と高機能製品の開発技術の確立を目差し、加工した製品のスキンケア性能等について評価した。
この結果、天然由来の加工剤をコラーゲンや絹フィブロイン等の天然高分子と架橋剤を併用して付与加工することにより、化粧品の持つような機能を各種繊維素材に付与する技術を確立した。
また、加工繊維の性能を評価した結果、天然系加工剤の諸特性を発現できる高機能衣料が開発できたほか、皮膚への刺激が低減化される特徴を併せ持つことが明らかになった。
はじめに
食品や化粧品分野における天然指向ブームを背景に、健康や快適性を目的とした繊維製品の研究開発が強く求められている。このため、天然由来物質を機能性加工剤として各種繊維に付与加工する技術を確立し、健康や快適性を目指した人や環境にやさしい衣料製品の開発展開が大いに期待されていた。
また、今まで衣料に求められていた物理的あるいは装飾性等を目的とした機能が主であったが、現在では快適性や感性、エコロジーや健康が求められるようになった。
そこで、各種の天然系加工剤を応用した繊維加工法について研究し、化粧品の持つような機能を繊維に付与することにより、人の肌と繊維衣料との関係を考え た加工法と高機能製品の開発技術を確立するための研究を行った。この結果、スキンケア機能を持った衣料製品が開発できたので報告する。
まとめ
以上、天然高分子の持つ機能を有効に利用するため、天然系加工剤の衣料への応用について研究した結果を述べた。人の肌と繊維衣料との関係を考えた加工法を開発するため、化粧品製造メーカーであるメナード化粧品(株)と共同で研究を進めた。そして、メーカーの開発したスキンケア加工剤を衣料品に付与加工する方法の確立と加工した衣料の評価試験を行った。
この結果、スキンケア加工による諸特性の向上とパンティストッキングによる着用試験を試みた結果、実用化可能な性能の衣料が開発できた。なお、レイシエキスやプロテオグリカンについては、皮膚への効果は確認できたものの、繊維に加工してその効果を評価した結果は、レイシエキスでは皮膚刺激が低下し、プロテオグリカンではトレメラエキスと類似の効果が得られたためデータを割愛した。
得られた成果を要約するとつぎのとおりである。
(1)三種類の天然高分子の加水分解物を用いたスキンケア加工により、強伸度や吸放湿性、吸水性等が増加する他、帯電性特性についても半減期、飽和電圧とも低くなることが判明した。
(2)スキンケア加工布の皮膚刺激性について日皮協認定法(河合法)で評価した結果、未加工布と比較して低くなっていることが判明した。
(3)スキンケア加工布の抗菌性については、汗に含まれる成分で有害性のないウンデシレン酸により、SEK(繊維製品新機能評価協議会)基準をクリアーすることが分かった。
(4)アカネ科のブンから抽出した加工剤を付与加工したパンティストッキングのスキンケア加工効果について、着用試験を行って調べた結果、モニターの7割について大腿部の引き締め効果を確認した。
(5)3カ月間着用試験後のブンの残留濃度を液体クロマトグラフで定量した結果、残留濃度は付与加工量の1-10%で、開発した加工法による徐放効果が明らかになった。
織物検査データの解析技術
愛知県尾張繊維技術センター 安藤 正好、安田 篤司
平成6年度から3年計画で開発した「自動検反システム」を高度化するための研究を行い、次の成果を得た。
(1)織物を自動検査するため検査情報(織物規格データ、各検査装置の検査パラメー夕)と検査結果をデータベース化し、検査情報等の解析を行う検反情報管理システムを開発した。
(2)自動検反支援知識ベースを高度化するため、画像処理、特に画像入力時の設定条件のルールを充実するため、検査織物の表面色、カメラの絞り、照明などから入力画像の輝度を推定する重回帰式を求めた。また、知識ベースの入力等のユーザーインターフェースを改良した。
はじめに
毛織物生産工程の中で検反作業は、製織・染色・整理などの各工程で繰り返し行われており、そのほとんどの作業が人手(目視)に頼っているのが現状である。
この作業を自動化することは、省力化を図るとともに製品の均質化を図る上からも、以前から実用化が強く望まれていた研究課題の一つであった。
この作業を自動化するため、平成6年度から3年計画で研究を進め「自動検反システム」を開発した。このシステムは、一次元、二次元、色の三種類の検査装置から構成されている。一次元検査装置は、無地織物や小柄の織物を検査対象とし、ラインセンサで獲得した一次元画像データを解析して織欠点を検査する。
