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テキスタイル&ファッション誌(メールマガジン)バックナンバー
テキスタイル&ファッション Vol.1 (1984)
Vol.1/No.1~12
(1984年4月号~1985年3月号)
1-特集 | No. | 月 | 頁 |
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'85年春夏FDC FASHION MESSAGE | 1 | 4 | 3 |
IWSがラスターヤーン製造技術を確立 | 1 | 4 | 21 |
'85SS FDC TEXTILE TREND(LADIE'S) | 2 | 5 | 53 |
高まる怒濤のファッションクリエーション | 3 | 6 | 97 |
クールウールのバラエティひろがる | 3 | 6 | 100 |
サイロスパンウールでユニフォーム | 3 | 6 | 137 |
ファッションマーチャンダイジングの現状と今後の方向 | 4 | 7 | 130 |
'85年春夏IWFOトレンドコレクション | 4 | 7 | 137 |
東京アパレルの昨日、今日、明日 | 5 | 8 | 169 |
マーケッティング分析によるファッショントレンドの設定 | 6 | 9 | 212 |
来年秋冬向けニットトレンドコレクション | 7 | 10 | 257 |
FDCテキスタイルトレンド展報告 | 8 | 11 | 292 |
ゴルチェ、アメリカに上陸 | 8 | 11 | 300 |
'85/'86秋冬FDCテキスタイルトレンド(紳士) | 9 | 12 | 345 |
来秋冬メンズ・ファブリック | 9 | 12 | 352 |
展示会報告(小中学生によるファッションイラスト大会) | 11 | 2 | 432 |
IWSインテリア流行予測 | 11 | 2 | 453 |
2-研究報告 | No. | 月 | 頁 |
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毛を中心とした複合繊維の染色技術 | 1 | 4 | 23 |
ウールと長繊維の複合化技術 | 2 | 5 | 60 |
着心地と布地物性についての一考察 | 4 | 7 | 140 |
編地の多様化と高級化技術に関する研究 (糸物性と平編地の限界カバーファクター及び編地特性) |
5 | 8 | 175 |
染色仕上における省エネルギーに関する研究 (ロープ洗絨機の洗浄効果について) |
6 | 9 | 216 |
ウールと短繊維素材の複合化技術(TWタッサーの製造条件と織物物性) | 7 | 10 | 260 |
民族柄の分類・検索技術 | 8 | 11 | 305 |
色合せ精度に及ぼす要因 | 9 | 12 | 356 |
3色配色のSD法による面積効果の考察 | 10 | 1 | 387 |
4-講習会要略 | No. | 月 | 頁 |
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「クラボウアウカラーシステム」の最近の動向 | 5 | 8 | 197 |
繊維産業におけるVAN導入の実際 | 11 | 2 | 449 |
6-調査報告 | No. | 月 | 頁 |
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85年春夏婦人物流行色アンケート調査結果 | 6 | 9 | 224 |
最近の依頼試験および所内相談について | 12 | 3 | 469 |
8-技術情報の窓 | No. | 月 | 頁 |
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技術情報 | 1 | 4 | 49 |
技術情報 | 2 | 5 | 87 |
技術情報 | 3 | 6 | 127 |
技術情報 | 4 | 7 | 166 |
技術情報 | 5 | 8 | 210 |
技術情報 | 6 | 9 | 250 |
技術情報 | 7 | 10 | 289 |
技術情報 | 8 | 11 | 338 |
技術情報 | 9 | 12 | 382 |
技術情報 | 10 | 1 | 429 |
技術情報 | 11 | 2 | 464 |
技術情報 | 12 | 3 |
ウールにシルキー感覚 IWSがラスター・ヤーン製造技術を確立
英国ヨークシャー州イルクレーにある国際羊毛事務局技術センターは、ウールに耐久的な光沢とシルキーな表面感覚を与えるラスター・ヤーンの製造法を開発した。
ラスター・ヤーンの製造方法はすでに実用化されている防縮加工技術を応用した簡単なもので、2種類あり、ドライで弾力性のあるモヘアのような風合も、またカシミヤやアルパカのようにソフトな風合のものも作り出せる。
IWS技術センターの開発担当マネージャー、トム・ブラウンは、「われわれの研究活動目的は、純毛製品の新分野を切りひらき、それを実用化することにある。今回開発したラスター・ヤーンもこれまでの羊毛にはない光沢と風合をもたらしながら、ウール本来の数々の特性はそのまま生きている」としている。
