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テキスタイル&ファッション誌(メールマガジン)バックナンバー
テキスタイル&ファッション Vol.10 (1993)
Vol.10/No.1~12
1993年4月号~1994年3月号
1-ファッション情報 | No. | 月 | 頁 |
---|---|---|---|
'94春夏FDCテキスタイルコレクンョン開幕 | 1 | 4 | 1 |
アパレル業界を取り巻く価格症候群 | 2 | 5 | 48 |
今、中国は 眠れる獅子は起きた | 3 | 6 | 95 |
ファッション産業の基準は大きく変貌する CS発想に基づくリストラクチャリング |
4 | 7 | 149 |
アパレル業界における労働時間短縮の現状と課題 | 5 | 8 | 203 |
秋冬インポート・メンズ・ファブリック・コレクション | 6 | 9 | 263 |
'94秋冬FDCテキスタイルコレクションを開催 | 7 | 10 | 327 |
このままだと「紳士服に明日がない」になってしまう | 8 | 11 | 386 |
明日のテキスタイル・デザインの羅針盤へ | 9 | 12 | 448 |
変わる市場、流通革新を生きる | 10 | 1 | 509 |
1990年代後半のトレンド | 11 | 2 | 573 |
FDC春夏インポート・メンズ・ファブリック・コレクションを開催 | 12 | 3 | 655 |
2-研究報告 | No. | 月 | 頁 |
---|---|---|---|
高吸湿・高放湿糸の開発 | 1 | 4 | 5 |
糸染工場における人手作業の自動化方法 | 2 | 5 | 51 |
裁断くずの再利用 | 3 | 6 | 108 |
へルド移動制御方法の開発 | 4 | 7 | 153 |
快適なアパレル素材の積層技術 | 5 | 8 | 207 |
羊毛強撚チーズの均染化技術 | 6 | 9 | 265 |
ニット編地リンキングの自動化に関する研究 -編地伸長特性と編目形状解析- |
7 | 10 | 334 |
3次元CADによるアパレルデザインシュミレーション | 8 | 11 | 389 |
羊毛染色の短時間化技術 | 9 | 12 | 453 |
素材特性に対応した縫製技術 | 10 | 1 | 514 |
次世代ウールに関する研究-柔軟・高光沢糸の開発- | 11 | 2 | 578 |
先染織物組織柄画像検査技術 | 12 | 3 | 657 |
4-繊維ビジョン | No. | 月 | 頁 |
---|---|---|---|
今後の繊維産業及びその施策の在り方(中間とりまとめ)(1) | 4 | 7 | 181 |
今後の繊維産業及びその施策の在り方(中間とりまとめ)(2) | 5 | 8 | 240 |
今後の繊維産業及びその施策の在り方(1) | 9 | 12 | 470 |
今後の繊維産業及びその施策の在り方(2) | 10 | 1 | 538 |
今後の繊維産業及びその施策の在り方(3) | 11 | 2 | 615 |
6-調査報告 | No. | 月 | 頁 |
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愛知県繊維産業実需対応システム調査(1) | 6 | 9 | 285 |
愛知県繊維産業実需対応システム調査(2) | 7 | 10 | 349 |
愛知県繊維産業実需対応システム調査(3) | 8 | 11 | 410 |
9-技術情報の窓 | No. | 月 | 頁 |
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技術情報 | 1 | 4 | 50 |
技術情報 | 2 | 5 | 91 |
技術情報 | 3 | 6 | 145 |
技術情報 | 4 | 7 | 199 |
技術情報 | 5 | 8 | 259 |
技術情報 | 6 | 9 | 323 |
技術情報 | 7 | 10 | 382 |
技術情報 | 8 | 11 | 444 |
技術情報 | 9 | 12 | 502 |
技術情報 | 10 | 1 | 569 |
技術情技 | 11 | 2 | 645 |
技術情報 | 12 | 3 | 693 |
10-その他(新設機器紹介) | No. | 月 | 頁 |
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新設機器紹介 | 1 | 4 | 23 |
年頭の辞 | 10 | 1 | 482 |
FDC 10周年記念式典 | 12 | 3 | 649 |
アパレル業界をとりまく価格症候群
ギャップジャパン編集長 福永 成明
それにしても、この変貌ぶりを誰が予想しただろう。1着10万円以上もするスーツをビジネスウェアにあてがい、海外ブランドが国産品のように買われたのが、はるか昔の事のように思えるほど、最近の消費は一変してしまった。
あれだけ高級ブランドをとりあげていた女性誌が「着まわし」を連呼すれば、アパレル業界までもが「値頃感」を強調。いまや価格が最大の“付加価値”になってしまった。だが、ほんとうに値段を下げさえすれば、アパレルの消費は回復するのだろうか…。
カテゴリーキラーの台頭