二次元検査装置は、柄織物を対象とし、カラーエリアセンサで獲得した二次元画像データを解析して柄欠点を検査する。
また、色検査装置は、無地織物を対象とし、分光光度計で獲得した分光データを解析して色欠点を検査する。検査織物の種類は無数にあり、検査条件を個々の 織物に適応した条件を設定する必要がある、この作業を効率化するため「自動検反システム支援知識ベース」(以下「知識ベース」と呼ぶ)も同時に開発した。
これは、検査織物の規格設計データから、各検査装置の検査パラメータを推論するシステムである。本研究では、この「自動検反システム」を高度化することを目的とし、次の内容について検討を行った。
(1) 「検査結果」、「織物規格」、「各検査装置の検査パラメータ」をデータベース化し、それらの情報から、検査条件を検討し適正化するための解析を行う「検反情報管理システム」(以下「管理システムと呼ぶ)を開発する。
(2) 「知識ベース」の画像処理条件の推論結果を適正化するため、画像入力条件等の検討を行いルールの充実を図るとともに、ユーザインタフェースなどを改良する。
(3) 「知識ベース」と「管理システム」を連携し、「自動検反システム」を高度化する。
まとめ
自動検反システムを高度化するため検討を行い得られた成果は次の通りである。
(1)織物を自動検査するため検査情報(織物規格データ、各検査装置検査パラメータ)と検査結果をクライアント・サーバ型のデータベースに登録・検索等を行うシステムを構築し、検査情報の解析を可能とした。
(2)自動検反支援知識ベースを高度化するため、画像処理とくに画像入力時の設定条件のルールを充実するため、検査織物の表面色、カメラの絞り、照明などと得られる画像の輝度を導き出す重回帰式を求め、画像処理関係のルールを充実させた。また、知識べースのユーザインタフェースを改良し処理の流れをわかりやすくした。
酵素によるポリエステル(PET)繊維改質加工の可能性
愛知県尾張繊維技術センター 茶谷 悦司、北野 道雄
ポリエステル(PET)繊維を酵素により改質する方法について研究し、改質した繊維の性能を評価した。その方法としては、モデル物質として低分子量芳香族エステル(エチレングリコールジベンゾエート)を選定し、これを分解し得る酵素を市販品及び土壌中の微生物から探索した。
その結果、この基質の分解能を有する市販酵素及び微生物の産出する酵素を見いだすことができた。これらの市販酵素を用いてポリエステル白布を処理し、各種性能評価試験を行ったところ、帯電特性、吸水性などに変化が認められた。
はじめに
プラスチックが我が国で使用されはじめてから約40年が経過し、今や我々の身の回りに種々のプラスチック製品が満ちあふれている。1995年の我が国の主要工業素材の生産量を比較するとプラスチックは鉄の15重量%弱の約1,400万トンの生産量であるが、比重が鉄の約1/7であることを考えると容積としては鉄の1億トンの生産量に比肩する生産量であったことになる。
当然のことながら、生産量の増加に伴って使用後排出されるプラスチックの量も増加し、その処理、再生方法については大きな社会問題となっている。
プラスチックの特徴の一つは“腐らない”というところにあり、“腐らない”ということは微生物分解を受けないということに他ならない。従来の天然高分子材料などは“腐る”ことにより大地に還っていったわけであるが、近年登場したプラスチックはこの微生物による物質循環のサイクルに乗らず、廃棄物処理問題など様々な問題を惹起させている。
しかしながらプラスチックは微生物分解を全く受けないかというとそうでもない。1960年代以降、これらプラスチックの廃棄物処理問題が懸念され、汎用高分子を分解・資化する微生物の探索が続けられ、合成高分子の化学構造とその微生物分解性との関係につき多くの知見が蓄積された。
C-C結合を主鎖とする合成高分子については、ポリエチレン、ポリビニルアルコール(PVA)などにつき微生物分解挙動が研究され、分子量20,000~90,000のPVAを完全に分解するPseudomonas属の分解菌が単離されている。
エーテル結合を主鎖とする合成高分子についてはポリエチレングリコール(PEG)について研究され、分子量10,000のPEGを分解するPseudomonas属の細菌が単離された。
エステル結合を主鎖とする合成高分子については、ポリエチレンアジペート、ポリカプロラクトンなどについて研究され、それぞれを分解する微生物が単離されている。
その一方、ポリエチレンテレフタレート(PET)のような芳香族ポリエステルの微生物分解は極めて困難であることが見出されている。