基本的には羊毛繊維の表皮(キューティクル)を改質させることでなめらかな表面と光沢を与える加工法だが、イルグレー技術センターの技術陣は迅速でかつ保護処理を行うことによって、羊毛繊維の内部を傷めずにスケールを取り去ることに成功した。
モヘアのように強い光沢とシャリ感をもつラスター糸は、クロイ・ディーピム・クロリネーション法を応用して加工するものでスライバー段階で連続処理する。
この場合、羊毛繊維を1秒間塩素水と接触させ、膨潤前にスケールを取り去り、このあとスライバーをバック・ウォッシャーで中和させる。
一方、カシミヤのような光沢とソフトさをもつラスター・ヤーンはバッチ・プロセスで製造する。この方法は染工場や一貫ニッターに適しており、小ロットのスライバーや毛糸を加工処理できるのが特徴。
高まる怒濤のファッションクリエーション
黄金時代への序曲がはじまっている(現代構造研究所 所長 三島 彰)
1984年の春は執拗に冬が居座り、初夏は初秋に似た冷気におおわれていた。しかしそのような異常気象とうらはらに、ファッションを中心とするクリエーションは、一種異常といってよいほどの熱気に溢れていた。
それは確かに、あのファッション革命へ向って高まっていった60年代末期の様相が、それに数倍するエネルギーを秘めて、もう一度再現しようとしていることを感じさせた。私のこの歴史的予感は、恐らく適中するだろう。
80年代後半から第2次ヤングブームが次第に大きなうねりを見せ、20世紀の最後を飾る1990年代は、鋭い感覚をもったヤングの大群と、現代ファッ ションの先駆としてのキャリアをもつ豊かなアダルトの大群の2本柱に支えられて、史上最高のファッション黄金時代が出現することを、これまで私は、飽きも せず説き続けてきた。これは確度の高い人口予測に立脚しており、単なる希望的観側ではない。
そしてこのような黄金時代出現のためには、それに一歩先立って、新しい時代を導き、呼びこむクリエーションの高揚がスタートしていなければならないはずである。
83年から84年へと、年を追うにしたがって高まりつつあるこのファッションクリエーションの潮流は、恐らくこの時代へのプレリュードなのだ。そしてこ のような新時代を呼びこんでくるリーダーシップの重要な部分が、日本のクリエーターによって握られていることを、世界のファッション有識者たちは、もはや 常識として承認しているのではあるまいか。
イタリーとフランスの来春夏素材傾向 クールウールのバラエティひろがる
1985年春夏ヨーロッパ服地展示会が一巡したが、84年春夏シーズンにIWSが展開した“クールウール”プロモーションによって、ウールの年間商品化への関心がいちだんと高まり、これらの展示会でも多彩な、“クールウール”の新作が発表された。
パリのプルミエール・ビジョン、フローレンスのプラトー・エクスポ、ミラノのイデア・コモを取材したIWSの展示会レポートから、クールウール85年春夏物の傾向をピックアップしてみた。
プルミエール・ビジョン
フランスの創造力に溢れた婦人服地メーカーのコレクションでは先にIWSが発表した85年春夏素材予測がはっきりと確認された。
クラシックなプレインと、“フォーズニ”(一見プレインに見えるもの)のグループでは、シャリ感のあるウールポプリン、なめらかなウールサテン、新鮮なレップス、ドライなグラン・ド・プードル、そして薄手ギャバジンなど。
ここでは強撚糸やクレープヤーンが重要だが、新しいところでは微妙な配色のシネ、ジャスぺツイストやグリザイユ効果、スラブ糸、艶消しや艶出し、レノ効果が新たなウールの表情を作り出していた。
3番目のトレンドとしては表面テキスチャー効果を強く出したもの。リリーフ効果、ジャカード織、鎖かたびら文様の柄を小さくしたもの、オットマン、フォーズニ、ラスティックなテキスチャ-、ノップヤーン使いのサマー・ツィード。
紳士服地の影響はクラシックなデザインに強く出ており、暗いくすんだ色使いの一方では、冷たい透き通った色のものもファッションカラーとして人気がある。
新しい広々としたショー会場では、シーズンのスタートとしての期待と明るい雰囲気が満ちていた。ウールマーク服地メーカーも同じ雰囲気と手応えをクール ウール・コレクションに感じており、特に国際的な小売業者たちは春シーズンの開幕にはウールを持ってくることで一致していた。
クールウールが婦人服市場に与えたインパクトは大きい。新しい試みもクラシックな素材も、川上から川下まであらゆる段階でクールウールの評判が高まっていることを証明したプルミエール・ビジョンであった。
ファッション・マーチャンダイジングの現状と今後の方向
婦人服市場のゼロ成長化(戦略的マーチャンダイジング論の提唱 FBO会長 菅原 正博(龍谷大学経営学部教授))
これまで高度成長を続けてきたファッション業界も本格的なゼロ成長時代に入りつつある。繊研新聞が実施した58年4月から59年3月までの1年間にわたる 「全国婦人服メーカーランキング」調査でも、売上高上位100社の総売上高が1兆2,750億円となり、前年の1兆2,651億円と比べて0.86%増の 微増にとどまり、まさにゼロ成長に入りつつある。