オンワード樫山と青山商事の対立が、週刊誌をにぎわす“事件”となったことは記憶に新しい。詳細については、すでに多くのマスコミがとりあげているので、ここでは割愛するが、これも消費不振がもたらしたトラブルといえる。
紳士服がこれほど落ち込まなければ、両社の対立は内々に事が運んだはずだし、マスコミだってこれほど大騒ぎしなかったにちがいない。
この問題は、プライベートブランド(PB)を納入していたオンワード樫山が、青山商事の都心部出店に難色を示し、取引停止を申し入れた。
これに対して青山商事は、一方的な取引停止は納得できないとして、そのPB商品を半額セールにかけ、これを百貨店と同じグレードであるとPRした。
これにオンワード樫山が反発、百貨店と同じグレードは困る、と抗議したのが発端。
要は両社がどのような契約にもとづき、PB商品を生産していたかであり、事の決着は法律に照らすのが筋である。
だが、考えてみれば、この種のトラブルは、決して目新しいものではない。かつても某有名ブランドがディスカウントルートに乗ってしまい、それを知ったブ ランドメーカーが破格値で販売されていた商品を全品買い上げる、という“事件”が発生した。
今、中国は 眠れる獅子は起きた
繊研新聞社 名古屋編集長 山下 征彦
このところ中国が注目されている。世界同時不況のなかで、西側先進国が深刻なリセッション(景気の後退)に追い込まれているなかで、中国が好景気を維持しているからにほかならない。
また、いわゆる社会主義諸国のなかでも、旧ソ連をはじめとした東欧諸国の経済がほぼ崩壊し、西側の援助に頼っているのに対して、ひとり中国は高い経済成長を続けている。
中国の発展の原動力は92年10月の共産党大会で打ち出された経済の開放・改革路線、社会主義市場経済にあるのは言うまでもない。政治体制は社会主義、経済体制は資本主義という世界の歴史でも初めての試みは今のところ成功裏に進展している。その現状と方向は?
主な項目
驚異のGNP
・中国の国勢 ・経済の動き ・GNP伸び率
・物価上昇率 ・賃金伸び率 ・小売の売上げ
進む海外開放政策
・経済構図 ・外資導入 ・日本の投資 ・繊維業界の投資
・受け入れ環境 ・市場経済 ・証券市場
日中貿易関係
・全体の貿易 ・スーツのケース ・中国の産地
獅子の未来派
・ジェトロの指摘 ・農村問題 ・インフレ懸念
・行政指導 ・商品の高度化 ・市場として
ファッション産業の基準は大きく変貌する
CS発想に基づくリストラクチャリング
山村研究室 プランナー 山村 貴敬
生活者サイドと提供者サイドの間に生じたギャップ
不況の真っ只中、ファッション産業のリストラクチャリングは、最重要な課題として提起されている。リストラクチャリングが要請される最大の要因は、生活者サイドと、提供者サイドである産業との間に生じたギャップにある。
このようなギャップが生じた直接の原因は、バブル経済崩壊後の不況にあるが、その背景には、
・グローバル化時代における、生活者サイドの消費意識の変化
・60年代後半ファッション化黎明期により過去4半世紀を経過した、産業側の体制
その双方の間に発生したズレが大きく影響している。
それでは、一体なぜこのようなズレが生じたのか、先ず生活者の変化から探ってみよう。
マーケットの国際化
生活者の変化は、おおむね次の2点に要約できる。
(1)マーケットの国際化
(2)生活者のファッション進化
先ず、(1)マーケットの国際化、に影響を与えたのは、85年プラザ合意以降の円高である。
円高は、輸入の増大や海外旅行の増加をもたらし、生活者が欧米ファション商品に接する機会を増大させた。また、メディアによる海外ファッション商品の紹介も増え、急激に消費マーケットの国際化を促進した。
このようなマーケットの国際化は、バブル時代、一時的に成金リッチと言われるブランド消費を推進させたが、このインポートブランドブームが終焉を告げた今日から見ても、生活者の本物を見極める目が育成されたことだけは否定できない事実である。
(1)マーケットの国際化は、(2)生活者のファッション進化を促したものである。
アパレル業界における労働時間短縮の現状と課題
労働時間短縮の問題の経緯(マーケティング・サイエンス研究所 土田貞夫(上武大学商学部))
労働時間短縮については、具体的提案としては昭和61年4月の「国際協調のための経済構造調整研究会報告」いわゆる「前川リポート」によって欧米先進国並みの年間総労働時間の実現と週休2日制の早期完全実施が提言されたことに始る。これを受けて、昭和63年5月の「経済運営5か年計画」の閣議決定ならびに同6月の「第6次雇用対策基本計画」の閣議決定においても重点課題としてあげられ、
(1)完全週休2日制の普及促進
(2)年次有給休暇の完全取得
(3)所定外労働時間の短縮に重点をおいて労働時間短縮を進め
(4)計画期間中に週40時間労働制の実現を期し
(5)年間総労働時間を1800時間程度に向けて出来る限り短縮する
とする方針が決定された。こうした方針に基づいて、平成2年6月、通産省(時短経営問題懇談会報告書)によって年間労働時間1800時間を目標とする時短を推進するために業界ごとに協議の場を設け、ガイドラインを策定するよう提唱された。すなわち、
(1)時短推進委員会の設置
(2)ガイドラインの具体的な検討内容
1.対象機関は原則5か年間
2.具体的な目標の設定
3.当面の具体的対応策
4.個別企業レベルでの対応策
(3)ガイドラインの普及・啓発
の諸点について指示されているものである。
このままだと「紳士服に明日がない」になってしまう!
