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テキスタイル&ファッション誌(メールマガジン)バックナンバー
テキスタイル&ファッション Vol.2 (1985)
Vol.2/No.1~12
(1985年4月号~1986年3月号)
1-特集 | No. | 月 | 頁 |
---|---|---|---|
'86春夏FDC TEXTILE TREND(MEN'S) | 1 | 4 | 3 |
海鳴りと潮の音を求めて | 1 | 4 | 12 |
'86春夏FDC TEXTILE TREND(LADIES') | 2 | 5 | 42 |
'85/'86秋冬ロンドンコレクション(IWSウール通信) '86年春夏ドーチェスター・ファブリックショー |
3 | 6 | 104 |
新しい商品企画開発の方向性を探る | 4 | 7 | 131 |
FDCファッショントレンド | 8 | 11 | 313 |
'86/'87秋冬FDCファッショントレンド(レディス) | 9 | 12 | 358 |
ファッション・サクセス来季も継続(IWSウール通信) 来秋冬IWSウール・プレビュー |
9 | 12 | 365 |
分衆化時代におけるテキスタイル産地の対応戦略 | 10 | 1 | 397 |
'86/'87AW IWFOトレンドコレクシヨン | 10 | 1 | 407 |
'87SSカラーフォカリスト | 10 | 10 | 409 |
デザイナー&キャラクターの現状と今後 | 11 | 2 | 445 |
'87IWSインテリア流行予測(IWSウール通信) | 11 | 2 | 450 |
フランスのクールウールファッション(IWSウール通信) | 12 | 3 | 500 |
IWSファブリックカラーフォーカスト発表(IWSウール通信) | 12 | 3 | 501 |
2-研究報告 | No. | 月 | 頁 |
---|---|---|---|
毛を中心とした複合繊維の染色技術(その1) ウール・プロミックス複合素材の染色 |
1 | 4 | 15 |
毛を中心とした複合繊維の染色技術(その2) 差別化加工、高付加価値化工に関する研究 |
1 | 4 | 25 |
織機の多能化技術(その1)変形サッカーの製織方法 | 2 | 5 | 50 |
織機の多能化技術(その2)よろけ織物の製織方法 | 2 | 5 | 58 |
縫目スリップとその対策について | 3 | 6 | 87 |
編地品質に及ぼす編成条件の影響 | 4 | 7 | 136 |
省エネルギー型染色の色合せ自動化技術 | 5 | 8 | 176 |
複合素材織物の物性と風合改良に関する研究 | 6 | 9 | 219 |
具象柄の分類・検索技術 | 7 | 10 | 375 |
泡染色仕上の解析 | 9 | 12 | 375 |
獣毛の鑑別・定量と各種繊維の損傷調査 | 10 | 1 | 41 |
6-調査報告 | No. | 月 | 頁 |
---|---|---|---|
愛知県繊維産業業際化フィージビリティ調査 | 3 | 6 | 118 |
最近の依頼試験、所内相談について | 12 | 3 | 487 |
8-技術情報の窓 | No. | 月 | 頁 |
---|---|---|---|
技術情報 | 1 | 4 | 39 |
技術情報 | 2 | 5 | 85 |
技術情報 | 3 | 6 | 129 |
技術情報 | 4 | 7 | 172 |
技術情報 | 5 | 8 | 216 |
技術情報 | 6 | 9 | 259 |
技術情報 | 7 | 10 | 305 |
技術情報 | 8 | 11 | 353 |
技術情報 | 9 | 12 | 391 |
技術情報 | 10 | 1 | 441 |
技術情報 | 11 | 2 | 483 |
技術情報 | 12 | 3 | 530 |
海鳴りと潮の香を求めて
川岸から海岸へ (現代構造研究所 所長 三島 彰)
繊維産業を川にたとえて、川上、川中、川下の問題をとりあげる議論が、ひとしきり盛んに行われた。ところで繊維産業という川はかなりの荒れ川であって、必ずしも秩序整然と流れてはいない。あの議論が行われた後も、川の様相はかなり変ってきている。
川上には至るところに大きなダムがつくられて、従来の川の流れとはちがった別の事業が拡大一途をたどっている。一方川下は、沢山の分流が生まれて、河口一帯は複雑な分流が併行したり、交叉したりして流れる巨大な三角洲の状況が生まれている。そこで間題なのは川中だ。
川中は、どんどん川下に迫り、できることなら、川中と川下の差をなくし、河口の三角洲と一体化する方向に動いているように思われる。
本来いって、川の形で仕事を進めることには問題がある。この川の使命が、消費マーケットという母なる大海へ水を送りこむことにあるのだとすれば、海に憧れてはいてもその海を知らず、源流の水を使いながらその源流を知らず、その中間にあって仕事を進めているのは、何とも心もとない話である。