そこでここでは、微生物分解が困難とされているポリエチレンテレフタレートを分解・資化することができる微生物を集積培養法により土壌中から単離することを目標に研究を進めることとした。
また同時に、脂肪族ポリエステルを分解することが明らかになっているリパーゼ(市販品)を用いてポリエステル(PET)繊維を処理し、繊維の物性に対する影響を評価することにより、ポリエステル繊維加工に対する酵素適用の可能性を検討した。
まとめ
シワについて調べてみたが、新しい文献が見あたらず平凡な結果になってしまった感があるが、シワ回復性を向上するための要因をまとめてみた。
1)繊維の要因
・弾性率の高い繊維ほど良い
・(繊度×捲縮)が大きい、または太い羊毛ほど良い
2)糸の要因
・羊毛100%よりポリエステルとの混紡糸が良い
・平織の場合には細い糸より太い糸が良い
・糸の撚は文献により異なる
・単糸の撚数、単糸も双糸も影響がない
・単糸よりも双糸、経緯糸の撚方向は反対が良い
3)織物構造の要因
織物構造の影響は「糸の太さ」、「密度」、「組織」が互いに影響するため要因を特定することは困難に思うが、
・同一番手使いの平織では、密度・目付けの影響はない
・同一番手使・同一密度(目付一定)、緻密度変化では、平→2/1→2/2の順でルーズな組織ほど良い
4)アニーリングの要因
・試料の水分14~16%、100℃で4時間または80℃24時間または55℃72時間アニーリング後、緩速冷却するほど良い、但し100℃では羊毛は変退色する。
・ディエージされた試料は、空気乾燥→ドライスチーム(試料水分14~16%を綿布190g/m230枚で覆い、40秒スチーム→240秒バキューム)することで、エージングと同程度の良い効果が得られる。
純毛や毛混紡織物のシワについて
愛知県尾張繊維技術センター 服部 安紀
はじめに
衣服にシワが付くということは、古くから問題とされ、研究もされてきた。しかし、現在でも解決しがたい厄介な問題である。天然繊維の中でも毛織物は、シワが付きにくいとされている。しかし、夏場における平織物のスーツの着用では、熱、湿気など過酷な条件が加わり、背中、膝部等に発生するシワには、耐えられないものを感ずる。
先般も、ある機屋さんから、「シワになりにくい服地」をつくりたいがどうすればよいかとの相談を受けた。これまでの経験というか勘から、平織よりも綾織の方が良いよとか、毛・ポリエステル混紡が良いなど、曖昧な解答となってしまった。そこで、シワに関するこれまでとられてきた考え方を調査し、まとめてみた。
まとめ
シワについて調べてみたが、新しい文献が見あたらず平凡な結果になってしまった感があるが、シワ回復性を向上するための要因をまとめてみた。
1)繊維の要因
・弾性率の高い繊維ほど良い
・(繊度×捲縮)が大きい、または太い羊毛ほど良い
2)糸の要因
・羊毛100%よりポリエステルとの混紡糸が良い
・平織の場合には細い糸より太い糸が良い
・糸の撚は文献により異なる
・単糸の撚数、単糸も双糸も影響がない
・単糸よりも双糸、経緯糸の撚方向は反対が良い
3)織物構造の要因
織物構造の影響は「糸の太さ」、「密度」、「組織」が互いに影響するため要因を特定することは困難に思うが、
・同一番手使いの平織では、密度・目付けの影響はない
・同一番手使・同一密度(目付一定)、緻密度変化では、平→2/1→2/2の順でルーズな組織ほど良い
4)アニーリングの要因
・試料の水分14~16%、100℃で4時間または80℃24時間または55℃72時間アニーリング後、緩速冷却するほど良い、但し100℃では羊毛は変退色する。
・ディエージされた試料は、空気乾燥→ドライスチーム(試料水分14~16%を綿布190g/m230枚で覆い、40秒スチーム→240秒バキューム)することで、エージングと同程度の良い効果が得られる。
「衣服の洗濯、ドライクリーニングの動向」
愛知県尾張繊維技術センター 板津 敏彦
はじめに
地球的な規模の環境問題として「オゾン層の破壊」や「地球の温暖化」等があり、また国内の地下水汚染の状況からみても有害な化学物質の取扱いについて十分な検討、取締りが必要となっている。
特に、ドライクリーニングに使用する溶剤は、それぞれいろいろな問題があり、使用上の制約を受けている。
パークロロエチレンは水質汚濁防止法や一部の条例等で規制を受け、CFC113、1.1.1トリクロロエタンはオゾン層破壊の問題で生産中止、石油系については引火、爆発の危険性から消防法、建築基準法等の規制を受けている。
