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テキスタイル&ファッション誌(メールマガジン)バックナンバー
テキスタイル&ファッション Vol.3 (1986)
Vol.3/No.1~12
(1986年4月号~1987年3月号)
1-ファッション情報 | No. | 月 | 頁 |
---|---|---|---|
'87春夏FDC TEXTILE TREND(MEN'S) | 1 | 4 | 1 |
'87春夏FDC TEXTILE TREND(LADIES') | 2 | 5 | 50 |
ニュークラッシックの登場 株式会社シルバーピラミッド 渡辺 晶 |
2 | 5 | 59 |
第3次TOP時代の出現とその意味 現代構造研究所 三島 彰 |
3 | 6 | 98 |
大人っぽさ、フェミニン、高級感の時代 ファッンョンコーディネーター 西山栄子 |
5 | 8 | 184 |
'87/'88秋冬テキスタイル企画 | 7 | 10 | 83 |
'87/'88秋冬FDC TEXTILE TREND(LADIES') | 8 | 11 | 326 |
'87/'88秋冬FDC TEXTILE TREND(MEN'S) | 9 | 12 | 377 |
'87/'88年秋冬素材について 株式会社シルバーピラミッド 渡辺 晶 |
10 | 1 | 426 |
87年のアパレルファッンョンを展望する 繊研新聞社編集部 山崎光弘 |
11 | 2 | 473 |
'88SS海外提携テキスタイルトレンド | 12 | 3 | 515 |
2-研究報告 | No. | 月 | 頁 |
---|---|---|---|
天然素材相互の複合化技術に関する研究 | 1 | 4 | 11 |
毛織物におけるたてよろけ装置の開発 | 2 | 5 | 62 |
編地の表面効果に及ぼす編組織の影響 | 3 | 6 | 104 |
特殊染色加工技術(再帰反射加工) | 4 | 7 | 141 |
意匠撚糸製造工程の電子化 | 5 | 8 | 188 |
泡利用による羊毛織物の防縮加工について | 6 | 9 | 236 |
素材分類と消費者感性のデータ化 | 7 | 10 | 289 |
パソコンによる裁断管理 | 8 | 11 | 340 |
光源の違いによるウール染色布の変退色と劣化性 | 10 | 1 | 428 |
標準状態および湿潤状態での摩耗に関する一考察 | 10 | 1 | 435 |
省エネルギー型染色の色合せ自動化技術 その1検索法による色合せの自動化 |
11 | 2 | 477 |
その2近似色の検索 | 11 | 2 | 489 |
8-技術情報の窓 | No. | 月 | 頁 |
---|---|---|---|
技術情報 | 1 | 4 | 46 |
技術情報 | 2 | 5 | 94 |
技術情報 | 3 | 6 | 137 |
技術情報 | 4 | 7 | 180 |
技術情報 | 5 | 8 | 230 |
技術情報 | 6 | 9 | 279 |
技術情報 | 7 | 10 | 322 |
技術情報 | 8 | 11 | 373 |
技術情報 | 9 | 12 | 422 |
技術情報 | 10 | 1 | 469 |
技術情報 | 11 | 2 | 511 |
技術情報 | 12 | 3 | 560 |
9-その他(新設機器紹介) | No. | 月 | 頁 |
---|---|---|---|
随想-国際渦中の転機に思う 尾西毛織工業協同組合 伊藤 隆 | 1 | 4 | 40 |
Circular液流洗絨機実演展示・講習会 | 5 | 8 | 212 |
第35回全国織物競技大会報告 | 8 | 11 | 336 |
ニュークラシックの登場
株式会社シルバーピラミッド 代表取締役 渡辺 晶
3月の中旬から4月の中旬にかけてヨーロッパを回って来た。ここ10年間は、パリに2年半の滞在を含めて年3、4回のぺースでいっているが、最近又ヨー ロッパが面白くなって来た。ニユーヨークファッションに押され気味であったヨーロッパファッションはここ2年ぐらいまえから新しいファッションウェーブを 打ち出してきた。