~紳士服市場の現状と今後を考える~
ファッションジャーナリスト 福永 成明
それにしても、いったい紳士服はどうなってしまったのだろう。百貨店では、“2ケタ減”が当り前のようになってしまったし、かつて紳士服市場をリードしてきた有力専門店までもが大苦戦をしいられている。
これに対して、不況知らずの勢いで業績を伸ばしてきたロードサイド型専門店が、相次ぎ都心部に進出。もはや紳士服市場は完全に、“価格革命”の波に飲み込まれてしまった。
もともとニューヨークあたりと比べても割高だと言われた紳士服だが、これほどの激変を誰が予想しただろう。紳士服を蘇生するには価格しかないのか……。そんな紳士服市場の現状と今後を考察する。
主な項目
・紳士服市場における“政権交替”
・厚利多売の余裕で都心を直撃
・紳士服業界が“価格革命”から抜出す妙手は…
明日のテキスタイル・デザインの羅針盤へ
確立されたジャパン・コンテストの基盤
現代構造研究所 所長 三島 彰
10月29日、ジャパン・テキスタイル・コンテストの審査に臨んだ私には、その2週間前の中国旅行の余韻が深く残っていた。
今回の中国旅行は、パリ・オートクチュールにも名声の高い、日本を代表するプリント作家、京都の「デザインハウス風」を主宰する松井忠郎氏のご招待によるものだった。松井氏は、制作の中国への全面移転を計画しておられるのだが、このところ体制の固まった上海アトリエにご案内くださったのである。
当初松井氏が計画しておられたのは、トレーサーの養成だった。しかし応募してきた学生があまりにも有望なので、デザイナー養成に切り替えた。日本では昨今有望な新人が、ファッションとかテキスタイルとかいう分野をめざしてくれない。
折角来てくれた新人も、なかなか思うように育ってくれない。そういう焦慮が、この上海アトリエ設立の背景にあった。
仕事がすべて順調に進んでいるわけではないようだ。できれば中国シルクを使って現地で捺染し、日本になり、ヨーロッパになり売りたい。しかし現実はB反に泣かされる毎日であるらしい。
当面の段階で中国は、織物と縫製は過剰生産の状況にあるが、捺染への投資はいまなお過小である。このため仕事が粗くなり、B反続出になる。
主な項目
・中国で考えたこと
・明日のカギは企画開発能力にある
・本格化したデザイン競争
・写し出された地元の顔
94年ファッションビジネアス 変わる市場、流通革新を生きる
(平場再築からショップ提案まで) (アパレル企業の攻勢が始まる)
繊研新聞社 東京本社 総合アパレルグループ・キャップ 山崎 光弘
消費不況が深刻だ。12月の百貨店販売にやや薄日が差し始めたというものの、百貨店販売は21カ月連続前年割れ(93年11月まで)という記録を更新中。
なかでも93年11月は紳士服16.1%減、婦人服6.0%減。衣料全体も9.6%減と史上最悪の落ち込みとなった。
量販店も同様に衣料品販売は8.5%減と回復しないまま94年を迎えた。
94年は「流通革新を生きる」年である。あらゆる既存のシステムがキシミを起す中で、ファッションビジネスの明日を考えてみたい。
主な項目
■縮小均衡へ
=欲しい商品、売場作りに意欲=
■ブランド総入れ替え
=既存ブランドでは現状維持もできぬ=
■ショップ提案で新鮮さをアピール
1990年代後半のトレンド
==60年代と90年代のシンクロニズム==
株式会社シルバーピラミッド ファッション・ディレクター 渡辺 晶
青山通りを表参道へ向い明治通りを直進すると歩行者天国で有名な神宮パークエリアヘ、又左折すると、タレントショップやカジュアルトレンドの店がある竹下通りがある。
60年代は表参道が、ファッションの中心地となり、63年には原宿族、70年には、ブティックやマンションメーカーが原宿に続々と誕生した。竹の子族や80年代にはDCブランドのブームを起こした。このDCブランドブームは、ここ10年間つまり90年代に入るまであらゆるファッションの原点ともいうべき存在になっている。
東京又は日本の事だけではなく世界、特にニューヨークやパリのコレクションにまで影響をあたえ続けた。
今、また日本だけではなく世界中でこの60年代が静かなブームになりそうな気配を見せてきた。
高吸湿・高放湿糸の開発
愛知県尾張繊維技術センター 河村 博司、瀧森 鉄生、大津 吉秋、古田 正明、西村 美郎
衣服の機能性要求も、単に着るものだけでなく、高度な機能である「快適性」に関心が持たれてきている。そして、機能性に着目する場合、秋冬用衣料素材として万人が認めるウールも、春夏用衣料素材としては、綿、麻などに遅れをとっている。
しかし、ウールの高湿度での水分率は、数有る繊維中でも最右翼である。この機能をうまく発揮させることができたならば、湿度の高い日本の夏用衣料として多く採用されることになる。