現在のところ、使用できる溶剤はパークロロエチレンと石油系の2つであり、最近のドライクリーニング機はこのようなことから、公害防止のための各種対応を図っている。
また、1995年以降家電メーカーはドライマーク衣服が洗える洗濯機を販売し、洗剤メーカーからはドライマーク衣服専用の洗剤が販売されてきた。
市場のニーズは「水洗い」に傾いてきている。家庭で洗えることのメリットは、ドライクリーニングでは落ちないという水洗いのメリット、経済性、自分で洗うと安心等の点である。ただし、洗濯の効果の「判断基準が難しい」、プレスなどの「仕上げが難しい」という声もある。
ここでは、環境問題を含め、衣服製品製造業に関係する現在の衣服の洗濯およびドライクリーニングの現状、今までにドライクリーニングで検討されてきた衣服クレームの概要、布地に与える影響等について述べる。
おわりに
ドライクリーニングと環境問題との関連について述べたが、各機器メーカーはこれに対応した機器・システムの開発を行っている。
一方、消費動向をみると、今後は水洗いによる家庭洗濯が消費ニーズに即したものとして注目されている。家電メーカーによる機器開発、洗剤メーカーによる洗剤開発も活発に行われている。
次に、ドライクリーニングによる衣服クレーム、布地の物性変化について述べた。家庭洗濯についての情報はまだ少ないが、これは高級で仕上げの厳しい衣服は家庭洗濯されていないことも一つの理由だろう。今後家庭の水洗いが増えるにつれて、ドライクリーニングで検討された内容が共通の問題として参考になる場合もあると考えられる。
衣服製造業にとっては新しい問題が発生する恐れもあり、逆に新しい需要が生み出されるチャンスでもある。一方ドライクリーニング業界においては家庭洗濯とは一味違う仕上げを工夫していかねばならないだろう。
今後は、最近の消費構造の変化に対応して、衣服製造業、ドライクリーニング業、洗濯機器メーカー等がグローバルな連携をとり、衣服の水洗いを含めた消費ニーズをより適確にとらえ、新しい提案を行うなどにより、その実現を図ることが重要になると思われる。
羊毛の防虫加工について
愛知県尾張繊維技術センター 茶谷 悦司
繊維または繊維製品を加害する害虫類は多く、これらの繊維製品の被害が年間どの程度になるかについての評価は日本では定かではないが、年間5億ドルに達するというアメリカの報告からみて、その実害は日本においても予想以上に大きいことが推定される。
中島らはクリーニング苦情の原因を調査し、変色、収縮などに次いで保管中に生ずる衣料害虫による被服の穴あき被害件数が目立ったと報告している。
したがって、被服管理を行う場合、着用や洗濯操作によって生じる被服の損傷・劣化とともに、保管中の損傷劣化をいかに防止するかが重要な課題となる。
最近、繊維加工には、今まで以上に健康や快適性および環境汚染性に対する配慮を求められるようになった。
羊毛製品についてもこれまでに行われてきた化学薬品による防虫加工に代わって、肌にやさしい加工技術、環境に負荷をかけない加工技術の開発が強く要望されるようになってきた。
そこで本稿では、こういった観点で開発の行われた新しい防虫加工処理方法を2、3紹介する。
羊毛害虫の生態
代表的な羊毛害虫は、イガ、ヒメマルカツオブシムシ、ヒメカツオブシムシである。これらは完全変態の昆虫で、卵→幼虫→蛹→成虫と経過するが、加害する時期は幼虫期である。
これらの幼虫は獣毛繊維、生糸、乾燥動物質、水産加工物を摂食するが、カツオブシムシ類は繭、生糸などを加害し、養蚕農家や生糸倉庫などでの被害が大きい。
従来、家庭で保管中の毛製品の被害は、ヒメマルカツオブシムシによることが多かったが、最近はイガによる被害が続出しているという。
イガが多く発生することとなった原因は、屋内環境が冬でも暖かく保たれるようになったことなどが考えられる。イガは恒温状態で飼育すると、どんどん世代の交代を繰り返し、室温20℃では年に4~5回の発生がみられることから大発生を起こしやすい。
一方、カーペット甲虫類は、蛹化する前に一度低温(10℃以下)で一定期間過ごさないと羽化できないという生態学的な条件から、年1回の発生となり、大発生までに時間がかかることなどが原因であろう。
おわりに
世の中の流れとして、繊維加工にもエコロジカル的に皮膚障害性、畜毒性、環境汚染性などに対する配慮を今まで以上に強いられることになろう。
染料自体に防虫効力があれば加工薬剤を処理しなくても防虫効果を付与することができるし、安全でしかも手間も省ける。
