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テキスタイル&ファッション誌(メールマガジン)バックナンバー
テキスタイル&ファッション Vol.13 (1996)
Vol.13/No.1~12
1999年4月号~1997年3月号
1-ファッション報告 | No. | 月 | 頁 |
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'97春夏FDCテキスタイルコレクション開催 | 1 | 4 | 1 |
'97SPRING&SUMMER FDCテキスタイルトレンド提案(要旨) | 1 | 4 | 3 |
若手デザイナーによる'96秋冬FDCコレクション -4ブランド作品ミニショーで発表- |
1 | 4 | 7 |
どこかおかしい日本のグローバル | 2 | 5 | 31 |
グローバル・ルールに基づいた流通は生活者に役立つ売り場づくりから | 3 | 6 | 76 |
「感性工学」のデザイン・マネジメントにおける新しい役割 -繊維産業再生の強力な武器としての「感性知識優立性」- |
|||
コレクションの流れに見る97年秋冬テキスタイルトレンド | 5 | 8 | 224 |
21世紀への二つの試み-過去から何を学ぶのか- | 6 | 9 | 290 |
'97/'98秋冬FDCテキスタイルコレクション開催 | 7 | 10 | 353 |
'97/'98AUTUMN&WINTER FDCテキスタイルトレンド提案(要旨) | 7 | 10 | 355 |
アパレル業界におけるQR導入に関する現状と課題 | 8 | 11 | 431 |
5年目の成熟を乗り越えてさらに進もう | 9 | 12 | 495 |
97年ファッションビジネスを展望する | 10 | 1 | 566 |
ジャパン・テキスタイルコンベンション'96 | 11 | 2 | 621 |
ファッンョンシンポジウム開催 | |||
マーケットが求めるハイタッチ志向とは | 12 | 3 | 684 |
繊維産業革新基盤整備事業(TIIP)の概要 | 12 | 3 | 687 |
2-研究報告 | No. | 月 | 頁 |
---|---|---|---|
経通し省力化システムの開発(1) | 1 | 4 | 9 |
エアジェット精紡磯によるウールと化合繊との多層複合化技術 | 2 | 5 | 34 |
羊毛・合成繊維複合織物の熱伸縮挙動の解析 | 3 | 6 | 80 |
毛織物の酵素加工技術に期する研究 -特殊架橋剤応用はっ水性付与技術の研究- |
4 | 7 | 145 |
毛織物のセットメカニズムの解析 -カールしやすい毛織物のセットと形態安定性- |
5 | 8 | 229 |
メロウエイジ(円熟世代)商品に関する調査研究 -豊かな高齢社会に向けた商品開発- |
6 | 9 | 296 |
糸構造変化による形態安定ウール・ニットの開発 | 6 | 9 | 304 |
スタイル・デザイン・イメージによるアパレル素材の分類 | 7 | 10 | 359 |
工業製品の安全性・信頼性向上に関する調査研究 | 8 | 11 | 437 |
ウールケラチンの抽出技術 | 9 | 12 | 500 |
経通し省力化システムの開発(2) | 10 | 1 | 568 |
色柄欠点検査技術に関する研究 | 11 | 2 | 633 |
導電性物質による毛織物の帯電防止技術 | 12 | 3 | 691 |
樹脂加工毛織物のFTIR-ART分析 | 12 | 3 | 701 |
3-技術解説 | No. | 月 | 頁 |
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羊毛の還元漂白 | 2 | 5 | 47 |
イタリアのデザイン | 3 | 6 | 101 |
フィラメント織物の製織技術 | 4 | 7 | 167 |
繊維素材の抗菌・防臭加工について | 5 | 8 | 239 |
スーパー繊維 | 7 | 10 | 368 |
糸トルクとカーリングについて | 9 | 12 | 511 |
生分解性繊維の現状 | 10 | 1 | 584 |
4-技術ニュース | No. | 月 | 頁 |
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素材の複合化に対応した縫製技術について | 8 | 11 | 446 |
フィラメント織物の製織及び設計技術 | 10 | 1 | 577 |
酵素の性質とその応用「私たちの暮らしと酵素」 | 11 | 2 | 645 |
8-資料 | No. | 月 | 頁 |
---|---|---|---|
依頼試験、技術指導・相談の動向(1) | 2 | 5 | 67 |
依頼試験、技術指導・相談の動向(2) | 3 | 6 | 127 |
染色仕上関係海外文献情報(19) | 8 | 11 | 486 |
9-技術情報 | No. | 月 | 頁 |
---|---|---|---|
依頼試験、技術指導・相談の動向(1) | 2 | 5 | 67 |
依頼試験、技術指導・相談の動向(2) | 3 | 6 | 127 |