そこで、ウール、あるいはウールとレーヨン繊維等を特殊紡績技術で複合構造化し、高吸湿及び高放湿機能を有する春夏用毛糸素材の開発を行った。
結 果
春夏用ウールスーツ素材を対象に、衣料の快適性の中で水分特性とくに吸湿性と放湿性についての向上を図るため、糸の吸湿・放湿性に関係すると思われる要因を試験・分析して、それらの中から重要な要因を探しだした。
すなわら、糸の吸湿性・放湿性を向上させる重要要因として
(1)細番手化とカベ状化(糸表面積の拡大化)
(2)撚数の低減化
(3)素材の複合化
(4)羊毛繊維表面の化学処理加工(スケール処理加工)
の4つに分けることができた。羊毛繊維表面の化学処理加工について、その効果は大きいが、本報告では糸製造工程に主眼を置いて検討した。
これらを満たす糸製造方法として、
・糸表面積を拡大するために細番手糸を使い、所定の番手のカベ糸状複合糸が容易に製造できること。
・複合糸の中で無撚部分を多くできること。
このことから、精紡撚糸方式(中空スピンドル方式)が適していると考えた。
精紡撚糸方式における製造条件の最適化により、1/36相当の糸でつぎの結果を得た。
○100%ウール
芯と押え:梳毛糸(1/82)、鞘:粗糸をドラフト(1/300相当)
巻取比:1.08、撚数:760t/m
・放湿性で約5%向上、吸湿性は変わらない。
○レーヨンとの複合(ウール混用率81%)
芯:梳毛糸(1/82)、鞘:粗糸をドラフト(1/100相当)
押え:レーヨン(50d)
巻取比:0.93、撚数:1111t/m
・吸湿性での向上は無いが、放湿性では約14%の向上ができた。
○ナイロンとの複合
(A)芯のみ使用(ウール混用率93.5%)
芯:ナイロン(10d)、鞘:粗糸をドラフト(1/69相当)
押え:梳毛糸(1/82)
巻取比:0.96、撚数:760t/m
・吸湿性では少し劣るが、放湿性では約13%の向上ができた。
(B)芯と押えに使用(ウール混用率87%)
芯と押え:ナイロン(10d)、鞘:スライバ(1/39相当)
巻取比:1.03、撚数:850t/m
・吸湿性で4~7%の向上、放湿性では約7%の向上ができた。
糸染工場における人手作業の自動化方法
愛知県尾張繊維技術センター 佐藤 久、浅井 弘義
糸染工場の人手作業の中で、染色品の品質に重要な影響を及ぼす染料計量作業の正確化と効率化を図るため、染料秤量誤差が染色物の色差に及ぼす影響を検討して染料の秤量誤差の許容範囲を求めると共に、熟練専従者によらず作業者が変わっても正確な計量作業が維持できるような染料計量システムを検討した。
その結果、染料秤量誤差が計量値の1%以下であれば、染料秤量の不正確さが原因となる染色品の色ブレを防止できることが分かった。
また、パーソナルコンピュータと天秤を組み合わせて、糸染工場でも導入が容易な染料簡易計量システムを開発した。
糸染工場では熟練技術者の不足に対応するため、工程の連続化・システム化が望まれており、各種自動化機器が提案されている。
染色工程では、求められた色を正確に、かつ短時間に再現できるかが重要な課題となっている。このため、試染部門では色出し(CCM)、染料計量(自動秤量装置)、試染機の自動化がかなり浸透し、一日の試染点数の増加や色出しでの一発率の向上などの成果が得られている。
一方、染色現場でも個々の染色機の自動化はかなり進んでいるが、染色品の品質に密接に関与するとされる染料計量作業の合理化は試染部門に比べると大幅に遅れている状況にある。
多くの企業では、秤量精度の確保や責任の明確化などの理由により、染料計量作業に熟練専従者を配置している。しかし、多品種少量生産により、計量点数は増加し、作業も煩雑化しており、計量ミスが発生し易い状況にある。
また、最近の慢性的な熟練者不足から、染料計量作業に配置した熟練者をより高度な分野へ再配置する必要があり、糸染工場でも粉体染料自動計量装置への関心が高まっている。
しかしながら、装置が高額なこと、設置面積の点から染料ホッパーを多数設置できないため利用できる染料数が少ないことなど、糸染企業が導入するには未だ課題が山積している。
本研究は糸染工場でも導入が容易で、熟練者だけでなく未経験者でも一定の精度以上で染色計量作業が行え、かつ秤量ミスなどを防止できるような計量方法を検討した。
裁断くずの再利用
愛知県尾張繊維技術センター 大津 吉秋、三輪 幸弘
はじめに
近年、家庭や工場から排出される廃棄物の量が増大して来ており、大きな社会問題となっている。
繊維産業においても様々な工程から繊維くずが排出されているが、縫製工場では生地の15%前後の裁断くずが廃棄物として処分されており、資源保護の観点から有効利用の方策が求められている。