また加工剤を人体や環境への負荷のかからない天然物から選定すれば、安全でさらに付帯効果も期待できる。
こうした提案は、安全性を兼ね備えた地球環境に優しい製品の開発につながり、今後の防虫加工展開の一指針となると考えられる。
自動車内装材における繊維製品の現状
愛知県尾張繊維技術センター 鹿野 剛
自動車に使用されている繊維製品は自動車の高級化、高性能化そして安全性の向上に伴い着実に増加をしてきた。昭和50年代初頭に自動車の重量比でわずか0.7%程度であった繊維製品は現在その2倍から3倍程度になった。
この増加は厳しい性能が要求される自動車部品に対し、それらに対応できる繊維が確立されてきたことを意味し、自動車を構成する材料のひとつとして確実に地位を築いたことを示すものである。
近年の景気低迷による新車販売台数の伸び悩みは必然的にこれら自動車に用いる繊維製品の生産減少を引き起こしてはいるものの、その反面、RV車(多目的レジャー車)の好調はシート(座席)の数を増やし、さらに、室内空間の拡大を生み、自動車内装材の1台あたりの繊維の使用量を増やしている。
また、人々の安全への意識の高まりは繊維を用いているエアバッグの標準化を推し進めるなど、まだまだ自動車への繊維製品の採用は活発な動きを見せている。しかしながら、廃車のリサイクル問題では金属類の比較的容易な再利用が進んでいるのに対し、繊維の再利用はほとんど行われておらず、今後の使用量拡大の大きな壁となっているのも事実である。
本稿では自動車室内に用いられている内装材の各部品ごとに、現在使用されている素材の状況そして今後の動向について解説する。
バーチャル試着システムの現状
奈良女子大学 生活環境学部 助教授 今岡 春樹
アパレルの分野でもコンピュータが設計に積極的に利用されている。マーキング、グレーディング、パターンメーキングの機能を持ついわゆるアパレルCADシステムは企業での衣服設計工程に欠かせない道具となってきた。
しかし、このアパレルCADシステムは二次元の型紙を対象とした図形処理システムであり、直接三次元を取り扱うドレーピング工程と試作工程は現時点では実用化されていない。
ここでは試作工程をシミュレートするシステムに限定してその技術の現状を解説し、さらに今後の展望について述べる。
このシステムは一般に着装シミュレーションと呼ばれているが、そもそもの出発点において二つの流れがある。
一つは繊維工学の流れで、他の一つはCGの流れである。その目的は、前者では効率的な衣服構成であり、後者では効率的なアニメーション作りである映画ToyStoryをご覧になった方はあの衣服を思い浮かべて下さい。
しかしながら当然とも言えるが共通点も多い。本来のCGの目的はそれらしく見えればよく、あまり物理法則を使わない場合も多いが、このように複雑な形のリアリティを追究すると、物理法則に従ったモデリングの方がすぐれており、ほとんどの研究は物理法則を使っている。
また、アニメーションを意識しているため、動的なシミュレーションが中心となっている。
一方、繊維工学の分野ではもとより物理法則を元に考えられているので当然ながら共通点が存在する。また、繊維工学の分野では静的なシミュレーションが多いのが特徴である。しかし、同じ分野のモデリングにおいても詳細な部分ではいくつかの相違点がある。
これらの相違点を明確にするために、(1)衣服のモデル、(2)人体のモデル、(3)環境のモデルの3種類のモデルについて解説し、さらにこれらのモデル間の相互作用について解説する。
解説手法としては、モデルのCMPI構造に着目する。CMPI構造とは、Barzelによって提案された物理法則に従ったモデリング手法の階層構造のことである。
(Conceptual model):そのモデルを使って何をしたいか(言語やイメージのレベル)。
(Mathematical model):そのモデルを記述する基礎方程式(式のレベル)。
(Posed problem):未知数と既知の値は何か(解くべき問題としてレベル)。
(Implementation):具体的な数値解法(コンピュータプログラムのレべル)。
このCMPI構造を考えることは、着装シミュレーションにおいては特に効果的であると考える。すなわち、解こうとしている問題が複雑であるので、様々なレベルで技法が異なってくると考えられるからである。
実際異なった二つの流れの中で、すでに様々なシミュレーションシステムが提案されている。一般にそれらの差異は階層構造の下位になればなるほど顕著に表れる。
従来の研究