このような低成長は58年度の特殊事情によるものではなく、むしろ、長期化の様相を呈しつつある。
ファッション市場がこのような低成長に入った大きな原因は、すでに消費者の「タンス在庫」が一杯になりつつあり、ファッション衣料が完全に飽和状態に達していることによる。
その意味では、婦人服市場においても「普及率マーケティング」の時代が終り、消費者の好みによって厳しく選別される「選択率マーケティング」の時代に入ってきた。
ファッション業界では、こういったマーケティング戦略の変更を、「マスマーケティング」の時代がら「個のマーケティング」時代への変化という形でとらえられている。
このようなマーケティングの変化は、当然ファッション・マーチャンダイジング、すなわち、商品企画面にも大きな変革をもたらしつつある。
特に、一般大衆の平均値的なボリューム・ゾーンを狙っている商品は急速に売れなくなってきている。
マス商品が売れなくなると、その商品群の主力素材も売れなくなってくる。したがって、テキスタイル産地の盛衰も、この婦人服市場の売れ筋の変化によって大きく左右されてくる。
たとえば、つい3~4年前までは、同じテキスタイル産地の中でも、ジョーゼット・ブームから始まって、混繊糸の差別化素材に支えられて北陸を中心とした 合繊長繊維産地が急成長してきた。しかし、こういったポリエステル系の素材需要を支えていたワンピース、ブラウスの総需要が低迷するにつれて、現在はかな り苦境に追い込まれつつある。
一方、一宮および尾西地区を中心とした毛織物産地は、以前はスーツ、コートといった重衣料の成長に支えられて伸びてきたが、ここ5年ほど前から、重衣料が単品カジュアルの急成長に押されて、苦戦を強いられてきた。
しかし、ようやく毛織物産地はカジュアル化、コーディネート化に対応するために商品開発を懸命に実施してきたために、天然繊維志向のカジュアル路線にうまく乗ることができた。そのために、合繊産地とは異なって、毛織物産地の方が業績もよくなってきている。
このように、婦人服アパレルの市場動向とテキスタイル産地の動向とは密接な関連性をもっている。
クール・ウールでさわやかな提案 '85年春夏IWFO トレンドコレクション
IWSマテリアル9グループは7月26日、27日の両日、新宿NSビルで85年春夏マテリアル9ファブリックコンベンションを開催した。
両日とも午前11時、午後2時半、4時半の各3回、パリIWFO制作の春夏プロモーション・コレクションがショー形式で紹介された。
85年春夏シーズンにむけて新鮮で涼し気なクールウール素材が注目を集めているが、IWFO制作のプロモーション・コレクションでは、世界の主要なテキスタイルメーカーの魅力的なウール素材を使って、若々しいさわやかなウールファッションを提案している。
素材はドライで涼感に溢れたポプリン、ギャバジン、クレープ、クレポン、ボイル、ガーゼ、軽量サージ、ピケ、トワル。柄はヘザードチェック、シャツストライプ、紳士服地のデザイン、及び表面効果がくっきり出たものなど。
色は2つのグループに分れている。ニュートラルカラーと洗練されたパステルの各色など明るく軽いカラーレンジと、白でアクセントがつけられた、黒、ネイビー、茶、グレイなどのダークカラーのグループ。
シルエットは、前衛的なデザインでは長くまとめられており、クラシックな服ではひざ丈。85年春夏シーズンに最も新しいシルエットは長くほっそりとしたラインにスリムなウェストと細いヒップになめらかな曲線を出した形。
注目したいデザインは、シュミーズコート。
東京アパレルの昨日・今日・明日
ビギ、ニコルタイプが時代性をつかむ 時流に乗る“東京を売る”ニューウェーブ派(繊研新聞 編集記者 山崎 光弘)
繊研新聞調べによる「婦人服売上高ベスト50」に占める企業(本社所在地)構成は次の通りになっている。東京25社、大阪11社、名古屋8社、岐阜2社、神戸2社、京都、広島それぞれ1社。
これでみると、東京アパレルはベスト50の半分を占めている。半分が多いか少ないかは別にしても、大阪、名古屋と地域別に分けると圧倒的に企業数の多いのは事実である。
しかし、東京アパレルの特徴は何かと問われると仲々難しい。前述の上位50社でも、第1位はワ一ルド(神戸=1,046億円)、第2位イトキン(大 阪=882億円)と他を圧倒しており、東京勢は第3位レナウン(736億円)---第8位内外編物(287億円)が上位に続いているにすぎない。
少なくとも現在の婦人服業界で最もナウい、従って先端的な事象を拾おうと思えば、ワールド、イトキンの事例研究の方が勝るであろう。
にもかかわらず、東京である。ワールド、イトキンの40~60%が東京店で販売されている。また、ワールド、イトキンのコンペチター(競合者)はレナウ ン、樫山、東京スタイルであり、一方ではこうした大手アパレル以上にビギグループ、ニコルグループ、ワイズ、さらには数10社に及ぶデザイナーズ・ハウ ス、同様のキャラクターズ・ハウスといった“東京を売る”アパレルのニューウェーブ派なのである。