本研究は、縫製工場から排出された裁断くずの再利用を図るため、裁断くずを細断化し樹脂接着によるシート成形技術について検討した。
まとめ
縫製工場から排出される裁断くずの再利用を図るため裁断くずを細片化、粉砕化し、樹脂接着によるシート成形技術について検討した。
(1)裁断くずを1cm角程度に細片化する方法では、厚さは不均一になるが圧縮性のあるシートができる。数ミリ以下の繊維に粉砕化する方法では、厚さが均一で引張り、曲げ強さの高いシートができる。
(2)成形方法では、アクリル系樹脂が、引張り・曲げ強さに、ポリアミド系樹脂が、ねばり(曲げ変形)に優れていることがわかった。
へルド移動制御方法の開発
--経通し作業の省力化へ向けての要素技術--
愛知県尾張繊維技術センター 加藤 淳二、河村 博司
汎用の直交座標型2軸ロボットを応用して、織布準備工程の経通し作業時に該当列の空ヘルドを引き出し、経通しが終わると反対側ヘよせるという動作を、ロボットに置き換えて行わせる方法を開発した。
ロボットを制御するため専用に開発したソフトウェアは、経通し順序入力ソフトウェアと移動制御用ソフトウェアから成り、入力した経通し情報を2軸ロボットを制御する専用文法の言語に翻訳する。
これを2軸ロボットに転送してヘルドの移動を制御する。
尾州を中心とする毛織物業界では、多種少量・短納期化の進展に加え労働者の高齢化や不足が深刻化しており、より効率の高い生産が必要で手間のかかる手作業の合理化、省力化が強く求められている。
合理化、省力化といった観点から織布工程の各作業を順に検討していくと、織布準備工程が、実際に織物を織る製織工程と比較して大きく自動化が遅れていることがわかる。
織布準備工程は織物の経糸と緯糸を織機にかける用意をする工程である。
とりわけその工程の一つである「経通し」は、数千本に及ぶ経糸を1本ずつヘルドの目に引き通す単純作業の繰り返しである。
大半の企業ではこれを人手作業で行っているため、多くの手間と時間がかかっており、この作業の省力化を強く求めている。
そこで、メカトロ技術を応用して、この「経通し」作業の省力化に取り組んだ。
快適なアパレル素材の積層技術
愛知県尾張繊維技術センター 藤田 浩文、藤田 和孝
衣服の着心地で、むれる~むれない、じめじめした~からっとした、暑くるしい~さわやかな、じっとりした~さらっとしたなどで表現される湿潤感と、暖かい~寒いなどで表現される温冷感は、衣服内気候と関係が深い。
この衣服内気候は、衣服と皮膚との間の微少な空間の温湿度条件に大きく依存することがよく知られ、快適と感じるのは温度が32±1℃、湿度が50±10%RHの範囲であると言われている。
要するに衣服内の湿度が急に高くなるとむれ感を感じ、温湿度がともに高くなると暑熱感が大きく、温度が低下すると冷え感を感じるのである。
そして衣服内気候は、発熱、発汗体である人体の条件と、衣服の熱透過性、吸湿性、透湿性、通気性などのバランスによって決まるものであり、この研究にはまず各衣服素材の熱伝導性や吸湿性、透湿性などの基本的な性質を十分把握することが必要である。
また夏用衣服の快適化を図るためには、発汗等により衣服内の温度や湿度が急に高くなりむれ感を感じたときに速やかに熱や水分を移動させる必要がある。
そこで昨年度研究した布の水分移動評価技術より以下のことがわかった。
(1)定常状態の透湿性及び従来困難とされていた過渡状態の布の透湿性が短時間で精度良く測定できる水分移動特性試験機を開発した。
(2)繊維の吸湿性の違いが過渡状態の透湿性に大きく影響することがわかった。
(3)定常状態および過渡状態の透湿性は、貫通空隙率に大きく影響を受け、この貫通空隙率が大きくなる程透湿性が良くなる。
また通気度は貫通空隙率と関係があるため透湿性との相関が高い。含気率は、透湿性に及ぼす影響が少ないことが明かになった。
(4)加工条件と透湿性との関係については、同一試料でクリヤ仕上をすることにより、ミルド仕上げと比べ布の定常状態および過渡状態の透湿性が良くなることがわかった。
以上の結果を踏まえ本年度は熱や水分移動が最適になる表地への芯地、裏地の積層方法について明らかにし、快適な衣服の設計に役立てる。
この分野に関しては、婦人服地の着用感に及ぼす素材物性の研究として表地と裏地を重ね合わせて快適性を測定した結果レーヨンやキュプラ等の親水性繊維の方がheat lossが大きく、高湿度で水分率が高くなるとqmaxも大きくなるため涼しく感じ夏用裏地として快適であると報告している。
また衣服内気侯と衣服材料として、重ね着の場合熱移動と水分移動には相互作用があり、下に着る服が水分を吸収し移送する能力を持ち外衣は吸湿し発散する能力を持った方が快適である。