できれば海岸に治って横並びに配置し、同じ海に触れながら、機能分坦をするのが理想だ、川岸から海岸へ下りたいという川中の志は、密林におおわれた川岸から、沃野拡がる海岸をめざした縄文時代から弥生時代への歴史の流れのように、もっともであり、自然なことだと思うがどうだろう。
アメリカのワシントン・ポスト紙の連載をまとめて、「北米の9つの国」という本が出版されている。邦訳されていないのが残念だが、その内容はなかなか興味深い。北米はアメリカ、カナダ、メキシコの3国で構成されているはずなのだが、そんな古い常識にとらえられていては、いまの北米は理解できないと著書はいう。
現実は、そのような国境とは関係なしに、北米は、それぞれ体質の異なった9つの国で成っ立っているというのだ。
たとえば日本に近い太平洋岸でいえば、カリフォルニア州の南半分は、メキシコとメキシコ国境添いの各州と1つになって、メキアメリカ、つまりメキシコ・アメリカという国になっていて、その首都はロサンゼルスということになる。
一方カリフォルニアの北半分は、これとはまったく異なった体質のエコトピア、つまりエコノミック・ユートピアという国で、首都はサンフランシスコに定められている。
この本がいいたいことは、こういうことなのだ。情報が発展し、交通が発達し、流通が強化され、高等教育が普及すれば、古い地球差は解消してゆく、そこに新しい産業が勃興し、また古い産業の体質脱皮も進行し、そのような経済変化が社会変化にまで浸透してゆくと、そこに新しい地域体質が生まれ、新しい地域差が生まれてくる。
その結果、従来とは異なった実質の国境が生まれ、新しい国が誕生する。古い地図を見つめていては、現実はつかめない。地図を忘れよ。著者はそう訴える。
川中論にしても同じことだ。産地論も同様だ。古い、川中島の合戦の講釈に耳を傾けていては、現実はつかめないし、古い現実を乗り越えて、新しい現実を築くことはできない。
川は変る。川中も変る。地図を忘れよ。古い地図を乗り越えよ。アノリカが変ってゆくように日本の地図も刻々に塗り変えられている。
素材が強カなメッセージを運んだ '85/'86秋冬ロンドンコレクション
クラフトアートから新しい息吹き
ロンドンコレクンョンは「折衷主義ドレッシング」。英国のトラディショナルな着こなしとアバンギャルドがミックスしたロンドンファッションは、ここ2年で実力をつけた若手デザイナーが育ってきている。
'85/'86年秋冬物コレクションにはダイアナ妃も男物仕立てのプリント地のガウンという最新流行で姿を見せられ、ロンドンファッションの意気を盛リ上げた。
ロンドンコレクションでの一番の話題はプリントをはじめとする素材の新鮮さ。この何シーズンか続いた無地やモノトーンカラーの先染め地に代わり、色が渦巻くようなプリントや、色使いやテキスチャーで表面効果を出したものがふんだんに使われている。
素材はどれも奇抜なアイデアを職人芸的なアーティスティックな手法で作りあげたものが多く、従来の英国のテキスタイル業界から一歩はみ出した新しい息吹きが感じられる。
いつものようにアバンギャルドの魅力で溢れたキャサリン・ハムネットのコレクションには溢れるほどのレース。ジョン・マッキンタイヤーの60年代を彷彿とさせるオーガンジーやエンブロイダリー、ウールジャカードやエンボス素材。ボディ・マップの魔法の絨毯のモチーフ柄。
イングリッシュエキセントリックのプリントのレイヤードや編みこみニット。大御所ペティ・ジャクソンの手描きプリントとプラッド柄の組合せ。デザイナーたちは大量生産にはない手作りのおもしろさや楽しさをコレクションに散りばめているようである。
生活者の意識の変化とマーケットの質的変化 -新しい商品企画開発の方向性を探る-
株式会社コーノ・ファッション・プランニング 代表取締役 香野 和美
茨城県の筑波では科学万博がいまやたけなわ。丁度15年前、昭和45年は大阪で万博が開かれた。
「ブレザーを着て万博へ、セーターでは軽すぎます。スーツでは堅すぎます」これはその年のはじめ頃の伊勢丹のキャンペーンである。同じようなブレザーを皆が着た年である。
また同じ年、ある大手自動車メーカーが新車の発表コマーシャルに「隣の車が小さくみえます」とぶち上げ大成功した。この現象は今は昔、二度と起こらないマーケットになってしまった。
「成熟マーケットの到来」「感性マーケット」「大衆化社会に対する分衆化、小衆化」今また新しい言葉が生れた。そのいずれも売れない時代、物が売りにくいマーケットの拡がりを象徴している言葉である。
成熟マーケット時代を迎え、売れないマーケットを嘆くのは、確かに市場の量的拡大がとまったことは事実で、あろうが、それにもまして、市場や生活者の欲求の質的変化に対する的確なとらえ方が不充分なことに起因する部分も極めて大きそうである。
ファッション・サクセス来季も継続 来秋冬IWSウール・プレビュー
国際羊毛事務局ロンドン本部は1986/87ファブリック・フォーキャストに統いて、メンズウェアおよびウィメンズウェアのファブリック・プレビューをまとめた。
