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人材育成事業

翔工房・学生のアイデア×匠の技

-平成25年度翔工房レポート-

No.1 プレゼンテーション~参加学生の決定
No.2 第1回合同ミーティング・施設見学
No.3 施設見学
No.4 第2回・第3回合同ミーティング・施設見学
No.5 第4回合同ミーティング
No.6 作品展&発表会

1  <プレゼンテーション~参加学生の決定>

翔工房事業の実施にあたり、ファッション系学校の学生を中心に参加者を募集したところ、13校29名から、デザイン画や素材のイメージマップが提出されました。
5月22日に匠ネットワーク講師がデザイン画やイメージ、志望動機等提出書類に目を通し、尾州産地の特長を把握した上でそれが活かされているものか、実際に布地にできるか(実現性)、翔工房で何を学びたいか、ここでの経験を今後どうして活かしていきたいかの観点から20名に絞り込みました。
 

そして、6月14日に20名の学生ひとりひとりによるプレゼンテーションが行われました。
各学生は、緊張した面持ちで、自身がイメージする素材製作への強いこだわりや、素材づくりの先入観を持っていないからこその斬新なアイデアなど、様々な切り口で匠ネットワーク講師にその思いをぶつけました。
一方で、匠ネットワーク講師も学生のイメージを具現化するために、どうすればよいかを終始思案することになりました。中には、このイメージのままでは難しいため、かなりの工夫、場合によっては妥協してもらう必要があるという厳しい意見も出されました。”ものづくり”を真剣に取り組むためには、匠ネットワーク講師も学生に本音を伝えなければなりません。
また、翔工房では、この世で唯一の素材を作り出す一方で、将来ビジネスでも役立たせられる経験や知識を培う場でもあるので、コストを度外視して進めるわけにはいきません。そうした条件の中、いかにイメージに近づけられるか、よりよい素材にできるかを匠ネットワーク講師と意見を交えながら進めていくことこそが翔工房の魅力のひとつです。
このプレゼンテーションの結果、参加学生、その担当講師が決定されます。
 


 


 

○プレゼンテーションを終えて匠ネットワーク講師の感想
・遠方から参加する学生は、とりわけ参加に対する意気込みを感じた。
・過去の翔工房作品に影響を受けたことがきっかけで応募する学生は素直にうれしい。
・センスを感じる子が多かった。
・学生はイメージのみでデザインしているように思う。学校ではイメージの具体化(紙への落とし込み)ということをよく勉強していると思うが、翔工房では実際のものづくりを加味したデザインの重要性を学んで欲しい。
・それぞれに熱のこもったプレゼンテーションで、すべて聞き終わった時には心地よい疲労感があった。
・実現性が難しい作品もあったが、参加が決まった以上は、学生と早速イメージの摺り合わせを進めたい。講師側としてもチャレンジしていかなければならない。

  

2  <第1回合同ミーティング・施設見学>

プレゼンテーションの結果、応募学生の内20名の学生の参加が決定しました。
6月28日は第1回合同ミーティングを開催し、担当講師との顔合わせに始まり、翔工房の具体的な進め方や注意事項の確認、FDCに隣接する尾張繊維技術センター内の繊維設備の見学を経て、担当講師とのイメージのすり合わせいわゆるマンツーマン指導に進んでいきました。
担当講師との顔合わせのやりとりでは、やや硬目の表情が多い中、笑顔を覗かせる学生もいました。
翔工房の進め方の説明を受けている時は、真剣な表情で必要に応じてメモを取っていました。これから翔工房に向き合っていく姿勢を垣間見ることができました。
その後1時間程度、尾張繊維技術センターのご協力で、繊維設備の見学をしました。学校では、布地をどうやって服に仕上げていくのか、繊維製品の流通はどうなっているか、ファッション産業の構造などを学んでおり、それらの素材となる「布地の製造工程」を学ぶ機会は多くありません。ましてや、設備を直接見る機会にいたっては、就職した後もなかなか恵まれません。各学生、センター職員の分かりやすい説明に耳を傾け、設備の仕組みや製造された糸や布地の種類やそれぞれ違いに関心を寄せ、写真、ムービーを撮っていました。センター職員の皆さんご協力ありがとうございました。
見学終了後は、いよいよマンツーマン指導の始まりです。この段階では、事前に学生が作成したイメージマップのみが、学生、匠講師の共有している唯一の情報です。ここから、デザインや糸や布地のサンプル、知識、会話、様々な手段で共通する情報を積み上げていき、ものづくりを進めていく事になります。
 


 