染色仕上関係海外文献情報(19) | 8 | 11 | 486 |
10-その他(新設機器紹介) | No. | 月 | 頁 |
---|---|---|---|
新設機械紹介 | 1 | 4 | 16 |
どこかおかしい日本のグローバル
男子専科編集長 福永 成明
いまや旧聞になりつつある「グローバル」という言葉。それに変わって最近は、「国際服」が話題になってい る。いわば機能の多国籍化ともいえる動きで、日本発のブランドをグローバルな機能を使って、世界ブランドに仕立てあげよう、というのがそれである。だが、 あらためて考えてみると、日本のグローバル化はどこか変である…。リード(「要旨」など)
主な項目
・アパレル貿易収支は65倍の入超
・アジアに集中する輸入先
・イタリアブームの特異性
・いつになったら“ワールドカップ”に出られるのか
グローバル・ルールに基づいた流通は、生活者に役立つ売り場づくりから
山村貴敬研究室 主宰 山村 貴敬
本誌前号の福永成明氏の論文「日本のグローバル」に、日本のファッションビジネス独自の“ローカル・ルール”が指摘されていた。委託・返品、期近仕入、手形決済などの日本ならではのルールに染まった企業にとって、世界選手権に堪えられるワザと体質をつくりあげなければならないと指摘されていた。そこで本稿では、今後の日本ファッションビジネスの最大の障壁として立ちふさがっているこの問題について、百貨店を一例にしながら、世界選手権にエントリーできるには、どのように流通を捉えるべきか、メーカー・卸の側から考えてみることにする。
先ず、最初に断わっておくが、ここでは、過去何十年も言われ続けてきた返品・委託・期近仕入の善悪を総論として論じるつもりはない。小売業の改革については別の機会に譲るとして、ここでは、ファッション系小売業の現状の取引形態を踏まえた上で、メーカ一・卸はどう対処していくべきか、どうすれば世界選手権にエントリーできるかを考えてみたい。
小売業との取引を検討するにあたり、前述のローカル・ルールの顕著な例として、百貨店を取り上げてみよう。一般に、現状の百貨店の売場は、ハコ、コーナー、平場に大別でき、ハコについては売仕、コーナーや平場については委託(建前の買取を含む)、平場は委託または買取が多い。基本的に、これらの取引形態は、設定予算や掛け率、派遣販売員の有無、及び両者の力関係によって決定されるが、これらの取引条件以前の問題として、それぞれの売場が、消費者にとってどういう意味をもっているか、消費者はどこに価値を感じてその売場を訪れるのか、そこから検討する必要がある。
主な項目
・消費者にとって、ハコ、コーナー、平場の意味を知る
・ハコは、専門店としてオペレーションする
・平場は、本来セレクトショップである
・消費者不在の業界情報からの決別
・消費者は、産業に先んじてグローバル化する
・相互依存型から、強者の競争構造へ
『感性工学』のデザイン・マネージメントにおける新しい役割
繊維産業再生の強力な武器としての「感性知識優位性」
感性工学研究所 所長(宝塚造形芸術大学教授) 菅原 正博
信州大学の繊維学部に感性工学科が95年に誕生している。そういえば、わが国では、同大学は繊維工学部が実 体として残っている数少ない大学である。繊維工学は、繊維材料学と繊維機械工学とに大きく分けられるが、なぜ、信州大学は、繊維学部のなかに、感性工学を 新たに付け加えたのだろうか。同大学の清水義雄教授によれば「感性工学科の目標とするのは、人々の心の交流を中心とした幸福感の達成である。そのドライビ ングフォースは、従来の消費、効率、合理性に関する欲求から、幸福感、美的創造性、表現欲求等である」。同大の感性工学科は「感性製品工学」の教育・研究 機関として発足した、と述べている。では、この「感性製品工学」とは、どのような内容のものなのだろうか。この点に関して、同教授の意見を紹介すると次の ようである。
同教授は、現在の大量生産、多量消費の経済論の行き詰まりからの脱出の一つの解決策として、「感性製品工学」が生まれたと主張している。この点に関する 同教授の考え方を紹介しておこう。“消費者はこのような状況に気づき、逃れたいと願い始めた。人々は、自分の使う製品の設計・創作に自身で関与したいと望 み、表現欲求や創造欲求を満たしたいと思い始めている。それにより、製品の対象が大衆から個に変化しており、製品が特定な生活者を目的とした個別生産方式 に移行してきている。製品に要求される特性も狭義の合理性・効率性に代わって環境保全、豊かさ、美しさなどに重点を置きはじめている。製品は、表現や創造 性の手段としてまた、触れ合い、話し合い、情報交換の仲立ちとなる「もの」として考えられてきている。このような「もの」を「感性製品」と呼び、「感性製 品」を製造するための感性工学を「感性製品工学」という。”
主な項目
・信州大学繊維学部の「感性工学科」
・宝塚造形芸術大学の「感性工学研究所」
・感性工学の英語版=Taste Enginering
・ファッション&アートにおける感性工学的アプローチ
・イタリア繊維産地の「感性知識優位性」
・感性工学が支援するプロフェショナルな人材
コレクションの流れに見る
97年秋冬テキスタイルトレンド
ファッションジャーナリスト 藤岡 篤子