これは世界各国の有力服地業者の同シーズン向け企画を収集・分析したもので、メンズウェアではカジュアルウェア市場への対応が著しく進み、またウィメンズウェアでは表面感覚、目付け、色使い、光沢などざまざまな工夫による新しいバラエティの拡がりが目立っている。
この秋冬、小売店頭ほウール・オン・パレードの感がするが、そのファッション・サクセスは来年秋冬にも引き継がれていくことが確定的といえる。
メンズウェア1986/87秋冬向けメンズウエア・ファブリックでは、ウールの組織、表面効果、目付けのバラエティが一層増えてきている。これらの新し いメンズウェア・ファブリック・コレクションは、今年秋冬・来年春夏のウール人気を承けて、メーカー側のウール対応姿勢がさらに高まっていることを裏付け ている。
ウールは伝統的、クラシックなメンズウェアでは抜群の縫いやすさや美しいラインをもたらすドレープ性によって、ひきつづきトップ素材の位置を保っている が、最近ではよりカジュアルな分野でも快適な着心地が約束される繊維として注目され、86/87秋冬シーズンにはイージージャケット、セパレートスラック ス、キャバン、さらにはツィーディーなコートまで、カジュアル・ウール企画が大幅に増えている。
最近のメンズウェアの重要トレンドのひとつは「ソフトな手ざわり」である。また同時に「軽さ」の追求もみられ、すべてのレンジで秋冬物といえども、より軽い目付けの生地が目につくようになった。
「ソフトで軽く、着やすい」という点では織物だけでなく、ニットウュアの役割りも高まっており、織物のジャケットとニットウェアの組合せも増加している。
1986/87秋冬のメンズウェア・ウール服地はデザインが純化し、色目もおだやかに抑制されているが、ヤング・マーケット向けではブライトな色と大担な柄でより生き生きしたアクセントをつけているものもある。
しかし全体的には85/86秋冬物でやや誇張されていた特徴がトーンダウンしている感じだ。
分衆化時代におけるテキスタイル産地の対応戦略
自主マーチャンダイジング力の強化
IWSマテリアル9グループは7月26日、27日の両日、新宿NSビルで85年春夏マテリアル9ファブリックコンベンションを開催した。
両日とも午前11時、午後2時半、4時半の各3回、パリIWFO制作の春夏プロモーション・コレクションがショー形式で紹介された。
85年春夏シーズンにむけて新鮮で涼し気なクールウール素材が注目を集めているが、IWFO制作のプロモーション・コレクションでは、世界の主要なテキスタイルメーカーの魅力的なウール素材を使って、若々しいさわやかなウールファッションを提案している。
素材はドライで涼感に溢れたポプリン、ギャバジン、クレープ、クレポン、ボイル、ガーゼ、軽量サージ、ピケ、トワル。柄はヘザードチェック、シャツストライプ、紳士服地のデザイン、及び表面効果がくっきり出たものなど。
色は2つのグループに分れている。ニュートラルカラーと洗練されたパステルの各色など明るく軽いカラーレンジと、白でアクセントがつけられた、黒、ネイビー、茶、グレイなどのダークカラーのグループ。
シルエットは、前衛的なデザインでは長くまとめられており、クラシックな服ではひざ丈。85年春夏シーズンに最も新しいシルエットは長くほっそりとしたラインにスリムなウェストと細いヒップになめらかな曲線を出した形。
注目したいデザインは、シュミーズコート。
'86/'87秋冬lWFOトレンド・コレクション “フリースタイル・ベーシック”をテーマに
国際羊毛事務局では'86/'87秋冬IWFO制作トレンド・コレクションを世界各国で発表している。テーマは“フリースタイル・ベーシック”。
オーセンティックでベーシックな服をどのように自由に着心地良く着こなすか、を提案している。
フランス、イギリス、アメリカの5人の才能に溢れた若手デザイナーが国際羊毛事務局パリ・ファッション・オフィスのコンセプトのもとにデザイン・構成したコレクションは、ファッションをより直接的に率直なアプローチをかけ、オーセンティックな服への回帰を見せている。
オーセンティック-本物の服というのはある種の伝統を感じさせながらクラシックということではなく、デザィナーが控えめなリッチ感をベーシック服に与える何かを付け加えることができる服のことである。
ウール素材は、ジュニアから活動的でモダンな女性までが毎日の生活の中で気ままに着ることのできるもの。
シルエットはシンプルで体のラインによつ近づけているものの、貧弱さを感じさせたりするものではなく、コンフォートが何といっても重視されている。
カラーもシンプリシティとモデレーションのテーマを反映している。ダークな「メタリック」トーンの黒、グレイ、ネイビーが重要なカラーであり、これに リッチな「オビュレント」のグループや、鮮やかな「エクスプローシプ」、酸味のある「カートゥーン」のグループがアクセントをつけている。