パリやミラノを売り物にする時代は終ったという。もっといえば、1980年(昭和55年)を境目にファッションは「限りなく金持に近づくための装い」から「自分という“個”を押し出し演出する」ことに消費者の軸足が移ったといわれている。
パリ、ミラノが売り物になったのは「ファッションが金持のように装うこと」だった時代での話であり、80年以降は全く違う視点でファッションを見直さなければならない時代になった。
東京アパレルの「沈滞」と「浮上」という両極の局面が80年を境に一層、明確になってきた。ここでは、大手、中堅、個性派という従来の区分けでなく「何を売るのか」という点で東京アパレルを俯瞰してみたい。
マーケッティング分析によるファッショントレンドの設定 世代別マーケッティング
ファッションディレクター 渡辺 晶
ファッションプランニングスタジオ
(株)シルバーピラミッド代表取締役
1985年~1986年秋冬のファッショントレンドの主流は、ベーシックトレンドからクラシックトレンドヘと、ゆっくりと大きく移行しはじめている。
生活環境、文化、社会は、カジュアル化の方向に進んでいるにもかかわらず、ファッショントレンドは、クラシックの方向へ進行している。
数年前のトレンドの核であったヘルシー&セクシーラインは後退してしまった。いや後退と云うよりは、社会全体にゆきわたってしまっている。スニーカーは、ほとんどの人が必ず一足は持っているし、テニスラケット・ゴルフも同様である。
ポロシャツやスポーツウェアは街中で氾濫している。もはやファッショントレンドとしてのヘルシー&セクシーラインは姿を消してしまった。
しかしセクシーなトレンドは、やや別の型で次のトレンドヘとうけつがれている。
ユニセックスで、明るく健康的なイメージよりも、女らしさ、男らしさが次のトレンドとして求められている。
戸外よりも室内、海のイメージから高原のイメージヘ原始的よりも都会風に、動的よりも静的に、ファッショントレンドは移行しつつある。明るくさわやかな気分を残しながら知的で気品高く、女らしさを主流にして。
このようにマーケットは、時代とともに変化しつつある。しかしもはや、マスによるマーケッティングは終局を迎えようとしている。
これからは、個のマーケッティングであり、これは、理論よりも感性によるマーケッティングと云えるであろう。これからは個人の感性による物作りが、ファッショントレンドを作り出していくだろう。
感性を知るには、それらを形成している意識、生活、文化、社会全体を分析しなければならない。
新しいプロポーションを提案 来年秋冬向けニットトレンドコレクション
国際羊毛事務局イルクレー開発センターはオランダ・デルフトのIWSニッティング・スタイリング・ワークショップと共同で、1985/86秋冬シーズンにむけて、IWSインターナショナル・ウールニット・トレンドコレクションを制作した。
それによると新シーズンは3つのテーマにもとづいて、若々しく華麗なウールニットを提案している。
長くほっそりとした新しいプロポーションでまとめた「レングス&レイヤーズ」。スポーツ感覚を強調した「カジュアル&コンフォート」。装飾性を高めて色柄で立体効果を狙った「デザイン&ディメンション」。
どのテーマでも軽く編みあげられており、色やスタイルに凝るデザインでは編み地をできるだけシンプルに、反対にストラクチャーが複雑なものはすっきりとしたシルエットになっている。
全体的に明るい配色の中で、ウールの持つソフトなふうあいが若々しく新鮮なスタイリングとうまくマッチしたトレンド・コレクションとなっている。
レングス&レイヤーズ
ふくらはぎの中程までの丈のスカート、ドレス、コート。チュニックもヒップをおおう丈。カーディガンは太ももの中程。全て長く細いシルエットでまとめら れている。編み地はプレイン、リブ、リブや針抜きでのプリーツや添え糸編み。編み地よりも色やシルエットでコンセプトを表現している。
ゴルチェ、アメリカに上陸
アンファン・テリーブルー恐るべき子供という異名を持つパリファッション界の風雲児、ジャンポール・ゴルチェは、9月17日ニューヨークのバッテリー・パークでショーを開き、初のアメリカ進出に挑戦した。
このショーは、バーグドルフ・グッドマンが国際羊毛事務局の後援のもとに開いたもので、自由の女神像を背景に、1,500人収容できるサーカスの大テントで行なわれたショーは、来場者を運ぶヘリコプター部隊まで出動する大イベントとなった。
IWSパリファッションオフィスのクリス・マクドナルド理事は「ジャンポール・ゴルチェと共にIWSは新境地を開拓する。フランスの、“ファッション界 のアナーキスト”という評判のゴルチェはパリで今最高にクリエイティブでおもしろい人の1人。ニューヨークでのショーはゴルチェにとって出発点でもあり到 達点ともいえる。彼を国外に紹介する機会が作れて光栄だ」と語っている。
ゴルチェはヨーロッパでは、もはや知らない人もいないくらい有名だし、ファンも多いけれど、このショーを突破口として国際的にゴルチェの衝撃波が広がっていくことになるだろう。