コレクションを見続けていて、最近とくに強く感じるのは、一部のクリエイターの「センスとスピード感」は、半年後のトレンドと言うより、一年先の流れを完壁に予見していると言う事だ。
コレクションを開催するブランドの中にはクリエイター型とマーケット・フォロー型がある。マーケット型は、デザイナー個人の主張や個性より、市場でいかに多くの人に着てもらえるか、「着装」と言う意味での影響力を重視するタイプだ。「マックス・マーラー」や「レ・コパン」などプロジェクトチームで創るブランドに、この傾向はいっそう強い。
クリエイター型は、デザイナー個人の個性とメッセージを最優先する。ベーシックなリアルクローズ全盛の時代には、「リアリティ」の退屈さをわらい、アンチテーゼとして「ファンタジー」の魅力をこことばかり、ぶつけてみたりする。その時代に竿ささぬ異端児ぶりが、単なるアンチの姿勢に終わらず、全体の流れを変化させるほど影響力を発揮するところが、クリエイター(創造者)たるところである。
川久保玲やジャンニ・ヴェルサーチが、このところ、ファッショントレンドの刺激剤として役割を果たしている。
プラダやグッチは、リアリティに富む服を求める消費者の心理を巧みに捕えながら、女性が本能的に欲しがる「ちょっとした新しさ」「スノビズム」を散りばめ、まさに1990年代の後半にふさわしい時代感覚を体現している。
1996年の現在、まだまだファッションの発信都市としてミラノの存在は大きい。次に「プラダ」と「グッチ」が何を提案してくるか。消費者のみならず、ファッション産業にも待たれている。
主な素材
コード素材、フラノ、トラッドチェック、
オブリーク&マルチストライプ、レース、ベルベット、ツウィード、
チャンキーニット&ジャージー
ポニースキン&ロングヘア、フローラルモチーフ、70年代風シオメトリック
21世紀への二つの試み
過去から何を学ぶのか
繊研新聞社 山下 征彦
変化の激しい昨今、1カ月後の為替や株式相場を予測することは難しい。ましてや1年先のこととなるとそれこそ「鬼が笑う」。「21世紀を展望する」となると、これは至難の技であり、いいかげんな内容になりかねない。しかし、21世紀が後わずか5年でやってくるのも事実であり、過去の経験則から一定の方向を見いだすことは不可能ではない。21世紀も今日の延長である。「事業の目的について正しい定義はただ一つしかない。それは顧客の創造である」(P・F・ドラッカー)という一点を見失わなければ、21世紀のファッション業界も粛々と発展することだろう。過去を総括し、そこからファッション産業の発展のキーワードを探ってみた。なお限られた紙面のため、各項目とも二つの最重点項目にポイントに紋った。
アパレル業界におけるQR導入に関する現状と課題
上武大学商学部 教授 土田 貞夫
QRについては既に早くから業界の生産管理の1つの手法として紹介されてきたものであるが、QRのコンセプトも近年大きく変り、単に生産管理の手法としてではなく、幅ひろく企業活動全般に関わる戦略的発想を志向するものとしてとらえられてきている。したがって、QRの意味を正しく理解していただくために、改めて次のようにその意味を明確に示しておきたい。
QRとはQuick Responseの意味であるが、単に「商品を速く納入する技術」ではなく、その概念は「生産・流通関係の取引当事者が協力して、消費者に対して適切な商品を、適切な場所に、適時に、適量を、適正な価格で提供することを目指して、最新の情報処理技術を活用し、生産,流通期間の短縮、在庫の削減、見切・返品ロスの減少など生産・流通の各段階での合理化を実現し、その成果を生産者・流通関係者・消費者の間でわけ合おうとする」ものである。 |
そうしたQRの導入について、昨年、日本アパレル産業協会によって業界の実態調査が実施された。ここでは、その調査結果を参考として、アパレル業界におけるQRの導入に関する現状とその背景・課題について概要を述べたい。
5年目の成熟を乗り越えてさらに進もう
現代構造研究所 所長 三島 彰
例年私は、ジャパン・テキスタイル・コンテストの審査に先立って、応募作品を一覧することにしている。見るでもなく眼で陳列を撫でていると、全体の基調が浮かび上がり、審査の折の基本的な心構えが生まれてくる。
昨年は一目で、応募が複合のオンパレードであることが判別された。複合の工夫は、外観を一瞥しただけでは分からない。そこで各審査員に、書類を持った担当を付けていただいた。その教訓を受けて今回は、作品ひとつひとつに応募カードが張り付けられ、分かりやすくなった。
今回の下見では、全体的に完成度が高くなっていることが歴然と見て取れた。このことは審査に時間が掛かり、入賞入選が紙一重の差で決まることになる。頭が痛いと思った。はたしてそういう辛い審査になったのだが、このような完成度の高さは、本コンテストが5回を経て、いよいよ成熱期に入ったことを示していたわけである。ご同慶の至りと申し上げたい。
今回の応募では、本年6月に行われた東京テキスタイルコンテストが影響して、応募数が減るのではないかという危惧が無きにしもあらずだったが、結果は昨年到達した応募4百台の大台を維持して、当コンテストの健在を立証した。私は東京コンテストでも審査委員長を仰せつかったのだが、その折には、これといった固有の産地基礎を持たない東京で、どれだけの応募が確保されるかという心配があった。しかし、東京ファッション協会加盟各社の尽力で、3百の大台をキープすることができたし、作品の質も高かった。どうやら日本の産地と作家は、年間に2、3のコンテストを受け入れるほどの厚みのある創造性を保有しているようであり、これまたご同慶である。