1960年から1970年にかけてオートクチュール(ジバンシー、カルダン、サンローラン)の全盛時代は終わり、プレタポルテ(モンタナ、ミュグレー、ケンゾー)の時代になった。
しかし1980年代にはいると、パリを中心とするヨーロッパファッションは、しだいに面白味をなくして来た。
この頃から、ニューヨーク(カルバングライン、ラルフローレン、ノーマカマリ)を中心とするアメリカファッションが台頭してきた。
しかし、今ではこれらの一部のデザイナーを除いてニューヨークのメインストリートとデパートメントストアーはヨーロッパのデザイナー達でしめられている。
ヘルシーとか、シンプル イズ ビューティフルという時代は少なくともファッション界においては、もう終わりのようである。
もっと、新しくて、古いウェーブが静かにゆっくりと力強く押し寄せてきている。このニュークラッシックウェーブの起源は、ヨーロッパにしかないものである。
ニューヨークのニューヨークらしさは、異民族または、多民族によるファッションコンセプトのスポーツウェアーである。この分野のファッションコンセプトは、ヨーロッパにはない物として、新鮮さと、エネルギーをあたえている。
このニューヨークファッションに影響をあたえているものの一つとしてロンドンファッションがある。ロンドンのファッションはオールドイングランドの反体制として生まれ育ってきた。
クラッシック音楽への反体制としてビートルズが生まれてきた様に、クラシックやファッションの分野でも若もののカルチャーとして誕生した。
ポディマップをはじめここ3~4年間はバンクイメージとともに、ニューヨークやトウキョウのファッションに電波を発信し続けてきた。
第3次TPO時代の出現とその意味
現代構造研究所 所長 三島 彰
昨85年ほど、年始と年末の表情が対照的だった年は、珍しかったのではなかろうか。年始には、エレガント、フェミニンの風がさわやかに頬を撫で、ファッ ション業界は期待に胸をふくらませていた。永い間低迷していたフェミニンなドレスやブラウスが久々に活況に人り、レディスウェア売場全体の売上げは、好調 に上昇気流に乗っていた。
このことは、必ずしも尾州産地にとっては、無条件に喜べることでなかったかもしれないが、フェミニンとかエレガントとかいう基調は、伝統的な百貨店、専 門店にとっては、永年扱いつけてきた最良のぺースであり、したがってこの動向は、レディスウェアの売上げはもとより、百貨店業界、専門店業界全体の総売上 げを牽引するほどの力をもった。
永い間苦しんできた合繊やプリントにとって、それが干天の慈雨になったことはいうまでもない。
しかし、年後半の秋に入ると、様相は大きく変った。永びいた夏が、秋商戦の起上りに打撃を与えると共に、円高による先行不安が、消費者の買気に冷水を浴びせかけ、マーケット全体が、頭重い商状におちいった。
こうして年末には、一部に年始とは様変りの様相になってしまった。
「ファッション氷河期」などという、ドラスティックな表現まで生まれてくるという、年始とは様変りの様相になってしまった。
ところが一転、86年の正月に入ると、バーゲンが大当りアパレル卸はともかくとして、リテーラーの顔には微笑が戻り、氷河はたらまち解けたかという状況になった。
このように絶間なく変るのが、ファッション産業の持質または宿命なのかもしれないが、とにかく、強度のアレルギーが、業界全体をおおっている。
しかし私たちは、そのような一喜一憂の商況の底に、もっと大きなうねりが流れていることに、注目しなければならないのではなかろうか。
大人っぽさ、フェミニン、高級感の時代 87年春ファッショントレンド
シーズンの風向きは(ファッションコーディネーター 西山 栄子)
世の中が着々と保守化している。7月の選挙にもその傾向が表われており、人々の心の中に大きな変化は望まない、現状にかなり満足しているという兆候を感じ取ることが出来る。
変化がない方がいい、変らなくてもいい、これはファッションにとってかなり深刻な課題である。