国際羊毛事務局はバーグドルフ・グッドマンで展開されるゴルチェをプロモーションすることで、アメリカでの完璧な到達に協力していく。
マクドナルド理事は「ユニークな才能とバーグドルフ・グッドマンの卓越したプロモーションとの合体は奇妙に思われるかもしれないが、これこそIWSが狙っている新しいアバン・ギャルドなデザイナーのプロモートである。
ゴルチェは日常感覚をファッションに翻訳できるイノベーター。
バークドルフ・グッドマンはアメリカだけでなく国際的なファッション最前線をゆく一級のファッション店。
この両者の“結婚”が素晴しくてユニークなことは、“結婚立会人”のすべてが賛成してくれると思う」と述べている。
ジャンポール・ゴルチェは1952年生まれ32才。クロード・モンタナ、ティエリー・ミュグレーやアンヌ・マリー・ベレッタとともにパリデザイナーのヘ“新しい世代”を担う1人である。
ウールのカジュアル化進むツイードが最大のストーリー 来秋冬メンズ・ファブリック
国際羊毛事務局ロンドン本部は1985/86年秋冬シーズン向けのメンズウェア・ファブリック・プレビューをまとめたが、それによると同シーズンは純毛服地がカジュアル・ウェアの新鮮な素材として世界的に注目されるとの見通しを明らかにしている。
同シーズン向けのメンズウェア服地は世界各地の展示会で順次発表されていくが、IWSでは「各国ともウールマーク服地の生産増加計画が目につく」としている。
これは創造力に溢れたデザイナー達が、ウールの卓越した性能を活かした非常に新鮮なファッション・ファブリックの開発と取り組んでいるためで、服地デザインのみならず、タイプ、目付け、仕上げなどすべての面で広がりを見せている。
品種的にみても超高級なスーパーファイン・メリノ使いから、ソフトな手触りのツイード、カシミヤやアルパカ、モヘアといった獣毛混まで幅広く準備されている。
最近の消費者の好みは一段と着易さの追求に向いているが、こうした要求への回答としてウールマーク服地生産業者はソフトでしなやかな手触りの、パイルや起毛、裏起毛ツイル、細番手使いライトウェイト・ウーステッドなどで新素材を打ち出している。
カラー、織り方、表面感などで個性を表現するシーズンといえるだけに、たとえばパターンに変化を与える一つの手法として、カラード・ツイスト、メランジ、ネップ、ブークレ、ケンプなどの活用が目につく。
コート向けの豪華なパイル地や、スラックス向けの乾いた手触りのコートまで、レリーフ・ストラクチャーも主としてダイアゴナル・デザインで新シーズンの重要トレンドとなっている。
アウターウェアのカラー・テーマは中間・自然色でヘザー調。色の表現は対照的な色使いのツイストか大胆なアクセント・カラーの配置が中心である。濃い目の中間色の組み合わせはスラックス向けに。
ここでもハイ・コントラスト使いが多い。ネイビーを中心としたダークでディープな色の組み合わせは、ライトウェイトでアンコンストラクテッドなインドアウェアにチェックや新しいイメージのプラッドで使用されている。
ディスコにイメージ色使いさらに広がる IWSインテリア流行予測
国際羊毛事務局は1月9日から12日まで西独フランクフルトで開いたホーム・テキスタイル見本市「ハイムテクスタイル」で1986年向けIWSウール・インテリア・トレンド・コレクションを発表した。
IWSのインテリア流行予測は今回で13年目になるが、新年度のトレンド・テーマは「フラッシュライン」。
IWSが1986年向けに予測するインテリア流行色21色を使ったカーペット、家具用生地・毛布でコレクションを構成しており、日本では1月31日から東京晴海の国際見本市会場で開かれるジャパンテックスでのIWSスタンドで公開された。
明暗度が強く、濃い色調が1986年のインテリア・テキスタイル・デザインのポイント。感性豊かな、男性的な表現に最適の色である。
クリーム、ベージュ、ブラウン系がひきつづきインテリア・テキスタイルに欠かせない色だが、86年向けのカラー・パレット21色では、これらの色に加えて、ツィード、オプティカル・デザインでより多彩な色使いになっているのが新鮮だ。
また糸やデザイン展開でより多くの色をミックスする使い方が増え、単色は対比色やハイライト色として使っていく方向にある。
毛を中心とした複合繊維の染色技術
知県尾張繊維技術センター 羽田野 早愛苗、兼松 輝美
当産地では、従来の羊毛単独の素材から羊毛繊維に各種の合成繊維、天然繊維を複合し、イージケア性、光沢、軽量化、特殊風合を図る新素材が開発されつつある。
これら複合繊維の中でも羊毛とポリエステル繊維との複合化は、ポリエステル繊維のイージケア性や強力などの物性面での秀れた特性と腰のある風合いの織・編物が得られるなどの特長を有しているため、当複合繊維は今後も伸びていく傾向にある。
一方、最近、各合繊メーカーから常圧カチオン可染型ポリエステル(以下「常圧CDP」という)が発売されている。本年度は、この常圧CDPと羊毛の複合繊維の染色法、染色性、堅ろう度について検討した。
その結果、常圧CDPに分散型カチオン染料、羊毛に酸性ミーリング染料、含金染料、反応染料、又はクロム染科を使用して一浴染色法が可能で、色合せも比較的簡単で、又、各種堅ろう度も一部の染料を除いて良好であった。