97年ファッションビジネスを展望する
小売業の復活に期待 新・大型SC、新宿高島屋型(複合型SC)に注目
繊研新聞社 編集局デスク 山崎 光弘
穏やかな景気回復が進む中、日本のファッションビジネスも97年を迎えた。過ぎた1年は全国百貨店の売上高がようやく通年で前年を上回り、長かった売上低迷に歯止めがかかった。しかし、食料品主体の量販、チェーン店は軒並み苦戦し、とりわけ衣料品の苦戦が最後まで続いた。「衣料品並に食料品もファッションにならねば業界の次の発展はない」(小林敏峯・マイカル会長)との声もあるが、今後の進路を決めかねている状態が続いている。そこで今年は、アパレルメーカーに決定的な影響をもつ小売業の動向から97年のファッションビジネスを展望してみ
ジャパン・テキスタイル・コンベンション'96
ファッション・シンポジウム開催(抜粋)
特別ゲスト/デザイナー エマニュエル・ウンガロ
ゲスト/ファッションジャーナリスト 藤岡 篤子
ホスト/(株)インファンス プロデューサー 山室 一幸
平成8年11月26日、「ジャパン・テキスタイル・コンベション'96」の一環として、一宮女子短期大学において“ファッション・シンポジウム”が開催された。
このファッション・シンポジウムは、ジャパン・テキスタイル・コンベンションのために来日した、エマニュエル・ウンガロ氏を中心に、ファッション・ジヤーナリストの藤岡篤子さん、(株)インファス、プロデューサー山室一幸氏を迎えて行われ、世界の最新ファッション情報を始め、ファッションショー作品のアイデアやイメージ、テキスタイルとアパレルが果たす役割などについて、受講者も交えての活発な論講が行われた。
マーケットが求めるハイタッチ志向とは
株式会社TCカンパニー代表 ファッションコーディネーター 十三 千鶴
いつの時代にも生活者のライフスタイルが新たな価値観を生み、生活者の興味が物の基準を変えていきます。いわゆる社会や生活を支配する倫理観が、時代の気分を変えていくといえるでしょう。最近の時代背景は、物質的な豊かさを大切にしたい、人生の豊かさの意味を見出すことが唯一のテーマとなっていますが、今や消費の主役、いわゆるトレンドセッターは、“グランビー”と呼ばれる熟年達。キーワードはサクセスエイジング、いい年のとり方、ベビーブーマーの高齢化がもたらすより個性的で新たな動きが、いよいよファッションマーケティングに大きな影響をもたらす時代にはいったといえましょう。
最近、買い物が楽しくないという消費者が増えるにつれ、これではいけないと、顧客の情緒をとらえることに主眼をおいた店づくりが注目されています。昨年12月にニューヨークとマイアミのリゾート地、オーランドを始めボカラトン、キーウェストをまわってきましたが、非日常はエンタテーメントそのものだと思いました。また、今アメリカでも小売業の視点となっているのは、顧客の情緒をいかにとらえることが出来るかといった所に主眼をおいた、エモーショナルリテーリングが重要となっているようです。
たとえば、よく対比されるのががん具で有名なトイザラスとFAOシュワルツ。シュワルツはエンタテーメントリテール(娯楽的小売業)をめざし、店の主役は雰囲気づくりにあると非日常の楽しさを演出、親子で楽しめる楽しい店ずくりをめざしています。
未来学者、アルビントフラー氏は、今後注目される3つのキーワードをあげています。
1 エンターテーメント(楽しみ)
2 インフォメーション(情報)インターネットなどによる個人情報及び、インターナショナルな情報を踏まえ、ビジネスをより精度高く、効率的、効果的に活用するか。
3 インディビジュアル 顧客を個客としてとらえたニーズ、ウォンツに合ったものをいかに供給するか。
こうした中、小売業変容の背景として強調されているのが
1 高齢化する社会
3 個人化する市場(多様化)
4 買い物に冷めた消費者
の3点ですが消費者は、明らかにファッション消費に対してクールになっています。
経通し省力化システムの開発(1)
愛知県尾張繊維技術センター 加藤 淳二、安藤 正好
織布準備工程のなかで特に人手と時間を要する綜絖通し作業をメカトロ化する研究に取り組み、この作業を省力化するシステムを開発した。
経通し作業者の動作を分析し、それぞれの作業を機械に代行させて省力化を図った。作業の各要素(綜絖を一本分離、綜絖を把持して移動、経糸を綾から分離、経糸を運ぶ、綜絖の目の位置決め、綜絖の目に糸を通す)について、それぞれを代行する要素技術を開発し、それを統合して連動制御するシステムを試作した。
愛知県の尾州地域は日本一の毛織物産地である。この産地は古くから幾千に及ぶ中小企業の活躍で支えられてきている。
尾州の原動力ともいえる中小毛織物企業では、いま労働者の高齢化や熟練労働者の不足が深刻化している。加えて生産の少量短納期化がいっそう進み、業界は、より効率の高い生産の必要から、手間や時間のかかる作業の合理化、省力化を強く求めている。
毛織物の準備行程の中に「綜絖通し」作業があり、手間と時間のかかる作業の代表となっている。数千本にも及ぶ経糸を、一本ずつ綜絖の目に通す大変な作業であるが、織物の製造には不可避である。