コレクションで使われている純毛素材はトラディショナルなラインの方向へとむかっており、オーセンティックな紳士物素材も含まれている。
たとえばドニゴールツィードやクラシックなピンストライプなど。ウールジャージーは依然としてブームが続いているが、トータルで上から下まで、という使い方ではなく、布帛素材とのコントラストやミキスチャーが強調されている。
ディテールで注目したいのがライニングの重要性。機能的でファンタスティック、キルトあり、サテンやウールプリントありで表地との対比が楽しく構成されている。
'86年のファツションアパレルを展望する 激戦続く直営・FC型DCアパレル大手も続々市場参入へ
織研新聞社 東京編集部 記者 山崎 光弘
80年代になって、激動を続けていたファッションアパレル界もようやく方向が定まってきた。
その方向を一言で言えば、従来の百貨店、専門店、量販店といった既存の小売店に、“卸販売”する機能プラス、自ら小売機能を持ち、消費者にダイレクト販売し、流通ノウハウを築き上げる手法である。全ては、こうした“アパレル小売”への流通変化に集約されそうだ。
D&C(テザイナー・キャラクタ一)化と呼ばれる個性重視の商品開発の方向も、つまるところは、「作り手が売場を持っていかに早く消費者に手渡し出来るか」(上田稔夫ファィブフォックス社長)という変化の中で本格化してきた。
以下東京アパレルメ-カーを中心とするファッションアパレルの動向である。
DCアパレルに3つのグループ
繊研新聞1月1日付に恒例の「アパレル企業ランキング」調査が発表された。売上高ベストテンはレナウンの2,124億円を筆頭に、樫山グンゼ、ワールド、ワコール、イトキン、デサント、ナイガイ(前内外編物)、三陽商会、小杉産業と続いている。
このうち、1千億円を超える売上高はイトキンまでの6社。デサント、ナイガイが、三陽商会が800億円台、小杉産業が782億円で肉薄している。
色の楽しさ、ふんだんに '87年IWSインテリア流行予測
国際羊毛事務局(IWS)は英国イルクレーの開発センターに設けたデザインユニットで毎年1年先のインテリア流行を予測し、これを製品化してトレンド・コレクションの形で世界各国に向けて発表している。
IWSインテリア・テキスタイル・スタイリング・サービスとして作り出されるこのコレクションは単一機関の発表するものとしては世界最大の規模として知られている。
第14回を迎える1987年向けのトレンド・コレクションは1月8日西独フラングフルトのハイムテックスで、発表されたが、「カラー・マジック」をテーマに、カーペット、椅子張地、毛布の各分野で「色の楽しさ」をふんだんに盛り込んでいる。
点描のように散りばめた微妙な色合い、色のごった煮といえそうなメランジや、ツィード、さらにはテキスチャーとあいまったトーン・オン・トーンの幾何学柄などが1987年にIWSが予測するインテリアのスタイルだ。
「カラー・マジック」に使われているトレンド・カラーは全部で25色。ことしは過去13回のスタィリング・サービスに使われた色を上回っているが、インテリア・テキスタイルでもそれだけ色の持つ重要性が'87年にはさらに高まって来るとみられるからである。
中間色の代表色としてのグレーはひきつづき大切だが、'87年にはより濃く鮮明な『色』が主役になって表る。
IWSの予測色は地色としての3通りのチャコール・グレーに、4色の対比的基本色、18色の鮮やかな補色で構成されている。
これらの豊富な色合いを巧みに融合させてエレガントでミステリアスな雰囲気をかもし出すのが'87年インテリアのポイントである。けばけばしい色使いは、ツィードと毛布を除いて姿を消している。
フランスのクールウールファッション シンプルなセクシーライン求めて
'86年春夏シーズン、ファッショントレンドはセクシーに女っぽさを強調したラインヘと方向転換している。といっても、男性の服の合理性、機能性、着やす さを経験した女性たちが求めるセクシーラインはシンプルであることに帰結する。そこで問題なのがカッティングと素材。体につかず離れずでいながら、ボディコンシャス(体のラインを充分意識させること)余分なものを削り落して簡単でありながら、エレガンスを感しさせること。今までとは違った意味での女らしさ、女らしい着こなしが求められている。
国際羊毛事務局フランス支部よりの今春夏シーズンのクールウール・ファッションをお届けする。
スーツはテイラードの固い感覚から流れるような素材を使ったソフトなラインへと変った。パンツはストレートラインでくるぶしまでの丈。上にはおるジャ ケットはシャツのような着こなしのできるものでありながら、ラインをきっちりと出し崩しすぎないことが基本。体のラインに近いシルエットが出されている。 形としてはネールジャケットとパンツのスタィルがイメージされる。
スカートはパレオのように巻きつけたり結んだりした形で、これにあわすジャケットはやはり裏なしのシャツタイプ。肩を丸くなめらかなラインを出している。
毛を中心とした複合繊維の染色技術 その1 ウール・プロミックス複合素材の染色