また異なった布を重ねたときの透湿抵抗値の加成性のずれについても研究されている。
計装制御システムを応用した繊維加工法の高度化に関する研究
--羊毛強撚チーズ糸の均染化技術--
愛知県尾張繊維技術センター 堀田 好幸
染色中に発生する強撚糸の不均染に影響を及ぼす要因を解析し、チーズ染色での均染化方法について研究した。
(1)糸収縮とチーズ染色での不均染の発生
染色中の糸収縮状態を測定した結果から、収縮率が大きいほど不均染となることが分かった。
均染を得るため、糸の収縮を防止する熱水前処理をチーズ染色に適用した。熱水前処理温度は、助剤の種類で変わるが、染料吸収率が80~90%以上となり染色性にあまり影響を与えなくなる温度が必要である。
染料溶解性のある非イオン活性剤で70℃、両性イオン活性剤では95℃が必要であった。
(2)チーズ染色で均染が得られる限界撚係数
染料溶解性のある非イオン活性剤では撚係数194以下、両性イオン活性剤では撚係数221以下の強撚糸で均染性が得られた。
それ以上の撚数の糸では、熱水前処理を行っても、チーズ外層が淡くなる不均染の状態となった。
近年、クールでシャリ感のある先染春夏物製品に各種の羊毛強撚糸が多く使用されるようになった。それに伴って、羊毛強撚糸の染色も多品種・小ロット向きのチーズ染色で行われるようになってきた。
しかし、多種多様化した強撚糸は、同時に染ムラに関するクレームを多発させている。羊毛強撚チーズ糸の染ムラは、チーズの外層部が常に淡色となる。
特に1:2型含金属染料を用いた中淡色の染色では、この現象が多発し、この対応策を考えなければならない状況となってきた。
そのため、これらの染ムラ発生原因の解析に、計装制御システムを適用し、染色中の挙動を明らかにするとともに均染化対策を求めることにした。
この研究では、撚数と染ムラ発生との関連解析及びその改善方法をチーズ染色法で行った。
ニット編地のリンキングの自動化に関する研究
--編地伸長特性と編目形状解析--
愛知県尾張繊維技術センター 井上 正義、松井 弘
セーター、カーデガン等のリンキングを自動化するためには、何らかの手段により編目を捉えその位置を特定する必要がある。
そこで、このために必要な編目の伸長特性と編目の形状特性についての基礎資料を得るとともに、CCDカメラで捉えた編目の位置をCRTに表示するプログラムを作成することを目的とした。
カメラで編目を視覚的に捉え、目刺しを行うためには、編地を一定の割合で引き延ばす必要があり、この場合の最も適切な引張り方向、伸長率及び編地の把持・引っ張り方法を把握した。
又、編目をリンキングマシンのポイント針上に移動させる場合に、編目形状を変化させることなく、且つ効率よく編目移動ができる方法を見いだした。
更に、編地を伸長した場合の編目配列の規則性について調べることにより、目刺しの自動化に必要な基礎データを得た。
次に、目刺しを自動化するためにはCCDカメラで捉えた編目の位置データにより、目刺しの対象となる編目をポイント針上に移動させる必要があり、このために必要となる、指定した編目の位置をCRT上に表示するプログラムを作成した。
“リンキング”とは、編地の個々のループを一定間隔に並んだポイント針に刺し、リンキングマシンにより編地をチェーンステッチで継ぎあわせる工程と定義されている。
従来、リンキングは、主に成形品の縫製に用いられていたが、最近では消費者指向の高級化、多様化により高品質なもの作りのための生産方法として用いられている。
リンキングの特徴は、構造上ループを縫い止めるため、縫代が不要となりすっきりと仕上がること、目刺しをして縫うために縫いずれがないことである。
このためリンキングにより生産された製品は、継目が目立ちにくく、かさばらず、高品質に仕上がる。
リンキング作業は、円形型のダイアル・リンキングマシンと、直線型のフラット・リンキングマシンにより行われるが、いずれの場合も目刺し作業は手作業により行われている。
目刺しは熟練を必要とする細かな作業のため、生産効率が悪く作業員不足の状態となっている。
最近では、編目を一つ一つ目刺ししない擬似リンキングが量的には主体となっており、一般の消費者が見た場合には、擬似リンキングか本リンキングかが区別できないほど擬似リンキングの技術が改良されている。
しかし高級なニット製品については依然“本リンキング”が求められており、また海外から輸入されるニット製品の中には、安価で豊富な労働力を利用し“本リンキング”を施した製品が存在する。
このように、消費者の高級品指向に応え、且つ、海外からのニット製品に対抗するためには、今後ともリンキングは不可欠な作業といえる。