 


 

○受講学生の感想
・工場見学をしたことがなかったので、こんなにも近くで見ることができてよかった。
・設備について詳しく説明を受けることができて、大変参考になった。
・実際にサンプルに触れることで、整理の工程により、生地に様々な風合いが出ることを実感できた。自分の製作する生地へのイメージが膨らんだ。
・意匠糸がかわいい。操作パネルで切替えるだけでさまざまな意匠糸が作れるなんて驚いた。
・最終工程の整理加工だけで布地の表情が変化するのは面白い。自分もぜひ挑戦したい。
・学校の授業で見たり聞いたりした原毛が、実際に展示されていて勉強になった。鳥獣毛のサンプルには触ってみたかった。

3  <施設見学>

合同ミーティングを経て、受講学生はそれぞれの講師との打ち合わせを開始しました。学生は素材について学校で学んでいますが、翔工房では実際の生産現場に出向き、より具体的に講師から指導を受けることになります。
翔工房では自身のイメージから生地製作をすることが最終目標ですが、イメージマップに合致した素材を選ぶためには、さまざまな素材を見ることが重要です。そこで、7月19日・26日の2日間に分けて、東和毛織㈱とテキスタイルマテリアルセンターを訪問し、紡績工程とテキスタイルのアーカイブを見学しました。
東和毛織㈱は、羊毛をはじめとする毛織物の紡績工場です。渡邉会長から説明を受けながらコーミング~前紡~精紡~仕上げといった原毛から糸が出来るまでの各工程を見学しました。特にリリーヤーン、ループヤーンなどの意匠糸の製造では、複数の糸から意匠糸が作られる様子には学生から感嘆の声が上がりました。
岐阜県羽島市に所在するテキスタイルマテリアルセンターでは、過去の展示会に出展されたものを中心に、93,000点に及ぶ国内の生地のアーカイブを収蔵しております。学生は、その膨大な資料の中から自分のイメージしたデザインに合うような生地を熱心に探していました。
学生たちは夏休みに入り、これから素材の製作を本格化させます。
 

 

○匠講師のコメント
・今回のように実際の生産現場の見学で、意匠糸や複雑な組織を持つ生地には、製造にたくさんの手がかかっていることが分かってもらえると思う。これからの繊維産業を担う学生には、こういった機会を利用して多くの素材に触れてほしい。
・暑い中、熱心に見学する様子がうかがえた。学生からはさまざまな質問があったが、これからもいろいろ聞いてほしい。
○受講学生の感想
・実際の生産現場を見るのは初めてでとても勉強になった。普段使っているミシン糸が作られるまでに、多くの工程があり様々な機械を使用していることがわかった。
・原料からだんだん糸になっていく様子が麺類のようでおもしろかった。
・糸の原料は触って気持ちよかった。
・意匠糸がかわいかった。ぜひ作品にとりいれてみたい。
・マテリアルセンターは生地を見ていると時間があっという間だった。今度は自分で足を運んで見学したい。
・著名なデザイナーが使った生地も見ることができ感激した。
・自分のイメージに近いサンプル生地を収集していくと、デザインが具体化できて良い。
・講師と一緒に、具体的な資料(サンプル生地)を見れたことで、自分が表現したいことが可能かどうか、話すことができて良かったです。

 

4  <第2回・第3回合同ミーティング・施設見学>

6月の下旬から始まった素材製作もいよいよ完成です。9月27日と10月25日の2回の合同ミーティングでは、学生それぞれが完成報告をしました。また、第2回の合同ミーティング後には、㈱ソトー一宮工場を見学しました。

施設見学では、匠講師による、専門的知見に基づきつつもわかりやすい説明に学生たちは熱心に耳を傾けていました。
今回の施設見学以外でも、学生達は多くの企業・工場を訪問させていただきました。そういったご協力があってこそ翔工房は成り立っています。

合同ミーティングでは、20名の学生はそれぞれが匠の講師と一緒に製作した素材について、これまでの過程を振り返りながら完成報告をしました。イメージのすり合わせの重要性や、学生自らが手作業で行った仕上げの苦労話など、実際に素材開発に携わったからこその実体験に基づく報告となりました。
そしてそれを見守る匠講師の温かい眼差しや、お互いの発表に共感する学生の姿が印象的でした。

学生は2月の総合展での展示・発表に向け、それぞれのオリジナル素材を使ったガーメント製作に着手します。

 

 

 

 