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 羽田野 早苗、岡本 徳隆、吉村 裕)
複合素材として、プロミックス、ウール複合品を取り上げ、それぞれの染色特性を把握すると共に、両素材の同色染色について検討した。
その結果、単一の染料部属の染料を用いて両素材間の染着量の差を無くすることは困難であり、この条件下での同色染色はできなかった。しかし、カチオン染料を用いれば、プロミックス側の色濃度を補うことによって両者をほぼ同色に染色できることがわかった。
はじめに
テキスタイル素材の複合化は従来よりさかんに行われて来た。かつては、その主たる目的は、単素材では得られない物性面での改善や、コストでのメリットの追求であった。
しかし、最近ではファッション的な観点から外観、風合い等の感覚面を重視した複合化が進行しつつある。
ところが、複合素材では、その構成素材によって染色特性が異なるために、素材間の色の違いや、汚染等の問題が発生することが多かった。
そこで本年は、ウールとプロミックスの複合素材について、こうした問題点の解決を目的に検討を行った。
プロミックスは、アクリロニトリルとミルクカぜインのグラフト重合によって作られた絹様光沢を有する繊維で、繊維中の結晶部分はポリアクリロニトリルから主に形成されており、天然タンパク質のミルクカゼインは、その非晶部分に主に導入されていると言われている。
また、繊維中でのポリアクリロニトリルとミルクカゼインの比率は、70%がポリアクリロニトリル、残りの30%をミルクカゼインが占めている。
その染色性については、ほぼ全ての染料部属に対して親和性を持ち、染着座席の数は酸性染料に対してはナイロンよりも多く、またカチオン染料では、絹の座 席数と同程度であると言われているが、一般にプロミックスの単一素材の染色では、酸性染料、クロム染料が用いられている。
しかしながら、予備実験として行った、ウール、プロミックス複合素材の染色実験では、酸性染料、クロム染料、含金染料、反応染料のいずれにおいても、ウール側が濃色に、プロミックス側が淡色に染まり、両者間に著しい濃度差が発生した。
そこで、このうちから比較的濃度差が小さいと思われた酸性染料、クロム染科、反応染料の3者による同色染色法について検討を行った。
毛を中心とした複合繊維の染色技術 その2 差別化加工、高付加価値化加工に関する研究
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 羽田野 早苗、岡本 徳隆、吉村 裕)
1)ポリエステル・ウール複合素材を用いて、オパール加工を行う場合の糊粘度と水酸化ナトリウム濃度及び浸透剤の効果、並びにスチーミング条件について検討した結果、次の知見を得た。
IndalcaPA2に対しては、水酸化ナトリウム添加によって粘度が低下する。しかし、さらに添加量を増すと再び粘度が増加する。また浸透剤は定量以上に加えてもあまりその効果は変化しない。
スチーミング条件は100℃×30分と120℃15分では後者の方が有効であったが、やや黄変が見られた。
2)ウールリバーシブル・プリントにおけるパラフィン系一次はっ水剤を用いた防染法の効果を、パッド法と防染糊として用いる法の2法を用いて検討した。
その結果防染方法としては糊を用いる方法が糊剤法よりも優れているが、表面にイラツキが発生し易いという欠点が有ることが分った。
このため、リバーシブル・プリントにおいては、パット法の方が有効で、あると思われた。
はじめに
消費者ニーズの多様化、高級化に対応した毛織物、複合素材織物における特殊加工の開発に要望は極めて高いものがある、とりわけ、当産地の重要な製品である毛織物、複合素材織物は、秋冬向けが中心となっており、春夏向け衣料対する特殊加工の開発が望まれている。
そこで、本年度は、複合素材を用いて、透明感を持った素材を取上げ、ウールオパール加工の検討を行った。また、中~薄地織物に対するリバーシブルプリント加工について、その加工法を検討した。
着心地と布地物性についての一考察
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 古田 正明、柴田 善孝、松原 晃)
経糸に張力差を与える方法で製織するサッカーは、従来、織機の機構からストライプ柄しか得られなかった。そこで、別ビームの積極送出装置などに簡易な制御装置を取付けて経糸の送出量を変化できるようにした。
この結果、サッカー部分が間欠的に表われる柄やサッカー部分とフラット部分が市松状に表われる柄が製織できるようになった。
はじめに
サッカー織物は、経糸の縞目にあたる部分を織り方などによって縮ませて波状の凹凸を表わした織物であり、その代表的な製造方法として、製織中の経糸に張力差を与える方法がある。
経糸の一部を強く張り、一部をゆるく張って、これに緯糸を打込むと、ゆるく張った経糸部分は打込みが入り難くなり、その部分がたるんで波をうつ。