このため、リンキング工程の内の目刺し作業の自動化をおこなうために必要な、編地の引張り方向、伸長率、把持・引っ張り方法、編目の移動方法及び編目配列の規則性について検討した。
また、編目を視覚的にとらえるCCDカメラのデータと編目移動治具を連動させるためのプログラムについても検討した。
3次元CADによるアパレルデザインシミュレーション
--デザインCADによる被服形状の立体表現手法--
愛知県尾張繊維技術センター 森 彬子
アパレルデザインの色・柄を中心とした外観設計段階でより詳細な検討を行うため、3次元CADを用いて、被服形状を立体的に表現する研究を行った。
研究の内容は、一般的なテイラードジャケットの基本形状について3次元数値を把握し、織柄を効率的にマッピングする3次元表現手法である。
被服形状をシミュレーションする手法として、計測した被服形状の3次元座標からワイヤーフレームを作成した。
また、3次元の立体形状に2次元の柄をのせた場合に生じる不自然な柄の収束を除去するためと、マッピングを正確かつ効率的に行うため、予め柄の各種形状情報を組み込んだ仮想面をワイヤーフレームの上に作成し、その仮想面に、織柄を自動的に連続して展開できるようにした。
これにより、被服形状を360゜の視野から3次元シミュレーションすることができるので、色・柄のデザイン効果を多角的に設計検討できる。
従来のアパレルデザインを創作する手順は、デザイナーがスタイル画を描き、そのイメージに合った型紙を作成する。
それをトワールに切り抜いて裁断して、人台ダミーに仮縫いして型紙を修正し、見本を縫製する方法である。
この方法の欠点は、生地の種類・柄が異なる場合は、その生地毎に縫製し見本を作成する手間がいることである。
この問題を解決するため、3次元CADシステムを応用して、被服形状をシミュレーションし、デザイン効果を立体的に検討する手法を研究した。
羊毛染色の短時間化技術
愛知県尾張繊維技術センター 浅井 弘義、佐藤 久
還元剤を用いて前処理し、羊毛の染色時間短縮法及び酸化染料による羊毛染色への応用について検討した。
還元剤で前処理することにより、染色速度、吸尽率が向上する。
2-メルカプトエタノールとモノエタノールアミンサルファイトの0.5%溶液で処理し、過酸化水素で酸化後、その浴で染色する一浴法により、90℃、65分の染色が可能なことが分かった。
また、還元剤とナイロン樹脂またはカチオン活性剤による前処理は染色速度を向上させるが、湿潤堅牢度が低下する。
酸化染料による染色は低温(50℃)で短時間(30分)染色が可能である。しかし、染色堅牢度が十分でなく、色相が限定される等の問題が明かとなった。
最近の毛織物染色整理業界は多品種少量、短サイクル化が顕著である。それに対応するため染色整理工場は小ロット化に合った技術が必要で、特に加工時間の短縮化が望まれている。
毛織物染色整理工程の中でも染色工程は人手や時間がかかり、特に小ロット化により、生産性が悪く、染色時間の短縮化が重要な技術課題となっている。
染色時間を短縮する方法として、例えば(1)ギ酸法、(2)界面活性剤法、(3)アルカリ前処理法等がある。しかし、染色ムラや染色堅牢度等の品質、コスト及び特殊な装置などの設備上の問題があり、現実にはそれほど利用されていない。
以上のような状況下において、本研究では、還元剤による前処理法を中心に検討し、より実用的な短時間染色法の確立を目的とした。
素材特性に対応した縫製技術
愛知県尾張繊維技術センター 板津 敏彦、藤田 和孝
最近の衣料消費の素材面における顕著な傾向は、素材の軽量化、ソフト化、高密度化などである。
すなわち、従来より軽く、薄く、ソフトな布地を用いた衣料が製造されるようになった。しかし、これらの素材は外観不良の問題が発生しやすくなっている。
それは、繊維・布構造上の特徴が原因である。
従来の合繊は一本の繊維の太さが1.5~6デニール(直径12~25ミクロン)であるのに対し、「新合繊」は絹、カシミヤなど天然繊維のうち最も細いも のと同等またはやや細い0.5~1デニール(直径7~10ミクロン)の極細繊維を用いてソフト感を表現したり、熱収縮率が異なる繊維をまぜ、後の染色仕上 工程で熱をかけてふくらみを発生させたり、また繊維断面の異形化等によりマイルドで深みのある光沢を発現したものである。
したがって縫製上は、極細繊維・熱収縮繊維使いであるため、熱に敏感で熱処理工程で問題が発生しやすい。
また、細番手糸使いの薄地高密度織物であるために、ハリ・コシが少なく縫糸、芯地などの影響を受け、パッカリング(布地表面の凹凸)が発生しやすい。
いせも入りにくく、曲面部ではいせ量を適切に設定しないとピリ(細かいシボ状のパッカリング)を発生しやすい。