しかし単純作業の繰り返しなので、機械やロボットの得意な作業であるともいえる。
そこで、メカトロ技術を応用してこの作業の省力化に取り組んだ。なお、本研究では、すでに各企業に導入されている経通しスタンドや市販の汎用部品を最大限利用し、簡素で安価な機械を提案する方向で取り組んだ。
エアジェット精紡機によるウールと化合繊との多層複合化技術
愛知県尾張繊維技術センター 服部 安紀、村井 美保
昨年度は、エアジェット精紡機を使用し、コースなウール原料とファインなウール原料とを用いた秋冬向けの2層構造糸を種々検討した。
本年度は、春夏向き素材としてウールと化合繊との多層複合化技術について検討した。
開発の狙いは、春夏素材として耐洗濯性、しわ回復性、快適性等に優れた織物を得ることとし、ウール、レーヨン、ポリエステル原料を用い芯鞘の2層構造または3層構造糸を紡績した。その結果次のような結論を得た。
1)同一素材であれば片側錘単独での細番手紡績限界と同一番手の糸がツイン精紡(2本引揃え精紡)できる。異素材の場合、弱い方の素材が2本引揃えられる際に切断することから、弱い方の素材がツイン精紡できる限界に左右される。
2)フィラメント糸をコアで挿入する場合、フィラメント糸に掛けるテンションワッシャの荷重と張力との関係は、正の比例関係にある。従って、張力はテンションワッシャの荷重で制御できる。
また、フィラメント糸に張力を掛ける程、鞘による被覆率は向上する。
3)鞘ウール/芯レーヨン・ポリノジック、鞘ウール/芯ポリエステルの2層構造糸1/40、これにポリエステルフィラメント糸をコアに挿入した3層構造糸1/40は梳毛クレープ糸1/30との比較から十分に経糸として使用可能と判断した。
4)鞘ウール/芯ポリエステル+レーヨン・ポリノジックにポリエステルフィラメントを挿入した3層構造糸1/30は、レピア織機160rpm回転で経糸として問題なく製織できた。
5)この糸を用いた織物は、春夏向き素材として、耐洗濯性、しわ回復性、透湿性に優れた性能を有している。
6)また、風合いはKESの夏向き紳士服地の平均にフクラミ、コシは劣るが、シャリ、ハリ、T.H.V.は近似したものとなった。
これまで、天然繊維の機能性や風合い等を向上するため、化学加工による改良が多く行われてきた。しかし、最近では繊維素材そのものが持つ本来の性質を自然に生かすことが見直され、素材の複合や撚加工等の物理的方法による素材開発が注目されている。
春夏向け素材としてのイージーケア性、快適性等の性能付与については、親水性繊維の湿気吸収と疎水性繊維の湿気移動・拡散能力を活用した多層構造糸(東洋紡(株)アルザスPRH50)が開発されている。
本研究では、そうした構造の糸を参考にして、エアジェット精紡機の特徴でもあるハイドラフト(20~250倍)ができる点を利用し、ウール粗糸や化合繊粗糸、合繊フィラメントを用い、各種の多層複合構造糸の紡績及び製布と評価に関する研究を行った結果について報告する。
羊毛・合成繊維複合織物の熱伸縮挙動の解析
愛知県尾張繊維技術センター 掘田 好幸、大津 吉秋
精紡交撚糸を主体とした羊毛・合成繊維複合織物を用いて、仕上加工条件及び縫製プレス条件と織物の伸縮挙動との関係を考察した。
得られた主な結果は次のとおりである。
(1)織物の伸縮率は、各仕上工程で生じる伸縮率の加算でなく、ハイグラルエキスパンションが煮絨工程で、緩和収縮が乾燥工程の熱処理で決まることが分かった。
(2)縫製プレス加工での織物寸法安定性の良否は、プリーツ性評価試験法での糸開角度の大小でも評価できることが分かった。
(3)公定水分率の大きな羊毛やナイロン素材は、プレス加工の際に適正なプレス方法を用いないと織物のプレス収縮が大きくなる。
(4)羊毛・合成繊維複合織物は、ロックプレス処理の前にオープンスチーム処理、ブレス鏝を開けた後にオープンバキュームを併用するプレス方法で寸法安定性が優れていた。
近年、羊毛繊維とポリエステルやナイロンなどのフィラメントとを精紡交撚した糸を用いた織物が、春夏用スーツ地として、市場に多く出回っている。この織物の特徴は、軽量でシャリ感がある反面、従来のポリエステル・ウール混紡織物に比べると縫製プレス段階で寸法安定が悪いことである。そこで本研究では、同じ規格で試織した種々の精紡交撚糸織物を使い、染色仕上工程及び縫製プレス段階での熱処理条件を変えたときの織物伸縮挙動を測定して、これらの相互の関連を解析し、織物の寸法安定性を改善する方法について検討を行った。
毛織物の酵素加工技術に関する研究
-特殊架橋剤応用はっ水性付与技術の研究-
愛知県尾張繊維技術センター 北野 道雄、平石 直子
繊維加工への酵素利用については、最近、急速に広まりつつある。なかでも、セルロース系繊維への応用例が多くみられる。この一例として、綿の減量加工や改質による風合いの改良、精製セルロースの毛羽除去や風合い改良等があげられる。一方、羊毛への酵素利用については、徐々に増加しているものの、課題も多く存在するため、いまだセルロース系繊維にまで至っていない。当センターでは昨年度の研究に引き続いて、羊毛を酵素処理することによりはっ水性能を付与する加工法について研究を行った。今年度は新たにはっ水性能をより向上するため、転移酵素や合成酵素によるはっ水加工の後、特殊架橋剤と疎水性の天然高分子を併用した加工を施すことにより、はっ水性能の向上を目指した研究を行った。この結果、より高いはっ水性と防縮性(洗濯収縮率)の向上、ハイグラルエキスパンションの低減化や防しわ性等の機能を付与することが可能であることが明らかになった。