当産地のションヘル型毛織機を使用して経糸に張力差を与えるには、フラット部分の経糸は本ビームに巻いて積極的に送出し、サッカー部分の経糸は別ビームに巻いて消極または積極的に送出している。
しかし、積極送出と言えども、従来の制御方式では製織中に送出量を変化させることができないため、ストライプ状の凹凸柄しか得られなかった。
そこで、別ビームの積極送出装置に簡易な制御装置を付加し、糸の送出量を制御できるようにするとともに、この装置を使用した変形サッカーの製織試験を行った。
編地の多様化と高級化技術に関する研究 -糸物性と平編地の限界カバーファクター及び編地物性-
要旨(愛知県尾張繊維技術センター 柴田 善孝、松原 晃、古田 正明)
1.当産地で、多く用いられているションヘル型織機に、稼動中に部分的に経糸張力を変更できる装置を開発した。
2.この開発した装置を使用して、よこよろけ織物を試作した。
3.よろけ量(谷から山までの高さ)が5mm以上になると、手触り感としてつりが感じられるが、よろけ量が4mmもあれば表面効率としては十分である。
4.この装置を使用して、よろけ織物のみではなく、他の新奇性のある織物への利用も可能となる。
はじめに
消費者ニーズの多様化、個性化の対策として、従来は織物組織や糸使い、色柄および糸の配列を変化させた織物を製造してきたが、それだけでは追いつかなくなってきておりオリジナルな商品の開発が要望されている。
テキスタイル&ファッション誌Vol.1、12月号の技術解説で紹介したように現有織機の多能化をはかるために、織機の一部を改造または付属装置を付加して新奇性のある織物を製造する努力が各産地で行なわれている。
ここでは当産地で最も多く使用されているションヘル型織機を用いてよこよろけ織物が製造できる付属装置を開発し、よろけ織物の試作をおこなった。
よこよろけ織物の製造法
織物のよこ方向に変化を与える織物の製造法としては、波状の立体的な筬を用いる方法と、経糸に張力の変化を与えてよこよろけをだす方法等がある。
前者の場合、立体的な筬羽にそったきれいなよろけができるが、立体筬の製作、その駆動方法、コスト面およびその自由度(融通性)が小さい等の問題点がある。
後者の経糸に部分的に張力の変化を与える方法は、緯糸密度を部分的に粗い部分と密の部分をつくり、緯糸を上下に移行させたもので、経糸張力が強いと緯糸 の打込みが入り易く、緩めると入り難くなるという性質を応用したものである。今回はこの方法を取り入れた。
縫目スリップとその対策について
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 三谷 和弘、柴田 晃伸、寺本 茂子)
縫目スリップ対策について縫製技術面から検討した。縫合せに、縫目をこまかくするあるいは縫代を折曲げるなどの5種類の形式を選び、スリップ量を比較した結果、柄合せ縫が縫目スリップ対策として現実的であることが判明した。
また、意匠糸使いなど手のこんだ織物が多いため、糸引抜抵抗などの簡易な試験あるいは密度など織物側のデータからスリップ量を予測することは困難であるという判断に至った。
はじめに
衣服を着用中、背中、肩、肘などで、縫目と直角方向に引張力が加わったとき、衣服が破損することがある。これを縫目スリップあるいは縫目滑脱と呼んでいる。
縫目スリップは組織点の少ない織物やフィラメント織物に発生しやすいといわれ、ポリエステル・ジョーゼットなどの薄地衣料品の流行時期に苦情が多発した。
近年ではファッションの多様化により薄地織物以外の分野においても縫目スリップが問題となっている。
通常、縫目スリップ対策は糸使い、織密度などの織物企画や樹脂加工などの仕上加工に求められることが多いが、ここでは縫製技術面からの縫目スリップ対策 を知るため、縫合せ形式及び糸引抜抵抗その他の布物性と縫目スリップとの関連について検討した。
編地品質に及ぼす編成条件の影響 異番手糸、フィラメント糸交編編地の交編条件と編地品質の関係について
要旨(愛知県尾張繊維技術センター 佐藤 久、安藤 正好)
複合素材織物の効率的な企画、設計に寄与するため、ポリエステル・ウール混紡糸を使用した場合の紳士用秋冬服地(タッサー)の製造条件と織物特性の関係を把握した。
1)ポリエステルの混紡率は織物の引張や摩耗特性などに影響を及ぼす。
2)糸の撚数は織物中の糸構造、織物の曲げ特性、表面特性、通気性などに影響を及ぼす。
3)緯糸の打込数は曲げおよびせん断特性、表面特性、縫目滑脱などに影響を及ぼす。
消費者ニーズの多様化とともに、当産地の毛織物に対する消費性能面の要求は更に複雑化している。このため、ウールを中心とする天然素材から各種合繊にわ たる多くの素材をいろいろな形で組合せて、お互いの長所を生かし、あるいは全く新しい性能を生み出す、いわゆる複合素材織物の開発が今までにも増して活発 に行なわれている。