また、軽量、ソフト化をねらったモール糸使いの織物は、毛羽により布地表面が滑りやすいため縫いずれが発生しやすい。
さらに、最近の薄地毛織物は、以上述べた点のうち細番手、薄地高密度であることに加え、吸湿による布地の伸びが大きいことによりパッカリングが発生しやすいという問題が加わる。
縫製され、スチームプレスによってきれいに仕上げされても、店頭または着用時に部分的に波立ったり、湾曲したりして外観が損なわれることが多い。
こうした縫製難度の高い布地への対応策を見いだすことは、製品の多様化・高級化、従来素材製品のより一層の高品質化が実現できる。
このような観点から、ここでは縫製難度の高い布地を収集・分類し、それぞれの問題点を明らかにして、できるだけ多種類の布地に対応できる合理的な縫製方法を見いだすことを検討した。
次世代ウールの開発に関する研究
--柔軟・高光沢糸の開発--
愛知県尾張繊維技術センター 北野 道雄、橋本 貴史、山本 周治
80年代末に出現した「新合繊」などの新素材に対抗して、ウール業界においても今までにない新しい機能性を持ったウールが多く開発された。
そこで、これらの加工技術を応用して、柔軟性と光沢、形状記憶性に優れた中繊度ウール糸を開発する方法について研究し、あわせて加工した糸の各種性能を評価した。
柔軟性と光沢付与、形状記憶加工には酵素や天然高分子等の天然加工剤を用いることにより、人や環境にも優しい加工法を採用した。
このうち酵素には先の研究で羊毛への改質効果が認められた中性プロテアーゼを用い、天然高分子には形状記憶機能の高い羊毛ケラチンや絹フィブロイン、コラーゲンの加水分解物を用いた。
酵素処理と天然高分子付与加工により得られた羊毛糸の性能は、伸長復元率、引張試験機を用いた伸長弾性率、伸長エネルギー、強伸度等の測定値により比較した。
また、編地を編成して、KESによる圧縮特性を調べた他、光沢についても光沢度で比較した。
この結果、優れた柔軟性と光沢、形状記憶性が付与できる加工条件が明らかになった。
さらに、超音波処理装置を利用した加工方法についても検討した結果、効果的な処理法であることが確認できた。
近年、繊維加工に求められる特徴には、高い機能ばかりかエコロジーにも注目する必要がある。とりわけ、ウールや綿等の天然繊維業界では、人や環境に優しい加工あるいは地球に優しい加工を目指して各種の天然物の利用が試みられている。
そこで、酵素を利用したバイオ加工による羊毛改質法と天然高分子を利用した形状記憶加工を応用することにより、柔軟で高光沢を持った高機能性次世代ウールを開発する研究を行ったので報告する。
先染織物組織柄画像検査技術
愛知県尾張繊維技術センター 安藤 正好、池口 達治
先染織物の組織柄を検査するための画像処理手法開発に関する研究を行った。
その結果、テンプレートマッチング法、フル画像相関法、ブロック画像相関法、FFT法の4種類のアルゴリズムを開発し、検査性能等について検討を行い、次のことがわかった。
・テンプレートマッチング法は、検査精度は良いが、ノイズに弱く、処理時間を要する。
・フル画像相関法は、処理時間が比較的短いが、試料の傾き補正や位置合わせなどの前処理が必要である。
・ブロック画像相関法は、前処理は不要で、処理時間は短く(レピート既知で約1.25秒)、欠陥抽出性能も優れている。しかし、大柄の場合欠陥抽出性能が低下する。
・FFT法は欠陥抽出精度等は優れているが、処理時間が長い。
最近、消費者が商品の品質を厳しい目でチェックするようになっており、「製造物責任」という消費者保護の機運も広がっている。
当然のことながら、生産者は不良品・欠陥品を市場に出さないという使命を持っており、製品検査の役割がさらに重要なものとなってきている。
生産現場では、多品種少量・短サイクル生産に対応し、生産性向上、省力化を目指したFA化の推進が行われているが、製品の検査はいまだ人手に頼っているのが現状で、自動化・省力化が最も遅れている作業である。
織物の検査(検反作業)は、製織、染色仕上、縫製などの織物製造工程で繰り返し行われており、熟練した作業者が20から50m/分で走行している織物を目視で、数十項目の検査項目(欠点の種類)について検査を行うという非常に大変な作業である。
したがって、作業者の負担の軽減及び製品の品質向上・均質化を図る上からもこの作業の自動化・省力化が強く望まれている。
これまで、綿織物や合繊織物など無地織物の穴や汚れ等を自動検査する研究が報告されている。
しかし、先染織物のように柄のある織物の場合、柄と欠点の区別を機械で行うことが容易ではなく、自動化に関する報告はない。
本研究では、先染織物を対象に検反作業の自動化に関する技術の確立を目的として検討を行った。