この他、改質羊毛を分子レベルで調べた結果、酵素や天然高分子による羊毛構造中の架橋反応を確認した。
酵素による羊毛の改質加工は、通常、蛋白質分解酵素であるプロテアーゼを使用して、羊毛表面のスケール部分に作用させる加工や内部の蛋白質主鎖や側鎖を一部分解する加工法がとられている。そこで、羊毛の改質加工への酵素利用範囲を拡大する目的で、酵素による羊毛のはっ水加工試験を試みた結果、酵素によるはっ水性の付与が確認できた。しかし、現在、一般に行われている薬剤利用によるはっ水加工性能と比較して、はっ水度が不足した。このため、酵素によるはっ水加工と疎水性の強い天然高分子(はっ水性蛋白質=トウモロコシ蛋白質(カゼイン))を架橋剤により羊毛に付与加工する研究を行ったのでこの研究結果について報告する。
毛織物のセットメカニズムの解析
-カールしやすい毛織物のセットと形態安定性-
愛知県尾張繊維技術センター 浅井 弘義
経双糸、緯単糸使いの毛織物はカールしやすく、仕上加工を行ってもカールが発生し、製品になってからも形態安定性が問題となる。
そこで、毛織物の実用仕上工程におけるセットと形態安定性を図るため、仕上加工工程の加工条件を検討し、セットと形態安定性及び物性について検討した。
ア.毛織物のセットは処理温度、pHに支配される。蒸熱セットでは織物の水分状態がセット効果に影響を与える。織物物性はセット方法、条件に大きく影響される。
イ.セット率とHEは比例開係にあり、染色にアンチセット剤を用いて、HEを抑制することにより寸法安定性が向上する。
ウ.カールの形態は湿度に影響され、セットを行わない織物は低湿度で安定し、セットを行った織物は高湿度で安定する。
オ.樹脂加工及び疎水加工はカールを低減する方法として有効である。
毛織物の仕上加工は織物の寸法を安定させるため、煮絨、釜蒸絨等のセットが行われ、仕上工程の中心として位置づけられている。羊毛のセット機構はジサルファイド結合の再配列によることが知られており、熱水、蒸熱及びチオグリコール酸等の還元剤処理により、毛織物をより安定した形態にすることができる。しかし、最近の毛織物は消費者の嗜好の多様化により、複合化や強撚糸使い及び新しい糸構造の素材が多用されるなど複雑なものが多くなり、またライトウエイト化が顕著である。これにともない仕上工程も複雑になり、いろいろな問題が発生してきている。特に製品になってからの形態の安定に関するものが多く、これらの問題は仕上加工との関係が強く、中でもセットの処理条件が重要な要素と言われている。
そこで、毛織物の実用仕上工程における各工程の加工条件を検討し、形態安定性及び物性への影響について行った。
特にここでは経双糸、緯単糸使いのカールしやすい毛織物について行い、セット条件及び染色条件等とカールとの関係について解析し、カールの発生を少なくする方法について検討した。
メロウエイジ(円熟世代)商品に関する調査研究
豊かな高齢社会に向けた商品開発
愛知県尾張繊維技術センター 本間 重満
高齢社会は急ピッチで進んでおり、総人口に占める65歳以上の人口比率は、21世紀に20%を超えると予想 されている。こうした中、従来の高齢者像とは違う「年齢を意識することなく、元気でいきいきと積極的に快適な生活を過ごす。」という新しい価値観・意識を持った人達が多く出現してくると考えられており、こうした円熟した世代(メロウエイジ)に向けた商品開発が求められるようになってきた。
このため、愛知県商工部では平成7年度、商工部6試験研究機関の職員を中心に「メロウエイジ(円熟世代)商品に関する調査研究会」を設置、ワーキング方式により調査研究を進め、報告書を上梓した。その内容を概説する。
糸構造変化によるウール・ニットの形態安定性向上
愛知県尾張繊維技術センター 橋本 貴史、服部 安紀
ニット布には織物と比べて伸縮しやすいという特長がある反面、外力による変形に対して回復しにくいという欠点も併せ持っている。そこで、糸構造と編地の伸長弾性(外力に対する変形回復)及び斜行現象の関係について検討した。
その結果、編地の伸長回復性は、高伸長になるほど糸構造の影響よりも編地密度の影響が大きいことが分かった。また、ニット布の欠点である斜行現象について糸トルクとの関係を調べた結果、15mgf・cm以上のトルク力があると編地に斜行が発生することが判明した。
ニットは織物と比べて変形しやすいという特性を持っている。衣服とした場合、その伸縮機能がカジュアル性とマッチし長所ともなるが、欠点として種々の形態変化となって現れることが多々ある。形態変化には次のような要因が挙げられ、それが総合的に型くずれとなるわけである。
(1)洗濯等による縮みや伸びの寸法変化
(2)着用中や保管中の自重による伸び
(3)編地の性質からくる斜行・ねじれ
(4)ひじ抜け・ひざ抜けなどのバギング現象
ここでは編地の斜行とバギング現象を取り上げ、糸構造とこれら形態変化との関係を検討することにより、ニットの形態安定性向上を目指すことにした。