何故ならば、ファッションとは、“変化する”という条件があったからこそ、今日までの華やかな世界が作り出されたとも言えるからだ。変らなくてもよいと いう時代にファションが作り出せる付加価値とはいったい何なのか、そんな問題提起が、'87年春夏には出てきそうなのだ。
円高による景気の不安も理由の一つにあげることが出来るが、むしろ、長く続いたファッションの華やかすぎて派手すぎた時代、又、商品が高くなりすぎた現代へのアンチテーゼとしても、その現象は起りそうなのだ。
そういう、あまり嬉しそうではない次の春が、どうなっていくかをいろいろの角度から、又、'86年春夏の売れ筋等から推測してみた。
'86/'87秋冬FDC TEXTILE TREND(MEN'S) 企画の“ひとひねり”が大切 洗練されたスタンダードに注目
ファッションメッセージ
'87AWメンズウェアの方向は、本質的には、“クラシック”といえる。ドラマティックな変化は期待できそうにない現在、ファッション的な刺激はある程度保持しながら、現実的で、趣味の良い、着やすいといった方向に全世界的な規模で動いている。
そのため、変化のための変化から脱して今までに出つくしたものを整理し、それに“ひねり”を利かすことでレベルアップをはかる--新しい成熟の方向--“ツイスト・コンセプト”が浮上してきた。
テーラードなガーメントや表現をかえたスタンダードの復活が目立つが、全体のムードは、よりカジュアルでスポーティで、都会的なフォーマルさよりもカントリー的なフィーリングに調子を合わせている。ヨーロッパでは、過去の時代に関連したモチーフを好んで取り上げる傾向が目立っている。
カラーディレクション
素材の高級志向を反映して、目立つ大胆な色は消えつつある。代って、色とファブリックの微妙なコンビ、色と色の共鳴による新鮮さの表現が、重要な色の役割として浮上してきた。
洗練された艶のある素材が登場し、光沢とマットのコントラストが重視されているため、色と素材の組合せも更に広範囲になっている。
●濃く、リッチまたはくすんだ感じのダークカラー、黒、無煙炭グレイ、カーボンブル-、濃いチェスナット、モーブ、バーガンデイなど……は引続いてフォーマル用として定着しているが、ブライトな色とのコンビで、カジュアル用にまで裾野を拡げている。
●カントリー調紡毛地では、アンティックゴールドと赤系、茶系、オレンジ系とのウオーム・コンビネーションが代表色となっている。
●カジュアル用では、ティープでリッチなクールカラーの表現が新しいカラーリングのポイントになっている。その一つにトーン・オン・トーン、例えばインディゴとライトブルー、ダークグリーンとライトグリーンといった組合せが数多く見られる。
●ロマンチックな色として、ブロンズ感覚の--グレイ、オートミル、ブルー、 キャメル、アクアグリーン、グレイッシュローズなど--が、白の影響をうけ て、パウダー(粉っぽい)感覚に表現されている点、新しい色彩上の進展として注目される。
1987/88年秋冬素材について
株式会社シルバーピラミッド
代表取締役 渡辺 晶87年~88年の秋冬素材を今年と同じでつまらないと考える人々が多くいる。
現に、PARISで開催されたPREMIERE VISIONや、FRANKFURTでのINTER STOFFにおいても、PARIS COLLECTIONSやMILANO COLLECTlON、NEWYORK COLLECTIONSにおいても今年と同じようなテーマづけがされてい る。
PARISやNEWYORKのスタイリスト達と話していても同じ言葉が繰り返し何度も登場してくる。
それは、CLASSICでありTRADITIONALという単語である。彼等がこれらの単語から感じる意味は、ORTHODOXで、SIMPLEであり、又TRADITIONALやCLASSICとも共通する語意を持つものである。
1987~88年は、これらの言葉に、プラスアルファの要因として、ELEGANCEとFEMININEという言葉が、付け加えられた。
これらは、品の良さや、女らしさを強調している言葉であるが、あくまでベースは、TRADITIONALであり、CLASSICである。
彼等達が、考えるCLASSICやTRADITIONALのイメージは、一体何なのであろうか?