消費者ニーズにマッチした織物を適確かつ迅速に製品化するためには、代表的な織物について、製造条件と織物特性の関係を定量的に把握しておく必要がある。そのため、前年度はTWトロピカルの製造条件と織物特性について検討した。
そこで、本年度はその成果を踏まえて、紳士用秋冬服地の1つであるタッサーを例として、経緯に使用したポリエステル・毛混紡糸の混紡率及び撚数(市販糸 の解撚)、打込数の違いが織物の構造、KES-Fシステムによる力学的特性、JISの一般織物試験法による各種特性に及ぼす影響について検討した。
省エネルギー型染色の色合わせ自動化技術 簡易測色機によるCCMシステムの研究
要旨(愛知県尾張繊維技術センター 上原 政美、吉村 裕)
CCMシステムを構成する測色器の種類は、各種ある。それぞれは測色機構が異なるので、測色精度に差がある。CCMのハードウェアである測色器を分光光度計から分光式色差計に変えるだけでも、十分なCCM精度が得られる。
また、色彩色差計に変えると、色見本の測色データを補正することによって、淡色においてはCCM精度に問題はないが、濃色においては誤差が認められる。
はじめに
色合せの自動化、いわゆるコンピュータ・カラー・マッチング(CCM)は、各種試験研究機関はもとより繊維関連会社や染料製造会社等において開発され、システムとして販売されたりサービスされたりしている。
CCMシステムの実用化が始まって以来約20年の歳月が経過し、その間にシステムの内容も改良されてきた。その中で最も変化の大きいのがハードウェアである。
ハードウェアは、コンピュータと分光光度計とから構成されている。近年のエレクトロニクス技術の目ざましい発展により、コンピュータは当初の大型コンピュータからミニコンピュータ、そして現在では小型のパーソナルコンピュータへと着実に進歩してきた。
一方、分光光度計は、分光器である回折格子の分光精度の向上により、測色時間が飛躍的に早いラピッドスキャン型分光光度計が開発され、使用されるようになった。
CCMシステム価格は、コンピュータがパソコンに変ったことにより、現在約2千万円と、従来と比較して相当安価になった。しかし、産地の中小染色業者においては、まだ簡単に導入できるシステム価格ではない。
CCMシステム価格に占めるパソコン価格の割合は10%以内であるのに対して、分光光度計の価格が占める割合は、約40%を占めている。
分光光度計の精度は、CCM精度を左右する重要な要因の1つであるが、これを簡易の測色器に置きかえることができれば、CCMのシステム価格はもっと安価になる。
複合素材織物の物性と風合改良に関する研究
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 掘田 好幸、服部 安紀、浅井 郁子)
機能面
1)クリヤー仕上の場合、複合素材織物は、梳毛織物よりも保温性に劣るが、プリーツ性、寸法安定性、強力等の物牲面では優れている。
2)起毛ミルド仕上の場合、複合素材織物は、梳毛織物よりもピリング性で劣るが、均一混合タイプのポリエステルフィラメント複合糸使いの織物では逆に優れている。
風合面
1)各素材の特徴、織物組織の違い、仕上方法の違いを力学的特性として数値化できた。
2)クリヤー仕上、ミルド仕上及び起毛ミル仕上の違いは、曲げ特性と圧縮特性の変化としてとらえることができる。
3)ミルド仕上効果は、織物組織と関係があり、使用した原糸が双糸撚でS方向の場合には、緯糸の浮きの多い組織ほど大きかった。
この結果から、1/3トルコ朱子織は、織物表側のみミルド効果が大であるのに対して、2/2山形斜紋織は、織物表裏側ともにミルド効果が大きかった。ミルド効果を組織別に比較すると次のようになる。
平織<2/2斜紋織<2/2山形斜紋織≦1/3トルコ朱子織
4)織物の“こし”は、素材と織物組織で決まり、“ぬめり”と“ふくらみ”は仕上方法で変化できる。
はじめに
最近の消費者ニーズは、天然素材志向、高級化志向となっている一方で、合成繊維特有の機能性やイージーケア性を求めている。
ところで、天然繊維素材を用いる織物に軽量化、寸法安定性、機能性を付与するための方法は、合成繊維との複合化が最良と考えられる。なかでも、ポリエス テル/毛混紡素材は、おたがいの繊維特性の欠点を補いウールの風合とポリエステルの機能性を兼ねそなえたものとして、単一素材では得ることのできない優れ た性質を持っている。
特に、常圧カチオン可染ポリェステル/毛混紡素材の出現は、本格的な秋冬用素材として今後の活用が十分に期待できる。
この研究では、梳毛織物と複合素材織物とを比較して、まず複合素材織物の機能面からの利点と欠点を解明し、次にウールライクな風合を作り出すための方法について検討を行った。
3色配色のSD法による面積効果の考察
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 伊藤 通敏、坂川 登)
企画イメージに合致する柄を迅速、的確に検索し、商品企画に取り入れるシステムづくりを図るため、具象柄の普遍的な柄分類、検索手法を検討した。