具体的には糸構造としてリング紡績糸、エアージェット紡績糸、ラップヤーン、コアヤーンの4種類の糸構造を用いて、糸物性及び編地物性等の評価試験を行った。
スタイル・デザイン・イメージによるアパレル素材の分類
愛知県尾張繊維技術センター 本間 重満、小林久行
アパレルCAD等、先端機器を利用して、アパレル製品の企画・設計技術の高度化を図るため、風合いやテクスチャー等、織物の持つ物性的要因と感覚的要因との関連を究明し、スタイル・デザイン・イメージ及びアパレル・パターンに対応したアパレル素材の分類・検索手法について研究を行った。
ア)アパレル素材を繊維種別や織り組織、糸番手、織り密度さらには、これらを総合した重量、厚さ、表面形状等、物理特性と官能特性により代表的な30種の素材を選定し、そのイメージをSD法により数量的にとらえ、因子分析法を用いて感情空間に位置付けた。これにより基本的なアパレル素材のイメージ構造を解明するとともに、アパレル素材のイメージを構成する各種物理特性と感覚的要因の関連を定量的に把握することが可能となった。
イ)主因子法による因子分析でアパレル素材の因子構造を解明することにより、昨年度研究の成果であるスタイル・デザイン・データベースに準拠した8組の形容詞対をイメージ評価尺度としてデータベース化への適正化を図った。
これにより、イメージ評価によるアパレル素材の分類・検索とともに、スタイル・デザインやファッション・イメージなど、アパレル・デザインを構成する各種デザイン特性を総合したアパレル・デザイン・データベース化への対応を図ることができた。
アパレル商品企画において素材は、最終製品のイメージを構成する重要な造形要素である。商品の差別化手段として、素材が備えている色柄、表面感、風合いなどの素材の変化に求めることがしばしば見られるように、デザイナーにとって、素材は重要な造形手段であり、素材を選ぶことがすでにデザインワークのかなりの部分を占めているといえる。
一般的に素材が備えている色柄、表面感、風合いなどは、繊維製品の代表的な官能特性、すなわち人間の感覚によって評価される特性である。このため、風合いについては、物理的、感覚的側面からその評価技術について様々な研究がおこなわれ、今日では製品設計や販売計画とリンクした総合的な素材企画手法として工学的にアプローチすることが可能となってきている。
市場の成熟化に伴いアパレル業界は、これまで以上に科学的で緻密な消費者分析に基づいた商品企画や生産管理、さらには販売計画が課題とされている。なかでも、消費者ニーズの個性化、多様化、高級化にともない、デザインを始めとする商品開発において、従来の商品の価格や機能以外にフィーリングや嗜好など消費者の感性的要求を製品に反映させることが不可欠とされている。
このため、アパレル業界では、これまでデザイナーや設計者の勘にたよることの多かった企画・設計分野にも可能な限り科学的、合理的な手法で開発が行えるようコンピュータ支援による様々な設計システムが導入されて来ている。今日では、消費者の心理的特性を客観的、定量的に把握して製品の物理的特性との対応関係を解明するため、感覚計測を始め感性の定量化に向けてのコンピュータ利用技術への対応が図られている。
このことから、CAD等、コンピュータを利用してアパレル・デザインにかかわる各種感性情報をストックし、解析することによってデザイン決定を支援する知識ベースの構築を目的に、各種デザイン特性に係わる感性的要因の定量把握とイメージにより分類・検索する手法について、平成6年度のスタイル・デザインのイメージ評価に続き、アパレル素材の分類・検索手法について研究を行った。
ウールケラチンの抽出技術
愛知県尾張繊維技術センター 板津 敏彦、茶谷 悦司
エコロジー時代の到来に伴って、健康や快適性をテーマにした繊維製品の開発が求められており、これを実現す る素材(加工剤、繊維)として天然高分子が見直され、それを応用する技術が注目されるようになってきた。天然加工剤については、羊毛製品にケラチン等の溶解物を付与して形態安定や風合い改良をめざす研究などが行われてきたが、さらに天然高分子を高度に利用する技術、例えば微粉末化、膜化することで、より優れた機能性を有する製品を開発する技術が注目されている。この技術の確立により天然高分子素材として羊毛や絹を再生・利用することが可能となり、環境問題にも寄与できる。
繊維以外の分野においても、この技術を応用し、より優れた機能性を有する製品の開発、例えば人間の健康や快適性に関連する新製品開発の一層の進展が望まれている。
このため、本研究ではウールの主成分であるウールケラチンの製品化を図るため、膜形成等が可能な状態(活性状態)でウールケラチンを抽出する技術について検討することとした。
経通し省力化システムの開発(2)
愛知県尾張繊維技術センター 加藤 淳二
織布準備工程のなかで特に人手と時間を要する経通し作業をメカトロ化する研究に取り組み、作業を省力化するシステムを試作した。
前回の報告、経通し省力化システムの開発では、経通し作業者の動作を分析し、それぞれの作業を機械に代行させることで省力化を図るシステムの開発を報告した。作業の各要素(綜絖を一本分離する、綜絖を把持して移動する、経糸を綾から分離する、経糸を運ぶ、綜絖の目の位置決めを行う、綜絖の目に糸を通す)についてそれぞれを代行する要素技術を開発し、それらを統合して連動制御するシステムを試作してみた。