ここでは、CGの分野と繊維工学の分野に分けて従来の研究を概括する。これら二つの分野の研究の流れはBreenらの論文に詳しく述べられている。
まずCGの分野であるが、布のCGによる表現、布の動的な変形と剛体との接触問題の研究、衣服と人体モデルの動的な動き、が重要な研究の流れである。
その後の坂口らの研究やBreenらの研究はこの延長上にあり、特に布の力学的特性の改良が試みられている。着装シミュレーションとしては、動的なシミュレーションが基本であり、その点後述する静的なシミュレーションより難易度は高い。
繊維工学の分野では、布の形状、特にドレープ形状に関して長い研究の歴史がある。この歴史に関してはAmirbayat and Hearleの論文に詳しく述べられている。
ドレープ形状のシミュレーションとしては、布の力学的異方性の数学的記述、有限要素法によるドレープ形状の予測が重要な研究であり、この流れの中から、今岡ら、Okabeらの研究が生まれ、静的な着装シミュレーションの最初のシステムが構築された。
これらのシステムは、一方で情報の視覚化と他方で姿勢変化可能なシミュレーションへと進展している。以上の二つの流れは非常に対照的である。
CGは動的な布から出発し、布の力学的特性、様々な形態の衣服へと進展している。
繊維工学はドレープ形状の静的な予測と多様な服種から出発し、動的な変形へと進展している。将来的にはこの二つの流れは融合すると考えられる。
動的なシミュレーションでは運動方程式が支配方程式であり、静的なシミュレーションでは力の釣り合い方程式が支配方程式となる。
これらと異なり、幾何学的関係を支配式とした研究もあり、上記のシステムより計算コストが極端に低いことから実用システムも稼働している。
家庭用品品質表示法の改正について
愛知県尾張繊維技術センター 佐藤 久
はじめに
戦後の一時期、品質表示の不適正な商品が横行したことや、一般消費者が製品の品質を維持するための知識が不 足していたことによるトラブルが多発した。このため、消費者が製品の品質を正しく認識し、その購入に際して不測の損失を被ることがないように、消費者保護を目的として昭和30年に繊維製品を対象に「繊維製品品質表示法」が制定された。さらに昭和37年に繊維製品以外の家庭用品も含めた「家庭用品品質表示法」が制定された。
制定後30年以上を経過し小規模な改定はあったものの、大規模な改定は行われてこなかった。その間、消費者の製品に対する知識は制定時に比べて格段に向上し、製品も格段に高度化した。また、最近では規制の緩和が叫ばれ、自己責任制を根本とした製造物責任法(PL法)の施行など、製造者や消費者を取り巻く環境に様々な変化が起こってきた。
こうした環境の変化を受けて、家庭用品品質表示法についても見直しを必要とする機運が高まり、平成8年3月から消費経済審議会品質表示部会において、見直しに係る基本的方針が審議された。
さらに、同部会の下に繊維製品分科会など三部会が設置され、基本方針に沿って個別品目について表示事項などの見直しが行われた。
その結果、繊維製品については新しい繊維製品品質表示規程が平成9年10月1日付けで告示された。
運用の見直し
今回の改正は、事業者の自主性を尊重する立場をとっており、従来のように事業者に対し報告及び立入検査を定期的かつ一律に実施するのではなく、消費者苦情の動向や試買テストなどによる市場のモニタリングを基礎として、必要に応じて指示・公表・命令等の行政措置を行うこととなった。
おわりに
以上、新しい繊維製品品質表示規程について、その改正点を中心に解説した。なお、実際の表示にあたっては、家庭用品品質表示法施行令、繊維製品品質表示規程を十分に参照されるか、中部通商産業局に問合わせられたい。
エコビジネスと産業界の再生
ファッションかムーブメントか(大垣女子短期大学 教授 森 孝之)
1968年9月、アメリカヘ出張した私はある大学に立ち寄り、そのキャンパスで奇妙な女性を見た。彼女はジーンズの上にだぶだぶのスウェットシャツを着ていた。
当時は、ブラウスやワイシャツは下着とされ、女性が市街地でスラックスをはくことをタブー視していた頃である。ジーンズは男性用労働者と考えられていたし、スエット(汗)シャツにいたってはアメリカンフットボールなどの選手が用いる汗を吸わせる男性用肌着以外の何物でもなかった。だから私は、仰天すると同時に何かただならぬ予感をえた。
当時、流行の発信源はパリと考えられていたが、この一件をきっかけにして私はアメリカでの市場調査を増やし、やがて業界紙に「偉大なるファッションの爆発」と見出しをつけた原稿を送ることになる。