前述のとおりポリエステル繊維は物性面等で秀れた性質を有しているが、染色の点では次のような難点がある。
1)イオン染料に対する染着性がないので分散染料にしか染まらない。この分散染料はイオン性染料に比べて分子吸光係数が小さく、ビルドアップ性も低いため、鮮明で深みのある色が出にくく、昇華堅ろう度や湿潤堅ろう度も相対的に劣る。
2)染色性が低いため、高圧染色やキャリア染色が必要である。
このため従来の羊毛とレギュラーポリエステルとの複合繊維の染色では、羊毛の損傷防止のためキャリア染色が行なわれ、濃色の場合には二浴染色によることが多く、又、その工程の途中に羊毛部分に汚染した分散染料を還元洗浄によって除去する工程が必要になってくる。
このことはキャリア残臭、廃水処理、省エネルギーの立場からみると大きな問題である。
これらの問題を解決するため、最近、常圧でかつノンキャリア染色が可能なカチオン可染型ポリエステルが各合繊メーカーから開発され、発売されている。この繊維はカチオン染料で染色可能である。
一方、従来のカチオン染料は、イオン性の異なる染料配合により染色した場合は、沈殿を生じたり、クーリング現象やスペックなどによって加工上著しい障害を起こす。
この欠点をなくすために分散型カチオン染料が開発されている。この染料はカチオン染料とリンモリブデン酸塩などとの複合多重酸塩を分散化したものや重金属塩の代りに有機アニオン性化合物を使用して分散化している。
分散型カチオン染料には次の特微がある。
(1)カチオン基が封鎖されているため、常温では人体及び器物に付着しても落ちやすい。
(2)染色浴のpHに対して比較的安定である。
(3)染色速度がゆるやかで均染性が得られる。
(4)低温(80℃以下)ではカチオン性を示さないので他種属染料や染色助剤と任意に混合できる。
本研究では、羊毛と常圧CDPの複合繊維をこの分散型カチオン染料と各種羊毛染料と組合せた一浴染色について検討した。
ウールと長繊維素材の複合化技術 -長短繊維複合糸の物性比較-
愛知県尾張繊維技術センター 服部 安紀、堀田 好幸
毛とポリエステル長繊維との代表的な4種の複合糸の糸物性、製織性、織物性能を比較検討した。
ポリエステル開繊・毛交絡糸は、コアー糸や交撚糸とは異なり、ポリエステル糸の性質より糸構造による荷重伸度特性が現われ、製織性も非常に良好であった。
仕上った織物は、幅150cm、長さ1m当りの目付が230g以下と薄地であるが、梳毛織物の強力基準である20kg以上を保持し、しわ回復性も良好であった。
風合いを比較すると、模紗織は平織に比べて「こし」、「はり」が小さく、逆に「しゃり」が大きくなった。
ポリエステル開繊・毛交絡糸を使用した織物は、「こし」、「はり」、「しやり」、「ふくらみ」、「総合風合値」ともに均斉のとれた良好なもので、「仕立て映え」も良い結果を得た。
物は十分に充足し、経済環境の急変も望めない今日、物造りにおいては、消費者の購買意欲をそそる商品の開発が急務となっている。とりわけ
1)「買ってもらう商品」から「買ってもらえる商品」ヘの変革
2)「安く売る商品」から「適宜な値を通して売れる商品」
への変革を促進しなければならない。
それには、消費者ニーズの変化を適確にとらえる情報の収集と、それに基づく迅速な企画設計、及び品質の保証が重要となる。
今日、消費者ニーズは、天然繊維の指向が強いなかにも、単一素材から互いに他の利点を相乗する複合化(混紡、交撚、スパンとフィラメントとの混合、衣服内での混用)ヘと進んでいる。
そこで、昨年に続き、毛とポリエステルフィラメントとの複合糸を取り上げ、糸形態の異なる代表的な4種の市販複合糸について、糸物性、製織性、織物物性を比較検討した。
着心地と布地物性についての一考察
愛知県尾張繊維技術センター 小林 久行、三谷 和弘、寺本 茂子
着心地計数化の一つの試みとして、人間が衣服を着用して腕を曲げ伸ばしするときに袖から受ける抵抗を、模擬腕によって測定し、素材の引張り、せん断、曲げなどの物性が着易さにどのように関与しているかを検討した。
その結果、腕を曲げるときの抵抗に最も関与する布の物性はせん断剛さであり、さらに、せん断剛さに素材の伸びと厚さを加えると、ほぼ完全に腕曲げ抵抗を予測できることが判明した。
「縫製工程では素材の物性を知ることが重要なポイントである」ということは、良く知られるようになってきた。また、素材物性の把握は、KESなどの風合 い試験機等による計数把握が進み、風合いも数値化されて、素材自体の評価基準はある程度確立されたといえるのではなかろうか。
ただし、この場合の素材評価は、今のところ衣料としての製品からのフィードバックによる評価ではなく、半製品である布との関係における評価である。
もっとも製品とのかかわり合いがないわけではなく、仕立映えとか着心地、型くずれなどの関連において議論はされているが、製品評価の数値化ということが大変難しいため、十分な進展を見ていないのが現状である。