それは、考える余地もないくらいに、大英帝国そのものである。ENGLANDやIRELANDの伝統的な品の良さや、シンプル感を示すものである。
カシミヤやフラノ、キャメルやグレーカラ、タータンチェックやレジメンタルストライプどれをとっても大英帝国そのものである。
これらのアイテムに、ELEGANCEやFEMININEという言葉が加わり、より女らしさを求めるようになってきた。
'87年のファッションアパレルを展望する 中・高感度、適価絡商品 企業コンセプト
進む3つの開発 (繊研新聞社 キャップ 山崎 光弘)
'87年ファッション・アパレル業界の行方を解くキーワーズは5つである。
それは
1)新売れ筋
2)高感度・ジャストプライス(ウェルプライス)・ハイアメニティ(好環境売場)
3)ビジネス・コンセプト
4)スポット&リンク(良質な部分のネットワーク)
5)国際オペレーション(グローバルソーシング)
の5つの課題である。
そして、こうしたキーワーズを束ねる戦略の視点として「国際化」、「ダイレクトMD(マーチヤンダイジング)」、「女性の活用」の3つが必要になってきた。
'88SS海外提携テキスタイルトレンド
Ichinomiya Fashion Design Center
FDCでは、'88SS海外提携テキスタイルトレンドを発表した。
この事業は一宮市の委託にもとづいて実施しているもので、2月25日~26日、FDCで展示説明会が行われました。
イントロダクション
'88春夏のルックはシンプルで穏やか。よりプレーンでベーシックな素材のクオリティにもっとも重点が置かれます。もちろん、色も柄も非常にたくさんあ るのですが、このシーズンのメインテ-マは、例えばカジュアルなのか、構築的なルックなのか、流動的な感じなのか、強撚のパキパキした感じなのかといった 様にいかにしてそれぞれのエンドユースに最適なプレーン素材を開発するかというこどです。
ですから、大変よく似た素材が様々に異なるこなし方をします。それは、日常生活の中で生れるもので、ここに紹介する、5つのテーマで表現されています。
全てのテーマは、田舎、庭、自然から洗練されたシティライフまで、人々の生活から引き出されています。ホリディ向けには、孤独で思慮深げに静かな感覚のものとスポーツ指向の若々しく活気にみちたものの両方があります。
天然素材相互の複合化技術に関する研究
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 古田 正明、柴田 善孝、塚原 靖皓)
羊毛に他の天然素材を複合した織物の効率的な企画、設計に寄与するため、製造条件と織物物性の関係を把握した。
1)絹交織織物は絹特有のきしみが加わるが、なめらかさは付与されない。そして、吸湿性は良いが、通気性は悪い。また、摩耗に極めて弱い。
2)麻交織織物はこしやはりが加わるが、しゃりは付与されない。また、通気性や冷感は強いか摩耗に弱く、しわ回復率も劣る。
3)綿交織織物は弾力性に乏しい。そして、吸水時の通気性が悪く、吸湿性も毛織物(改質羊毛)と同程度である。また、摩耗に優れるが、しわ回復性は悪い。
4)綿混紡織物はふくらみに欠けるが、その他は梳毛織物と同様の風合である。そして、吸湿性はあるが、通気性は悪い。また、ピリングができやすく、梳毛織物よりも摩耗しやすい。
5)複合方法では、毛と綿の混紡、交撚、交織の3種類について試験した結果、3者とも風合に差は認められないが、交織織物が圧縮性に欠ける。しかし、交織織物は体温調節性にやや優れる。
6)低密度の織物はふくらみ、しなやかさ、きしみがあるが、こし、はり、しゃりは劣る。高密度の織物は通気性が悪く、吸水時の通気性が極めて悪い。また、低密度の織物は織目スリップに注意を要する。
7)交織織物では、伸度の小さい糸を別ビームに巻いて製織すると、伸びや弾力性が改善され、織物のふくらみが向上する。
はじめに
豊かなモノに囲まれた成熟の時代がおとずれ、生活意識や消費動向が量から質へと変化するにつれて、本物指向、天然指向がクローズアップされてきた。
天然繊維は化合成繊維に比べて機能性では劣ることも多いが、化合成繊維ではどうしても真似することのできない優雅な風合、神秘的な落着き、健康に適合した肌触り、吸湿性などの優れた特性をもっている。
しかし、これらを消費者が期待する織物として供給するために、天然素材相互の複合化に寄せられる期待は大きい。このため、天然素材相互の複合条件と織物 特性の関係を定量的に把握し、お互いの長所が発揮できる織物を企画していかなければならない。
毛織機におけるたてよろけ装置の開発