また装いイメージとシルエットや柄との関連を探るため、柄感覚調査を実施し、調査結果をもとに具象柄服地デザインシステム化応用事例を作成した。
はじめに
市場の成熟化にともない、繊維製品に対する消費者の評価は、品質、機能、価格等よりも色、柄、素材、シルエット等の感性的な面に向けられることが多くなってきている。
この感性的評価に対応した製品企画を進めるためには、消費者の感性的な欲求を定量的に把握することが要求される。このためには、色、柄、素材、シルエットといった繊維デザインの構成要素を分化した部分に分類し、尺度化しておくことが必要となる。
このような背景から、繊維デザインの構成要素のうち柄を取り上げ、昭和56年度からこれまでに花柄、古典柄、民族柄の柄分類と検索技術の研究を進めてきたが、今回は具象柄をテーマにその普遍的な柄分類と検索技術について考察した。
泡染色仕上の解析
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 羽田野 早苗、野田 栄造、岡本 徳隆)
泡加工に必要な、各種起泡条件下で作られた泡の特性を把握するために、発泡機を用いて起泡試験を行った。
ブロー比、ミキシングヘッド回転数の増加とともに、泡の排水開始時間、半減期は長くなり、排水曲線はゆるやかなカーブとなった。
排水開始時間と布への泡の浸透時間の間には、かなり高い相関関係(相関係数0.97)があることがわかった。
泡径はミキシングヘッド回転数の増加とともに小さくなり、そのバラツキも小さくなった。100ミクロン程度の小さな泡を得るためには、ブロー比10、泡吐出量1,000cc/minで、ミキシングヘッド回転数を700rpm以上にすることが必要であることがわかった。
はじめに
染色整理業は、多量の水を使用する工業のひとつであり、その水の加熟、乾燥のため多大のエネルギーが必要になる。
そこで、省エネルギー的染色仕上加工として、泡加工技術が注目された。これは染色仕上加工において、泡を利用する特殊な加工法で、水を空気で希釈した泡 におきかえて、薬剤や染料、顔料を含む加工液を織物等に塗布し、低Wet pick up(WPU)で乾燥等に要するエネルギーを低減化する方法である。
泡加工のWPUは、10~30%が可能であるとされており、その特徴として次のことがあげられる。
1)乾燥エネルギーの節約と生産性の増大
2)中間乾燥時のマイグレーションの抑制
3)ウェット・オン・ウェット加工
4)織物の片面加工、両面異加工等の持殊加工
1978年頃アメリカで実施されるようになった泡加工は、西独、ベルギー、イタリー、英国などで一部採用されているようであり、我国の一部の工場でも工 業化されている。現時点では、Foam finishingが主として行われ、Foam dyeingはカーペットおよびパイル織物などにまれに適用されている。
ここでは、発泡機による起泡試験を行い、その泡特性について検討を加えるとともに、アプリケーターによる塗布試験を行ったのでその結果を報告する。
獣毛の鑑別・定量と各種繊維の損傷調査
要旨 (愛知県尾張繊維技術センター 野田 和彦、大津 吉秋、驚野 鋭之進、井上 明三)
○獣毛の鑑別定量
カシミア、モヘア、アルパカ3品種の獣毛とメリノ羊毛を用いて、顕微鏡法による定量試験精度及びアミノ酸分析、アルカリ溶解度試験による鑑別・定量法の可能性について検討した。その結果、
1)顕微鏡法による定量試験では、試料の鑑別が確実に出来るものについては、混用率は溶解法の混用率±1.5%以内の精度で求められる。
2)アミノ酸分析では、試料4品種ともアミノ酸構成は非常に似ており、今回の試験では鑑別・定量の可能性について結論を出すまでには至らなかった。
3)アルカリ溶解度試験では、モヘアが水酸化ナトリウム液で、カシミアが炭酸ナトリウム液処理によりメリノ羊毛に比べて高い溶解度を示す。
この性質を利用することで、羊毛とモヘア、羊毛とカシミアの混紡品の定量に応用が可能である。
○各種繊維の損傷調査
綿、羊毛、合繊等8種類の繊維の日光、サンシャインウェザーメーターによる暴露と、羊毛、綿、レーヨン、ポリエステル4種類の繊維の化学薬品による処理を試験した。
その結果は、走査形電子顕微鏡を使い、各々の繊維の損傷状況を観察して、約30種類の写真撮影をした。
○獣毛の鑑別・定量について
羊毛工業では、緬羊から生産される羊毛の他に、獣毛繊維とよばれる動物毛も使用されている。主なものとして、山羊科に属するモヘア、カシミア、ラクダ科に属するアルパカなとがあげられる。
近年、天然繊維ブームと消費者嗜好の多様化、高級化にともないこれらの獣毛が多くなっている。
獣毛繊維の化学的な性質、表面形状は羊毛繊維と極めて類似している。このため、羊毛と獣毛繊維相互の鑑別および定量試験は、一般に行われている溶解試験方法では困難である。従って、顕微鏡を用いた繊維の表面形態の観察法により試験されている。
しかし、実際には、繊維の鑑別を確実に行うことが困難であるため、試験結果の精度には問題点が多い。