5  <第4回合同ミーティング>

昨秋に完成したテキスタイルが、およそ2ヶ月の製作期間を経てガーメントに仕上がりました。学生自らの手で縫製されたガーメントは、当初のイメージ通りの作品もあれば、製作過程でのアドバイスをもとに改良が加えられた作品など、どれも特長のある素晴らしい作品となりました。完成したガーメントを見て、匠講師達も学生の技術の高さに驚いている様子でした。
本日の合同ミーティングでは、完成したガーメントを披露しながら、総合展「THE 尾州」内で開催される翔工房作品発表会のリハーサルも行われました。それぞれの学生が、自分の作品のテーマや、テキスタイル製作時のエピソード、ガーメント化する際の苦労話、翔工房へ参加したことへの感想などを発表しました。

○受講学生の感想
・翔工房に参加することでしか出会うことが無かったであろう、たくさんの素晴らしい方々に出会うことができ、参加して本当に良かった。
・自分のイメージを上手く伝えることができず、何度も打合せを重ねた。イメージのすり合わせの大切さを実感できた。
・発表会のリハーサルでは、作品について上手く説明することができなかった。本番までに練習したい。

次回はいよいよ翔工房作品発表会です!
学生達が1年を通して完成させた作品を発表する、今年度の翔工房のフィナーレとなる発表会をぜひ会場でご覧下さい!

 

 

6  <作品展&発表会>

今年度の翔工房事業も、総合展「THE 尾州」での作品展&発表会でフィナーレを迎えます。常設展示した作品展では、完成した作品20体を多くの来場者にご覧いただくことができました。
2月13日に行われた発表会では、学生、匠講師が順にステージに登場し、作品を横において学生自身によるプレゼンテーションを行いました。
ものづくりやストーリーなど作品に込められた自身の想いを、自分の言葉で外部に発信することも翔工房事業の特徴であり、学生にとっては貴重な経験となったことでしょう。


中野 美咲(飯原服装専門学校)× 水谷(仁)講師
< アンダルシア >


木村 有貴(飯原服装専門学校)× 門倉講師
< エネルギー >


渡部 加奈子(川島テキスタイルスクール)× 渥美講師
< moss >


水谷 若菜(岐阜市立女子短期大学)× 飯海講師・足立講師
< 雪桜 >


吉田 恵美(岐阜市立女子短期大学)× 河路講師
< 落描き >


趙 智英(京都市立芸術大学院)× 足立講師
< HUG >


橋本 未来(京都造形芸術大学)× 渡邉(文)講師・渡邉(忠)講師
< ハチノス >


福田 香織(京都造形芸術大学)× 長谷川講師
< 鱗 >


足立 巴美(中部ファッション専門学校)× 濱田講師・水谷(仁)講師
< チマチョゴリを現代風に >


加藤 妙子(中部ファッション専門学校)× 川村講師
< fairy girl >


小島 日和(名古屋芸術大学)× 足立講師
< 稲の収穫 >


田畑 知著(名古屋芸術大学)× 水谷(仁)講師
< 炭酸水 >


大澤 一葉(名古屋ファッション専門学校)× 渡邉(忠)講師
< snake >


花村 利彦(名古屋ファッション専門学校)× 森講師
< 無機質 >


奥野 真紀(名古屋ファッション・ビューティー専門学校)× 渥美講師
< 花畑 >


遠山 ひかる(名古屋ファッション・ビューティー専門学校)× 飯田講師
< 金星の雲 -Cloud of Venus- >


木原 みゆき(名古屋モード学園)× 小澤講師
< 春が来た! >


宗野 沙紀(名古屋モード学園)× 飯田講師
< 泡沫 >


片島 蘭(広島市立大学)× 川村講師
< 光につつまれる >


武井 宥璃(文化学園大学)× 水谷(透)講師
< 炊きたてのふかふかごはん >



発表会の最後には、学生・講師全員により集合写真を撮りました。翔工房を通じての人と人とのつながりは、翔工房での経験と共に大きな財産となることでしょう。
今年度の翔工房事業はこの作品展&発表会をもって一つの区切りを迎えますが、それぞれの学生にとっては、通過点に過ぎません。翔工房での経験を活かし、近い将来、ファッション・繊維産業で活躍していくことを期待しています。
最後に、匠講師、学校関係者をはじめ、学生の工場見学を快くお引き受け下さったり、各製造工程の生の現場を開放して下さった尾州産地企業の皆様、その他翔工房事業の趣旨をご理解いただき、ご協力いただきました皆様、誠にありがとうございました。

パンフレット(イメージ&完成テキスタイル)①
パンフレット(イメージ&完成テキスタイル)②