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 河村 博司、安藤 正好、荒井 清)
織機の多能化を図るため、よこよろけ装置に引き続きたてよろけ装置を開発し、製織試験を実施した。
開発した装置は、よろけ筬の上下動の駆動源として、油圧シリンダー、そのコントロールにパルスモーターを用い、デジタルICによるシーケンス制御するものである。
また、よろける糸とストレートの糸の織込長に差があるため、二重ビームによる経糸送り出し法が望ましい。さらに筬の移動量が少ないため、よろけ筬の設計が重要となる。
はじめに
消費者嗜好が複雑で、個性化し、流行が激しく変化する現状では、新規性があり消費者ニーズに合致した織物を、いかに適確・速やかに市場に供給できるかが、織物生産業者に課せられた課題である。
このために、現有織機の多能化をはかり、新規性のある織物を開発することを目的とし、昭和59年度に、柴田、古田らにより、よこよろけ装置、変形サッカー装置を開発し、よこよろけ織物、市松サッカー等の開発見本を発表した。
ここでは、昨年度同様、現有織機の多能化をはかり、新規性のある織物を開発することを目的とし、当尾州産地で、多数稼動しているションヘル型織機を一部改造し、織物の経糸方向に変化を付与する、たてよろけ織物をつくるための装置を開発し、試作研究を行なった。
編地の表面効果に及ぼす編組織の影響
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 佐藤 久、鷲野 鋭之進、塚原 靖晧)
編地の表面効果の評価方法と、タック又はウェルト、糸の断面形状と編地の表面効果の関係を検討した。その結果、
(1)川端式風合試験機等を利用して、編地の表面変化を推測することができた。
(2)タックループは、タックの直後に形成されたニットループにも大きな影響を及ぼすが、ウェルトでは、直後のニットループには影響を及ぼさない。
(3)タックをかの子状に配した場合、編地外観の変化は2×2かの子の方が大きく、編地表面の凹凸はシングル編地では1×1かのこが、ダブル編地では2×2かのこが大きくなった。
(4)糸の断面形状が編地密度、厚さなどに及ぼす影響は小さく、むしろ糸の伸縮性が大きな影響を及ぼすことが分った。
はじめに
編地の多様化により、種々の表面効果のある編地が開発されている。表面効果を付与するには、使用素材の選択及びその組み合せ方法、編組織、色調、仕上方法などが考えられる。
我々は昭和58年度では、使用素材の多様化に対応して、糸物性と編成性、編地物性の関係について検討し、編成性、編地物性に対し糸の伸長特性、摩擦持性、曲げ特性の影響が大きいことを解明した。
続いて昭和59年度では、異番手糸交編編地、フィラメント・毛交編編地の交編条件と編地品質の関係を解明した。
一般に、編組織と表面効果の関係は、組織図と編地見本と1対1の対応で把握されていることが多く、その関係は一般に経験と勘に依るところが多いのが実情 である。このため、新規編地の開発には多くの試行錯誤が必要となっている。特に、最近の使用素材の多様化によって、この傾向は一層顕著となっており短サイ クル生産体制では生産効率の低下を招く恐れがある。
そこで、編地の多様化を効率よく進める上では、素材、編組織と表面効果の関係を系統的に研究する必要がある。
しかしながら、編地の表面効果の重要性は叫ばれているものの編地の表面効果を客親的に評価する方法は、未だ十分検討されていないのが実情である。
また、よこ編組織は多岐にわたるが、基本的にはニット、タック、ウェルトの組み合せから成り立っている。特に、表面効果編地に対してはタック、ウェルトをいかに使用するかが重要である。
本報では、既存の試験機を使用し編地の表面効果を評価する方法を検討し、それによこ平編、ダブルピケ組織にタック、ウェルトの連続数を変化させた編組織又は糸の断面形状と編地の表面効果の関係について検討を行った
特殊染色加工技術(再帰反射加工)
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 羽田野 早苗、吉村 裕、横山 繁)
布に光沢を付与する1つの方法として、再帰反射加工技術を取り上げて、これの羊毛織物への適用について検討した。
羊毛サージ、モスリンを用いて捺染法によりオ一プン、クローズド両タイプの再帰反射加工布を作製するために、ガラスビーズの屈折率の違い、ガラスビーズ を固着させる場合の生地の形態、ガラスビーズを覆う樹脂の厚さと再帰反射性の関係について試験した結果、次のことが判った。