今にして思えば、ファッションという言葉に代えて“ムーブメント(運動)”という言葉を選んでおくべきであった。そうしておれば、わが国の産業界を、少なくとも繊維業界をここまで苦境に陥れずに済んでいたかもしれない。
つまり、産業界が技術や設備などの改善や色柄や形などを主としたデザインの工夫に留まらず、むしろスピリチュアル(精神的)な要因の追求こそ肝心だということをもっと明快に述ベ、モノ指向からヒト指向への転換を提言しておくべきであった。
現システムの終焉
1995年秋、ある企業団体がサンフランシスコのニッコーホテルで総会を開いたが、参集した多数の企業経営者の前でアメリカ産業界の賢人がスピーチを始めた。
「モンサントは、持続性のある企業に作りかえるよりも、つぶした方が楽なぐらいです。それだけに大きく変化しなければなりません」。業界のトップクラスの化成品企業モンサント社の最高経営責任者(CEO)ロバート・シャピロ会長である。
「モンサントは94年の歴史をもち、何十万人もの従業員を抱えています。その過去を振り返りますと、誇りにできることばかりではありません。私たちの歴 史にはベトナム戦争で大量に使用した枯れ葉剤やダイオキシンといった言葉がでてきます。それは、悪い人であったからではなく、知らなかったからです。
新しいやり方を発見するには、必ず過去をよく理解し、そこから学ばなければなりません。その上でわれわれは未来に立ち向かおうとしております。
私は、過去は“マシーンモデル”と呼ぶべきシステムの上に成り立っていたと考えています。今世紀の最初の70年間はこのシステムが実にうまく機能しました。その基本的な考え方は、ばらつきのないモノやサービスを提供することにありました。
だから、人事採用の面接でも「あなたはこの企業でどのような貢献ができますか」といったようなことは問わず、「これがあなたの仕事です」といって仕事をあてがい、仕事にあわせて自己改革するように迫りました。
マシーンモデルにはピラミッド型組織がつきものです。コントロールが不可欠だからです。もちろん、コントロールをする立場の人はよく似ていました。変化が望ましくない時は同じ考え方の持ち主を配置しなければいけません。違った考え方の持ち主は危険な人と見られました。
他方、労働者は体が売り物です。企業はその体を利用してきました。労働者にとって代わる機械ができるまでは人間を使わざるをえなかったからです。
また、マシーンモデルが全盛であった時代は、各国は国境を境にして自国の市場を保護していました。グローバルな競争から自国の産業界を護るためです。
第二次世界大戦はその最盛期に勃発しており、アメリカの競争力は世界一でした。だが、このやり方は安いエネルギーや資源がふんだんにあり、すきなように浪費できた時代のやり方であり、持続性に欠けていました。
要するに、アメリカは第二次世界大戦をマシーンモデルで戦い、勝利をえたわけですが、きれいな空気や水が高くつき、エネルギーが高騰した今日の経済戦争ではそうはいかない、これに代わる新しいモデルを積極的に考えださなければ経済戦争には勝てないのです。」
シャピロ会長はマシーンモデルが第二次世界大戦を勝利に結び付けたといった。事実、アメリカの戦闘機や戦車はすべてプロトタイプ(原型)を元にして互換性がきく部品を用いて大量生産した複製品(コピー)であった。
かたや日本の零戦やイ号潜水艦などは機械を駆使したとはいえ一機一艦づつ作りだしており、互換性に欠けていた。
いわば前者は互換性のきくコピーで戦い、後者は生産性だけでなく融通性にも欠けるオリジナルを用いて消耗戦を戦ったわけである。
しかし、シャピロ会長は、マシーンモデルはもはや時代遅れになっていると断言した。
ポリウレタン弾性糸を使ったウール・ストレッチ織物について
カネボウ繊維株式会社 羊毛商品開発部長 大津 完
まえがき
今や、ポリウレタン弾性糸を使ったストレッチ素材は、婦人服地を中心とするアウター向けになくてはならない素材として定着した感がある。
これは、伸縮の機能による着用時の快適性だけでなく、素材の持つ感性が商品のシルエットやスタイリング提案に欠かせない要素として消費者に認知された結果と思われる。
また、アウター向けストレッチ素材が登場した当初の品質問題(主に収縮)が、業界の努力と慣れにより減少し、安定化してきたことも一因であろう。
本稿では、ポリウレタン弾性糸を使ったウール・ストレッチ織物を製造する際に、注意すべきポイントについて、当社の事例をもとに紹介する。
羊毛の湿潤発熱性に学ぶ機能性繊維への展開