そこで、着心地の計数化の一つの試みとして、袖を想定した筒状布の曲げ変形応力の測定を行い、素材物性が着易さにどのように関与しているかを検討した。
編地の多様化と高級化技術に関する研究 -糸物性と平編地の限界カバーファクター及び編地物性-
愛知県尾張繊維技術センター 佐藤 久、安藤 正好、森 彬子
編地の多様化と高級化に対応するため、糸の編成性のファクターとして、「限界カバーファクター」を定義し、各種メリヤス糸の糸物性と限界カバーファクター値ならびに編地物性との関係を検討した。
その結果、編成性には糸の強伸度、摩擦係数が影響し、特に伸度の影響が大きいことがわかった。また、編地特性のうち、編地強度には、糸の強伸度、曲げ剛 性が影響し、編地の伸長特性には、始めは曲げ剛性が影響するが、高伸長時では糸の引張特性の影響が大きくなることが分った。さらに、編地のディメンジョン は、編地のループ長との相関は強いが、編地の幅に対しては糸の伸度との関係も認められた。
最近では、消費者ニーズはますます多様化の傾向を強めてきており、当産地のメリヤス業界を取巻く環境も、多品種少量生産の一般化、生産サイクルの短縮化傾向など一層厳しさを増している。
特に生産品種の多様化は、従来のダブルジャージィ機に変わって、シングルジャージィ機の導人が盛んとなり、コンピュータシングル丸編機の導入も活発化している。
また、使用される素材も多様化し、従来にくらべ幅広い範囲の素材を単独または複合使用することが多い。しかし、生産サイクルの短縮化により、素材の性質 を十分把握できずに、企画、生産を余儀なくされ、使用素材が原因となった編成上、品質上の問題が発生する場合も多く、生産性の低下、品質の低下を生じてい る。しかも、一度問題が発生した場合、その解決は早急には困難であり、納期遅れなどのトラブルの発生する恐れがある。
このため、使用する原糸の物性と編成性と編地物性の関係を把握する必要がある。
これらの関係については、従来試行錯誤によりある程度の経験則は認められ、梳毛糸など限られた範囲ではすでに多くの研究成果が報告されている。
しかし、編地の多様化と高級化を図るためには、より一般化した範囲で糸物性と編成性、編地特性の関係を把握する必要がある。
ここでは、編成性のファクターとして、後述するような「限界カバーファクター」を定義し、平編組織において、各種メリヤス糸の糸物性と限界カバーファクター値ならびに編地物性との関係を検討したので結果を報告する。
染色仕上における省エネルギーに関する研究 ロープ洗絨機の洗浄効果について
愛知県尾張繊維技術センター 浅井 弘義、上原 政美
毛織物の湿式仕上工程のうち、洗絨工程について検討を加え、紡毛織物を用いてドーリー型洗絨機における洗絨効果について解析した。試験機は試験用マングル で行ない、一部カラーペット染色試験機を使用して洗剤使用量、温度、浴比等洗浄効果への影響を試験した。洗浄効果は布の白度、残留油脂量で評価した。
洗剤使用量を多くすることにより洗浄効果はよくなるが、2g/L以上多くしても洗浄効果はそれほど向上しない。洗浄助剤としてのソーダ灰の使用は洗浄効 果を高めるが、その使用量は0.5g~1g/L程度が適量である。洗絨温度は40℃前後必要である。洗絨時間は長い程洗浄効果はよくなるが、洗浄作用は 10分までに急速に進み、20分程度で平衡に達する。
浴比は低浴化になるにつれて洗浄効果は低下する。これを改善するにはマングル加圧を高くすることや洗剤液の濃度を高くする必要がある。
毛織物の染色整理加工は非常に多くの水が必要とされ、その中でも洗絨工程は染色工程とともに水多消費工程であり、熱エネルギーも多く消費する。
また、一宮、尾西地方は昭和60年に工業用水の導入が予定されており、染色整理業界はこの工程の節水、省エネルギー対策が大きな問題となっている。洗絨 工程は前工程である製織又は紡績の段階において付与される油分含有物等や汚れを除去することと、揉み効果による所望の風合い出しを行なうために欠かせない 工程である。
通常毛織物の洗絨に用いられるドーリー型洗絨機では布1kgに対して120~160Lの水が使用され、また風合いを出すために洗絨工程中のニップ回数は 100~150回程度必要とされる。本報では現在多く使用されているバッチ式の洗絨機の洗浄効果を検討し、省資源、省エネルギーを図る上で必要な基礎デー タを得るために行なった。 試験機として洗絨機と機械的作用が類似している試験用マングルを用い、また一部カラーペット染色機を使用して、洗剤及びソーダ灰使用量、洗絨時間、温度、 浴比、マングルの加圧力等洗浄効果への影響を紡毛織物を用いて試験した。
洗浄効果は洗絨した処理布の白度、油脂量で評価した。
ウールと短繊維素材の複合化技術 -TWタッサーの製造条件と織物特性-
愛知県尾張繊維技術センター 柴田 善孝、古田 正明
複合素材織物の効率的な企画、設計に寄与するため、ポリエステル・ウール混紡糸を使用した場合の紳士用秋冬服地(タッサー)の製造条件と織物特性の関係を把握した。
1)ポリエステルの混紡率は織物の引張や摩耗特性などに影響を及ぼす。
2)糸の撚数は織物中の糸構造、織物の曲げ特性、表面特性、通気性などに影響を及ぼす。