オープンタイプ用の準高屈折率ガラスビーズの場合、樹脂中のガラスビーズ含有量が50%(wt)で水で粘度を10,000cpsに下げたものを生地に塗布させたとき、再帰反射性能が高かった。
又、クローズトタイプ用の高屈折率ガラスビ-ズの場合、生地表面に酸化チタンを含む樹脂を塗布したものにガラスビーズ含有量50%(wt)を含む樹脂をそのまま塗布させたとき再帰反帰性能が高かった。
しかし、このクローズドタイプの加工品はオープンタイプのものに比べて再帰反射性能は良くなかった。
はじめに
消費者ニーズの多様化、個性化に対応するための特殊染色仕上加工に対する技術開発が強く要望されている。
この特殊染色仕上加工には、色、表面変化を主体とした感性の迫求と快適性、安全性、耐久性を主体とした機能性の追求との2つに区分される。この中で再帰 反射加工品は暗視野時に受けた光を鋭く反射させて、被覆加工体を浮彫にして、その存在を視覚に訴える機能性の加工で、道路標識や安全作業服等に利用されて きたが、最近、当加工に様々な彩色がされ、風合も改質されるに従い、衣料用途にも適用され始めている。
本研究では、織物に光沢を付与する1つの技術として再帰反射加工を取り上げて当加工の羊毛織物への適用について検討した。
意匠撚糸製造工程の電子化
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 河村 博司、堀田 好幸、森 彬子)
電磁クラッチ式意匠撚糸機を使って、
・異種スライバー挿入
・パソコンによる意匠パターンの制御を行う装置等を開発した。
「異種スラィバー挿入」については、既存撚糸機の1錘分のスペースで、2種類のスラィバーをランダムに挿入できる装置を開発し、意匠糸も3,000~4,000rpmで試作した。その結果、実用性の高い機構であると考えられる。
「パソコン制御」については、16ビットカウンターを主とするインターフェースを作り、BASICコンパイラとアセンブラ言語を使い制御用ソフトの開発を行った。初期の目標は達成できたが、高価・耐ノイズ信頼性に関しての課題は残っている。
また、市販データベースソフトを使い、意匠撚糸データ管理ソフトを開発した、これは意匠糸試作に当り、過去のデータを参考にし、その開発時間を短縮化しようとするものである。
まえがき
織物・ニットの新商品開発に際し、その差別化を行う手段として、素材(原料・撚糸など)、色柄・組織、加工方法などがある。多品種少量短サイクル生産形 態において、最も即応可能なものは「色柄・組織」ということになるが、差別化という視点から眺めた場合、他社との有意性を持続することは難しい。
そして、この差別化の有意性を持続しようとする時、一つの手段としてハードウェア(特殊装置)による方法がある。
このような見方から、意匠撚糸機につぎの1、2の機能を付与する装置を開発した。また、意匠撚糸試作に際して、未経験者でも試作データ(使用糸番手、素 材、送り比、撚数等)が容易に決めれるように、過去の意匠撚糸データを保有し、検索できるソフトウェアも開発した。
泡利用による羊毛織物の防縮加工について
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 上原 政美、坂川 登)
起抱剤ノイフォーマF106 1.5%、防縮加工剤シンタープレットBAP4.5%、インプラニールDLH4.5%、重炭酸ナトリウム0.3%の加工剤 を、発泡倍率15倍、ミキシングヘッド回転数900rpmで起泡すれば、塗布に必要な半安定な泡を形成することができる。
この泡を、直接付与方式の水平マングル法及びアプリケータ法(スリットノズル法)により、ウェットピックアップ率30~35%で羊毛織物に塗布すれば、面積フェルト収縮率が3%以下の防縮加工効果が得られる。
水平マングル法による防縮加工効果は、アプリケータ法による効果よりも大きい。
はじめに
染色整理業は、繊維工業の中では水と熱エネルギーを多量に消費する業種である。オイルショック以降、ボイラーの燃焼管埋・蒸気配管の保温を始めとする1 次側の省エネルギー対策はもとより、染色機の低浴比化・水洗機の節水化などハード面や、低温染色技術・ラピッド染色技術などソフト面の省エネルギー対策が 積極的に実施されてきた。
その中で最も効果的な省エネルギー対策の1つとして、加工液量の低減化があげられる。その具体的な方法として低浴比化と液量の低付与があり、低浴比機械の開発は順調に進んでいる。
一方、液量の低付与についても種々の方法が検討されてきたが、泡利用を除く他の方法は、加工剤を液状のまま少量織物に塗布する方法であり、均一塗布は非常に因難であった。