日本繊維機械学会・産業資材研究会委員長 元・京都工芸繊維大学 工博 松本 喜代一
はじめに
繊維産業は、常に時代の変遷とともに、絶え間なく新しい目標に向かって進展しており、最近では世界各国でも重要産業の一つであると認識を新たにされている。
わが国の繊維産業は、地域経済発展に大きい影響を持つ巨大重要産業であり、技術的にはハイテク産業の基本的役割を占めている基幹産業である。そして、今日の繊維産業は、今までのような単なる繊維製品供給産業に留まらず、豊かな生活文化提供産業へと大きく発展し変貌しようとしている。
最近の市場には、繊維を構成する化学構造と組成の特異な性質を活用したり、その物理的な形状を変化させたりすることで、高性能化や高機能化を図ったハイテク繊維が数多く出現している。
特に、通常の繊維性質とは全く異なる特異性をもった機能性繊維の開発研究は、今まで繊維が利用されていなかった広範囲の産業分野における新規な問題点や要求を的確に把握して、ますます加速的に進展してきている。
わが国では、高度技術革新によってつくられた高性能や高機能性を持った繊維を一括して、ハイテク繊維(High Technological Fibers)といっている。
そのなかには、細さ、強さ、硬さ、耐熱性などの極限に挑戦した高性能性繊維をスーパー繊維(Super Fibers)、高性能性を追及して、さらに感性対応性を加えた繊維を新合繊(Sin-Gohsen)と称している。
新合繊には厳密な定義はなく、商業用語であるが、一般にポリエステル繊維を主体として原料ポリマーから製糸、製布、染色、仕上げ加工に至る各段階で高度な技術を駆使して改質した新しい質感をもっている感性対応型の改質合成繊維をいう。
高性能・高機能性繊維の分類および主要性能・機能例と応用例
機能区分 | 性能・機能例 |
力 学 的 形態学的 高性能物性 |
高強度/高タフネス/高モジュラス/高弾性/耐摩耗性/ 低摩耗性/低摩擦性/耐疲労性/軽量/超極細/表面超 加工性 |
電気・電子 | 電気絶縁性/誘電性/導電性/圧電性/焦電性/超電導性/ 制電性/情報記憶性 |
光 | 耐光性/耐候性/光吸収性/光屈折性/光干渉性/光透過性/ 有機半導体/フォトクロミズム/情報記憶性/光伝達性/光選 択透過性/光電交換性/耐放射線性/放射線吸収性/放射線反 射性/電磁波遮断性 |
音響・振動 | 吸音性/遮音性/制振性/防振性/吸震性 |
磁気 | 誘磁性/耐磁性/防磁性/遮磁性/情報記憶性 |
熱 | 断熱性/伝熱性/感熱性/焦電性/耐熱性/熱電性/蓄熱性/ 耐低温性/難燃性/防炎性/サーモクロミズム |
分離・吸着 | イオン交換性/キレート化/吸着・脱着性/生体適合性/選択分 分離性/染色性/吸塵性/防塵性/通気性/空中窒素固定性能保持性 |
親水・親油 | 高吸水性/はっ水性/吸油性/防水性/吸湿性/透湿性 |
接 着 | 瞬間接着/熱接着性/感圧接着性/接着性/コンクリート付着性 |
生体関連 | 生体内崩解性/無害・殺菌性/生体吸収性/生体反応性/生体 適合性/防菌・防かび性/微生物分解性/バイオテクノロジー 適合性/肌添性/快適性/健康性 |
機能区分 | 性能・機能例 |
力 学 的 形態学的 高性能物性 |
航空・宇宙分野/省エネルギー分野/高性能物性繊維全般 |
電気・電子 | 絶縁性材料/誘電性材料/電線絶縁/導電性繊維/面状発熱体 /高分子圧電体/情報処理/省エネルギー分野 |
光 | 光ファイバー/光屈折/有機光導電体/X線吸収・散乱材/ 放射線防護繊維/情報処理/省エネルギー分野/玉虫色発色性 繊維/超ミクロレーター繊維/多重偏平繊維/光感知発色性繊維 |
音響・振動 | 吸音材/防音材/制振材/防振材 |
磁 気 | 磁気フィラメント/防磁シート/情報処理/航空・宇宙分野 |
熱 | 断熱材/保温材/保冷材/プラ・サーミスタ/焦電体/サー モクロミック材/省エネルギー分野/温感変色性繊維/湿潤発熱 性繊維 |
分離・吸着 | イオン交換性繊維/キレート性繊維/吸着性繊維/淡水化/廃 水処理/ウラン吸着性繊維/医療用(人工腎臓・人工肺・人工 血管・手術糸)/金属イオンの識別/高分子吸着剤/高分子凝集 剤/省エネルギー分野 |
親水・親油 | 高吸水性繊維/吸油性繊維/はっ水布/防水布/高分子土壌改 良剤 |
接 着 | 接着全般/ホットメルト接着/コンクリート補強材 |
生体関連 | 老人衣料/ベビー衣料/スポーツ着/手術着/医療用/生体模 倣技術/バイオインダストリー |