本報告では、さらに複数列の綜続への展開と、各動作の確実性向上に向けた取り組み等について報告する。
愛知県の尾州地域は日本一の毛織物産地である。この産地は古くから幾千に及ぶ中小企業の活躍で支えられてきている。
尾州の原動力ともいえる中小毛織物企業では、いま労働者の高齢化や熟練労働者の不足が深刻化している。加えて生産の少量短納期化がいっそう進み、業界は、より効率の高い生産の必要から、手間や時間のかかる作業の合理化、省力化を強く求めている。
毛織物の準備工程の中に「経通し」作業があり、手間と時間のかかる作業の代表となっている。何千本にも及ぶ経糸を、一本ずつ綜絖の目に通す大変な作業であるが、織物の製造には不可避である。しかし単純作業の繰り返しなので、機械やロボットの得意な作業であるともいえる。
そこで、メカトロ技術を応用してこの作業の省力化に取り組んだ。
なお、本研究では、すでに各企業に導入されている経通しスタンドや市販の汎用部品を最大限利用し、簡素で安価な機械を提案する方向で取り組んだ。
色柄欠点検査技術に関する研究
愛知県尾張繊維技術センター 安藤 正好、池口 達治
先染毛織物の縞・格子柄などの比較的大柄な織物を検査対象とし、ピッチ違い等の「柄欠点」を二次元画像処理技術により、また、無地織物の中希等の「色欠点」を色解析技術により、自動検査するための各検査技術及びそれを支援するための知識ベースの研究を行った。
その結果は次の通りである。
(ア)柄欠点を検査する二次元画像処理法については、柄のレピートサイズを自己相関から求め、レピートサイズでブロック化しブロック画像相関処理を行うことで欠点を抽出する手法を導いた。
(イ)色欠点を検査する方法として、分光光度計をトラバースし、織物に近接させて測色するシステムを開発し、オンライン色検査を可能にした。
(ウ)織物設計情報から、二次元画像処理及び色検査を行うための検査パラメータなどの情報を導き出す知識ベースシステムを開発した。
毛織物生産工程の中には、単調な作業ではあるが熟練を要する労働集約的な工程が多く存在している。最近の若年労働者はこうした単純作業を嫌う傾向があり、後継者の育成は極めて困難で、自動化を進めなければならない状況にある。また、これらの労働集約的な工程の自動化は、国際競争力の強化と県内生産基盤の空洞化を防ぐ面からも重要な課題となっている。なかでも検反工程は、製織・染色・整理などの各生産工程で繰り返し行われており、そのほとんどの作業が人手(目視)に頼っているのが現状である。この作業を自動化することは、省力化を図るとともに製品の品質の均一化を図る上からも、以前から実用化が強く望まれていた課題の一つであった。目視検査の自動化に関する研究は、視覚と脳の働きを機械で代替するもので、高度な機械開発が必要である。この研究の基幹となる技術は、コンピュータ画像処理技術を応用して、製品の正常と異常を識別するもので、ICや機械部品などの検査で実用システムが報告されている。一方、織物検査に関するものは、通産省の大型プロジェクト「自動縫製システムの開発に関する研究」の要素技術で行われた研究などが報告されているが、無地織物の検査を中心としたもので、まだ研究段階である。
先染毛織物は、素材・組織・密度・色柄などの組み合わせによりその種類は多数存在し、その検査手法は無地織物に比較し複雑であり、個々の織柄に対応した検査アルゴリズムが必要となり、知的情報処理技術を応用した検査システムが要求される。
昨年度の研究では、先染毛織物の比較的小柄な織物を検査対象とし、ラインセンサをベースとした検査システムを用い、センサから得られる一次元のデータ列から織段・筋立ち等の欠点を自動的に検出するために、知識データベースを応用した一次元画像処理技術の研究を行った。
本研究では、先染毛織物の比較的大柄な織物を検査対象とし、ビッチ違い等の「柄欠点」を二次元画像処理技術により、また、無地織物の中希等の「色欠点」を色解析技術により、走行中に自動検査するための研究を行った。また、各検査技術を支援するための知識ベースの研究を行った。
導電性物質による毛繊物の帯電防止技術
愛知県尾張繊維技術センター 野田 栄造
毛織物でも、冬季のような乾燥した状態では、摩擦等で静電気が発生し帯電し易くなる。静電気の帯電による塵やほこりの付着により、礼服などの黒い衣服では特に外観が損なわれる。また、静電気の帯電により、衣服のまとわりつきや脱衣時の火花の発生、ドアのノブに触れたときの放電による指先のショックなどは不快なものである。
この静電気の発生を抑えるものとして、帯電防止剤がある。帯電防止剤は一時帯電防止剤と耐久性帯電防止剤とに分類される。毛織物の後加工で行われる耐久性帯電防止加工には親水性重合体の皮膜を繊維表面に形成させる方法や親水性モノマーを繊維表面にグラフト重合する方法等がある。しかし、風合いを重要視する毛織物には嫌われる傾向にある。
羊毛は一般的に金属をよく吸着、吸収する事は知られている。本研究では、この性質を利用して、冬季のような低湿度状態でも静電気の発生が少なく、クリーニング等による帯電防止効果の低下が少ない毛織物の帯電防止加工について検討を加えた