これに対して泡加工法は、加工剤液中に空気を吹き込んで見掛けの体積を大きくするので、他の方法と比べて均一塗布が比較的容易である。
素材分類と消費者感性のデータ化
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 伊藤 通敏、柴田 晃伸)
商品企画における生産者側の素材分類の枠組みから選んだ18種類の素材について、SI法による感覚調査をもとに、因子分析法により、人が素材に対して抱く基本的なイメージ尺度4種類を抽出し、それに基いて素材を8タイプに分類することを試みた。
はじめに
最近のファッションは、本質的なものの見直しや本物志向等の傾向から、素材への開心が高まっている。
商品企画において、消費者ニーズに適合した素材を市場に投入するためには、素材を消費者の要求するイメージや、企画イメージと結び付きやすい形で分類整理しておく必要がある。
本研究はこのような目的のもとに、作り手側の素材分類の現状と、消費者が素材から受けるイメージについて調査し、それに基く素材分類法を検討したものである。
パソコンによる裁断管理
はじめに (愛知県尾張繊維技術センター 三谷 和弘、三輪 幸弘、松井 弘)
縫製工場の裁断現場では、受注先からの色・サイズ、毎の注文枚数を満足するよう、延反及び型入れ方法を検討し、裁断を行っている。
しかし、生地によっては、巾或いは長さ不足、傷などによって指定枚数どうり裁断できない場合がある。このとき、裁断枚数を注文書の色・サイズ別の枚数比率にできるだけ近くなるよう調整している。
このような処理には複雑な集計計算を行わねばならず計算間違いを起す可能性もあり、何らかの合理化が求められていた。特に紳士スラックス縫製工場ではサイズ数が多いため調整に手間がかかっていた。
そこで、パソコン利用によりこの処理を行うためのプログラムを開発した。
なお、調整後の裁断枚数から、ファスナー芯地、ミシン糸等の付属の所要量を算出し、発注指示へ結びつける処理も付加させた。
光源の違いによるウール染色布の変退色と劣化性
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 大津 吉秋、野田 栄造、野田 和彦)
耐光堅ろう度試験の光源としては、日光、キセノンアーク燈光、カーボンアーク燈光が、JISで規定されている。これら3光源によるウール染色布の退色性と劣化性について検討した。
変退色および引張強力・伸度、引裂強力におよぼす光源の影響は、3光源の内でカーボンアーク燈光が最も大きく、キセノンアーク燈光は日光に類似の変退、劣化性を示した。
引張強力、引裂強力では、3光源とも引裂強力の低下が顕著に見られ、露光時間との相関性も高い。
はじめに
繊維製品の試験は、多くの場合JIS法により実施されているが、JIS法が主として単独な作業に対する試験法であることから、消費サイクルの過程で起る 現象を把握する試験としてはまだ不充分な面も多い。また、試験法の内には一つの試験に対して複数の方法が規定されている場合も多く、このような試験につい ては結果の判断も容易でない。
例えば、繊維製品の重要な品質要求項目の一つである染色布の耐光堅ろう度試験では、光源とか試験機間の互換性の問題あるいは、実用性能試験としてのサイクル試験の必要性などが留意すべき点と考える。
以上のような観点から耐光堅ろう度評価技術の問題としてウール染色布を取り上げ、単独の耐光試験、光と汗による複合試験および繰返し露光による試験を、 日光、カーボンアーク燈光、キセノンアーク燈光の3種類の光源で実施し、光源の違いによる染色布の変退色と劣化性について検討した。
標準状態および湿潤状態での摩耗に関する一考察
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 野田 栄造、大津 吉秋、野田 和彦)
ユニバーサル摩耗、アクセレロータ摩耗、マーチンデール摩耗の試験を標準状態および湿潤状態のもとで、毛、綿、ポリエステル織物について行い、耐摩耗性に関して検討を加えた。
その結果、アクセレロータ、マーチンデール摩耗試験では、湿潤状態の方が標準状態よりも耐摩耗性は少なくなるが、ユニバーサル摩耗試験では、綿、ポリエステルの場合、湿潤状態の方が標準状態よりも摩耗回数が多くなった。
アクセレロータ摩耗では、毛の場合、縮絨の問題が発生し、湿潤状態での摩耗には適さないことがわかった。
はじめに
織物の摩耗は、消費性能を考えるとき、標準状態(通常の着用状態)における摩耗と湿潤状態(汗をかいてぬれた状態)における摩耗等が考えられる。