3)緯糸の打込数は曲げおよびせん断特性、表面特性、縫目滑脱などに影響を及ぼす。
消費者ニーズの多様化とともに、当産地の毛織物に対する消費性能面の要求は更に複雑化している。このため、ウールを中心とする天然素材から各種合繊にわ たる多くの素材をいろいろな形で組合せて、お互いの長所を生かし、あるいは全く新しい性能を生み出す、いわゆる複合素材織物の開発が今までにも増して活発 に行なわれている。
消費者ニーズにマッチした織物を適確かつ迅速に製品化するためには、代表的な織物について、製造条件と織物特性の関係を定量的に把握しておく必要がある。そのため、前年度はTWトロピカルの製造条件と織物特性について検討した。
そこで、本年度はその成果を踏まえて、紳士用秋冬服地の1つであるタッサーを例として、経緯に使用したポリエステル・毛混紡糸の混紡率及び撚数(市販糸 の解撚)、打込数の違いが織物の構造、KES-Fシステムによる力学的特性、JISの一般織物試験法による各種特性に及ぼす影響について検討した。
民族柄の分類・検索技術 -その関連調査に見られる柄表現の特徴-
愛知県尾張繊維技術センター 伊藤 通敏、坂川 登
繊維製品における民族柄について、63年から84年まで21年間のファッション・トレンド等への出現ひん度から、まず代表的な柄種別を設定し、分類手法においては、業種・業態間の分類手法の相違を超えるために「普遍性」を第1に考慮した。
検索手法としては、商品企画のシステム化に対応を図るため、商品企画のイメージに基づいて検索できるように考慮した。ソフト化社会のマーケティング、マーチャンダイジング対応を企図した柄分類・検索手法である。
はじめに
ソフト化社会への対応が課題とされ、マーケティングについてもさまざまな模索が開始されている。これらの模索に共通する点は、消費者の支出行動が多様・ 複雑化し、従来のマーケティング手法では把握できなくなった空隙を埋めようとする試みであり、消費者の潜在欲求を探り出す手法が現在の主流といってよいと 思われる。
ソフト化社会では、これまでの消費者欲求と「物」を結びつけるマーケティング手法が、「象徴」としての「物」と消費者欲求との結びつけを探るマーケティング手法へ移行するものと考えられる。
普遍性に基づく柄分類手法、イメージに基づく柄検索手法は、繊維製品の柄を「象徴」として把える場合に、普遍的柄分類を基軸とし、時代を反映するイメー ジを変数として、コンピュータ利用による統計処理分析等に、使用できる柄分類・検索手法として、以下の報文は多少のお役に立つものと考える。
色合せ精度に及ぼす要因
愛知県尾張繊維技術センター 松井 弘、上原 政美
CCMの実施段階で、その精度に影響する要因には各種のものがある。
(1)カラーペットによる同一条件の染色結果から再現性に関する管理限界は色差0.5程度である。
(2)染料の濃度変動が±2~3%以上あると色差は0.5以上となる。
(3)粉体染料は標準状態で5日間放置により約6%の重量増加となる。
(4)測色試料が糸束状と編地状では、平均色差は1.5ある。
(5)裏透けのある試料には、類似色の裏当布を用いることにより測色誤差を小さくすることが可能である。
はじめに
最近染色業界のCCM(コンピュータ カラー マッチング)に対する感心が高まり、既に導入されたり、また導入を検討されている企業が増加している。
CCMが従来の人間の経験や感覚に置き代えられて運用されるためには、色合せの精度が従来の方法と同程度かあるいはそれ以上が必要である。
しかし、精度の問題は単にCCM理論や測色装置の精度の問題に関わるのみではなく、本質的には従来から存在している色合せ作業における諸問題も含まれて おり、さらに染色の再現性や染料配合による相互作用など解決の困難な問題もいくつか残されている。
3色配色のSD法による面積効果の考察
愛知県尾張繊維技術センター 柴田 晃伸、伊藤 通敏
配色の実際面で当然必要となる面積効果について、多色配色の代表を3色配色として、3色それぞれの配色面積が増減した場合に、どのような変化が起きるかに ついて、2種類の配色と4段階の面積比率の組合せによる26種の面積効果配色モデルを作成し、SD法による感覚調査から3色配色の面積効果を明らかにしよ うとした研究である。
その結果として、3色配色の面積効果は、イメージの上で中心となる1色の面積効果の影響が大きいことが判明した。
はじめに
高度消費社会への対応が、すべての産業界の課題とされている。高度消費社会では、A.H.マズローの第5段階の自己実現欲求(精神的に豊かな生活を目ざした欲求)が中心になると考えられる。
消費者のこのような欲求に対して、どう対応していくかが課題となっているわけである。
中でも繊維製品は、消費者の嗜好や感性による評価によって購買される傾向が強い商品分野だということができる。
商品の購買動機に占める色彩の重要性は、良く知られているところであるが、繊維製品の配色の実際面で当然必要な面積効果について、充分な研究がこれまでなされてきたとはいい難い。
本研究はこの面の不備を多少なりとも補うことを目的としたものである。