また摩耗強さを測定する方法には、織物が破れるまでの摩耗回数を測定するもの、試験前後の試料重量から摩耗減少率を測定するもの、織物を構成している糸が切断するまでの摩耗回数(エンドポイント)を計るなどいくつかの方法がある。
ここではユニバーサル摩耗試験機、アクセレロータ摩耗試験機、マーチンデール摩耗試験機を用い、標準状態並びに湿潤状態における耐摩耗性を測定し、湿潤状態における耐摩耗性が標準状態に比べどのように変化するかを調べるとともに各試験法間の関係等について検討を加えたのでそれらの結果について報告する。
省エネルギー型染色の色合せ自動化技術 その1 検索法による色合せの自動化
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 堀田 好幸、荒井 清)
パソコンによる染色加工情報のデータベース化と検索時間の短縮化方法について研究を行った。
1)色合せに関する情報のデータベース化は、各染工場独自のデータ分類法が自由に設定できる。
2)測色値のデータベース化により、近似色検索及び色差計算が行える。
3)検索では、必要なデータのある付近までジャンプしながらデータの照合を行うソフト対応としたため、高速化処理を可能にした。1000×n件のデータから検索する場合には、この高速化処理をしない方法と比較すると、15~20×n倍に時間の短縮ができる。
はじめに
近年、染色加工業においてもファッションニーズの多様化、短サイクル化に対応するために、短時間に正確な色合せを行う自動化技術に大きな関心が寄せられている。
特に、低価格で高性能なパソコンの普及が、これらの技術をより現実のものとしたため、中小染工場にも色合せ自動化機器の導入が進められている。
しかしながら、現状を見れば、染工場においてCCM、CCSを有効に使いこなすためには、まず加工条件等の染色技術情報を整理し、コンピュータ処理が可能となる情報ファイルを構築することから始める必要があろう。
本報では、これらの状況を考慮して、染色加工情報のデータベース化及び高速検索手法について研究を行った。
省エネルギー型染色の色合せ自動化技術 その2 近似色の検索
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 上原 政美)
近似色検索は、多数ある色見本の中から目標色に最も近似した色見本を、L*、a*、b*による色彩値によって検索する方法である。
この近似色検索に用いる染色データは、染料の相互作用や混紡品の汚染などの現象を包含しでおり、貴重なデータである。また、近似色検索により得られるデータは、CCMにおける1回分の試染に相当する。作成した近似色検索プログラムは次の機能を備えている。
色見本データは、L*、a*、b*の項目で3重ソートして、インデックスファイルを作る。このファイルを有効に利用して、多数のデータの中から2進検索 法により、目標色に近似する色見本を検索する。また、近似する色見本データが得られなければ修正計算を行い、目標色とのズレが最小の染色処方を算出する。
はじめに
消費者ニーズの多様化に伴う多品種少量生産及び短納期化が進むなかで、それに対処するために工程管理及び品質管埋の強化が要請されている。
また、近年のコンピュータ技術の急速な発達に伴って、LA化やFA化への関心は非常に高まっている。染色整理業でのLAへ化の一つの方法として、コンピュータを利用した色合せ技術がある。
色合せ技術には、コンピュータ・カラーマッチング(CCM)と、コンピュータ・カラーサーチ(CCS)とに大別できる。検索(CCS)は、CCMにない長所を備えており、中小染色業者の期待は大きい。
CCMとCCSの比較
染色整理業者はCCMを積極的に取り入れようとしているが、今一歩導入に踏み切れないでいる中小染色業者が多い。その理由の一つには、CCM結果にそれ 程の信頼感がないためである。その理由は、CCM精度に及ぼす要因が多いからである。CCM精度を低下させる要因は次のようである。
1)染料(母液作成時の粉体又は母液採取)の秤量誤差、被染物の秤量誤差、素材ロット違いなど
2)染料の相互作用、染料の選択、組合せの適否、染色技術の再現性など
3)測色器の精度、蛍光成分の有無、微小面積測定、裏透けによる測定誤差、試料形態の違いによる測定誤差
4)CCM理論の精度
これらの諸要因は、1)2)のように解決できる要因もあれば、3)のように困難な要因のものもある。
CCMは、染料基礎データから染料濃度を予測する手法でゼロからのスタートであるのに対して、検索は過去に自分達が染色して作った貴重な実績データを有効に利用する方法である。